【リレー談話室・JAの現場から】SDGs、家族農業の10年2019年8月6日
◆運営基本構想に明記
私が支店の金融渉外担当者として勤務していたころのことです。農協の組合員が勤めている会社へ昼休みに訪問し、窓口に呼び出してもらうため職員に声掛けをしました。しかし、あいにくその組合員は会社を休んでいました。
なぜ組合員が会社を休んだ時に訪問したのか、ずいぶん前のことで覚えていませんが、同僚からその組合員が休んだ理由を聞いた部署長と思われる人が「またあいつ、農業で休んだ。しょっちゅう休む」と、周囲に聞こえるような大きな声で言いました。
今でしたら、天候に左右されスケジュール通りにならない農業のことや、地域農業が果たす役割などを、柔らかく包んで対話できたかもしれません。しかし、当時は農業の知識も経験も不足していましたので、農協職員であることを名乗って会社を訪問している私が、何も言い返せませんでした。このような体験から、私は「農作業で会社を休むことは、会社のみんなに迷惑を掛ける悪いことなのだ」と、思っていた時期もありました。そのことが、ずっと心に引っかかっていました。
過年度、農協の理事会営農専門委員会で、「多くの企業が週休2日制の就労体系を導入している。しかし、農作業目的の有給休暇取得が職場ではばかられることもある。優先的に農作業の有給休暇が使える環境の整備が望まれている」という意見が出されました。この意見を踏まえ、JAは管内2つの市に対し、「農事休業条例」の制定を求める請願を出しました。そして、本年度定めた「運営基本構想」においては、情勢認識として「協同組合の思想と実践、家族農業」を掲げ、その価値を明記しました。
これらを踏まえて、北川俊一代表理事組合長から、総合企画部長だった私に、「SDGsと家族農業の10年」の役職員研修会を企画するよう指示がありました。農業系新聞に「家族農業の10年」をテーマに寄稿された日本協同組合連携機構(JCA)の阿高あや氏」に講演をお願いしたところ、快諾していただきました。
阿高氏は、JAいがふるさとの経営理念「農と食・緑を育み、豊かな生活づくり、潤いある地域づくりに貢献します」が、SDGsの17の目標を包含すると指摘し、JAの活動に大変力強いエールを送ってくれました。
◆ ◇
JAいがふるさと管内の農業の状況ですが、伊賀市の全体の水田面積の約6割、名張市の約4割が中山間地域にあります。管内に4000以上ある耕種経営体のうち、10ha以上の経営体は約1.5%です。農地(水田)の担い手(個人・集落営農組織)への集積率は36%と全国平均を下回ります。
管内の総農家数のうち、自給的農家と第2種兼業農家の占める割合は約8割です。JAいがふるさとでは集落営農を推進していますが、小規模で家族農業を営む方が地域農業の重要な構成員であることは、現在も変わりありません。
農業を維持していくためには、生産コストの低減は重要な取り組みです。JAいがふるさとでは物流コストを抑えるための肥料の「集落一括引き取り制度」や、農作業の共同化による作業コスト低減する「無人ヘリによる共同防除」などに取り組んできました。
JAグループとして肥料の銘柄集約化によるコスト低減の取り組み、全共連の「地域・農業活性化促進助成金」を活用した「レンタルトラクター事業」の実施など、これらの取り組みは組合員から評価を得てきたところですが、さらにコスト低減を求める声があります。
本年度、(株)JA三井リースが取り組む「農機のシェアリース」事業の導入も検討しています。「家族農業の10年」の初年において、JAが果たす役割と行動をみんなで考えていきませんか。
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