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【小松泰信・地方の眼力】笑いたいけど笑えない2019年8月7日

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【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

 女子ゴルフのAIG全英女子オープンで、岡山市出身の渋野日奈子選手が優勝した。「その天真らんまんで笑顔を絶やさない様子は、ギャラリーや海外メディアの心をとらえた。気軽にハイタッチに応じ、ラウンド中にも駄菓子をかじって物おじしない。思わず応援したくなるゴルファーとも言える」とは、山陽新聞(8月6日付)の社説。

◆笑いたいのは山々ですが

小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授) 「官邸主導の農業の構造改革路線を軌道修正できるか。参院選後の焦点はそこにある」で始まる日本農業新聞(8月3日付)の論説は、「家族農業、中山間地農業など多様で多面的な農業を守り、地域振興を図ります」と明記した自民党の選挙公約を、「従来より中道寄りに歩み出してきたように見える」とする。そして、「家族農業を守ることは、農業・農村の実情を踏まえると極めて現実的な対応というべきだ」とした上で、「農地利用の8割を担い手に集積するという現行の政府目標は現実離れしており、担い手が受け止めきれずに行き場の見つからない荒廃農地を増やす心配すらある」と指摘する。締めでは「政権与党である自民党は公約で家族農業を守るとした。これを基本計画に反映させることが、農家との約束を果たす第一歩となる」と、公約の遵守を訴える。

 この願いが伝わったわけではないだろうが、5日に開かれた自民党の農林合同会議において、出席議員から参院選で訴えてきた家族経営や中山間地農業の支援策の具体化を求める意見が相次いだことを、6日付の同紙が伝えている。
 毎日新聞(8月3日付)で柴田明夫氏(資源・食糧問題研究所代表)は、政府の農協改革が農業・農村の発展をうたいつつも、担い手、すなわち認定農業者を中核とする全農業経営体の2割弱を占めるに過ぎない存在を重視する姿勢に対して、「農業の成長産業化に向けた改革を急ぐ安倍晋三政権による、中小農家の切り捨て策」とする。
 「日本の農家は生産と生活が一体化し、兼業が多く、地域住民と一体となって生活してきた」として、6月6日に開かれた規制改革推進会議において、金丸恭文議長代理が「地方創生のためには、農林水産業の成長産業化が不可欠であるとの信念のもと、不退転の覚悟で改革に取り組みます」と発言したことに対して、「この『信念』が日本農業の将来を誤ることにならないか心配だ」と、穏やかに急所を突く。
 全国農政連からご推薦をいただいた議員たちは、その重みをしっかり自覚して、役人に向かって偉そうに言うだけではなく、官邸農政と規制虫どもの駆除に尽力すべきである。裏切れば、次はない。


◆問題山積の農業政策。心配の種、三連発

 日本農業新聞(8月4日付)は、閣僚による2日間の貿易協定交渉を終え、茂木敏充経済再生担当相が、米国側が工業製品の譲歩に前向きな姿勢を示したことで、「頂上は見えている」と交渉が進展したとの認識を表明したことを一面で伝えている。
 「ただ、工業製品のどの品目でどれだけ譲歩するかなど、具体的な内容は明らかではない。農産品の交渉状況も不透明で、農家ら国民に十分な説明が求められる」と解説したうえで、茂木氏の言葉を引き、「頂上に近付くほど足場は崩れやすく視界がぼやける危険性もはらむ。見えた頂上に惑わされず、今一度足場を固めて臨めるか。日本政府の交渉力が問われる」と、釘を刺す。
 加えて同紙の二面では、外国投資家が韓国政府を相手に、国際投資紛争解決センター(ICSID)に提訴するケースが増えているため、米国との自由貿易協定(FTA)などに盛り込んだ投資家・国家訴訟(ISD)条項の廃止機運が再燃していることを伝えている。2012年以降7年で9件の事例が発生し、訴求額は約8700億円、韓国政府がつぎ込んだ弁護士費用などは約43億円。米韓FTAを推進する同政府が、「ISDはわれわれに必要な制度だ」として、2011年に発行した冊子に「企業が無差別に相手国政府を提訴する可能性はほとんどない」と記していたにもかかわらずである。
 事態を重く見た李洛淵国務総理が、「ISDは、訴訟費用が過大にかかり、結果の予測可能性が非常に低い問題がある。(多国籍企業など)強者の横暴につながる可能性があり、廃止すべきだとの意見には同意する」と、閣僚として初めてISD廃止に言及するまでに至っている。まさに、他山の石。
 さらに8月1日付の日本農業新聞は、日欧EPAが発効して半年が経過し、TPPを超える市場開放を受け入れたチーズやワインなどの輸入量が前年に比べ2、3割増えたことを一面で取り上げている。
 例えば、食品スーパーの成城石井は、全国173店舗でEU産食品などの価格を引き下げた販促イベントを行った。「手軽にヨーロッパの食文化を楽しんでもらいたい」(広報担当者)とのこと。大手スーパーのイオンは、2月、EU産ワイン330種を一斉値下げ。直近の売上高は平均で前年を2割上回る。今秋以降、EU産の品ぞろえを強化する方針。関東の中堅スーパーでは、スペイン産豚肉「イベリコ豚」の扱いを拡大する。ロースは国産より2割高いが6月より売り込みを強化。売上高は前年を2割上回る。
 財務省の貿易統計から、2~6月のEU産チーズの輸入量が前年同期を20%上回ったことや、関税を即時撤廃したワインの輸入量が急増したことも紹介している。
 東山寛氏(北海道大学農学部准教授)が寄せたコメントは、「日欧EPA発効後の輸入増は、恒常的な輸入増加に結び付いている。国内のマーケットが輸入品に奪われる恐れあり。国産品は差別化されると説明していた政府の影響試算では、想定していなかった事態が起きており、既にEPA発効の影響あり。政府には継続的に影響を見極める義務がある。TPP発効や日米貿易協定交渉など、国内の生産者に不安要素が多く、品目ごとの丁寧な影響分析と、国産品の競争力を高めるための支援策を講じるべき」と、要約される。


◆笑わせてくれるよ安倍首相

 駄目を押すように、8月7日付の各紙は、2018年度のカロリーベースの食料自給率が前年度より1ポイント低下の37%だったことを伝えている。天候不順で小麦や大豆の国内生産量が大きく減少したためで、コメの記録的な凶作に見舞われた1993年度と並ぶ過去最低の水準。政府は2025年度に45%にする目標を掲げているが、もちろん達成は遠のいた。と言うよりも、そもそも自給率の向上は頭にないわけですから、達成などできるわけがない。
 これもまた各紙が伝えているが、安倍晋三首相は6日、輸出規制強化などで悪化する日韓関係について、「(元徴用工問題で)日韓請求権協定に違反する行為を韓国が一方的に行い、国際条約を破っている。国と国との関係の根本に関わる約束をきちんと守ってほしい」と述べ、協定の順守を要求。さらに、「最大の問題は国家間の約束を守るかという信頼の問題だ」と述べたそうだ。
 議論の場から逃げ回り、「丁寧な説明」という約束も果たさない、国民から最も信頼されていない首相が、「国家間の信頼」を語るとは笑止千万。へそで茶を沸かすとはこのこと。本当に笑わせてくれるよこの人は。
 「地方の眼力」なめんなよ

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小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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