【澁澤栄・精密農業とは】すべての農家が守るべき国内法 GAP共通基盤ガイドライン2019年10月15日
精密農業とGAPは、共通して国内法遵守の農作業を求めている。農林水産省は2010年4月、GAPに対応する国内法である「農業生産工程管理(GAP)※の共通基盤に関するガイドライン」(GAP共通基盤ガイドライン)を発出した。GAP共通基盤ガイドラインは、交通規則と同じように守らなければ「違法」になるため、商取引ルールのグローバルGAPよりはるかに強制力があり、精密農業の最初のハードルでもある。管理点の数は問題ではなく、農場の保安と安全に管理する哲学が肝要だ。
※農林水産省は、行政用語として「生産工程管理」をGAPの対応語に用いている。
◆GAP共通基盤ガイドライン
2009年8月5日、農林水産省で第1回農業生産工程管理(GAP)の共通の基盤づくりに関する検討会が開かれ、座長である私は次のように考え方を述べた。
「これまでのGAP議論の中では、農業現場で実践すべきことの柱として食品安全以外にこうした指針等(環境保全や農作業安全など)を紹介されたのは初めて。食品安全、環境保全、労働安全、その他必要とされる事項、法令等を事務局に用意していただきガイドラインの事例としたい」
すなわち、農業生産者の立場に立った関連法令などの見直しと整理を指示したのだ。その結果として、食品安全と消費者保護が実現される。
GAP共通基盤ガイドラインは、食料・農業・農村基本法や環境基本法および食品安全基本法などで謳われる農業のあるべき姿を基本理念とし、対象作物ごとに食品安全と環境保全および労働安全のための守るべき関係法令の取組事項をまとめたもの(図1)。
取組事項は50項目あまりで、それぞれ複数の関係法令や行政指針および国際基準や科学的知見を根拠としてまとめられている。
例えば、食用米と飼料米は「カドミニウムとヒ素の含有規準が異なり、対応する水管理も異なり、出荷伝票により判別される」などの取組事項が記載されている。いわば、日本で販売農家を営むための資格要件ともいうべきものだ。しかし、残念ながらGAPに対応した国内法の体系は作物しかない。畜産や養殖の国内法整備が求められる。
◆身近な国内法である県GAP指針 S-GAPの例
GAP共通基盤ガイドラインの取組事項を農作業の実行者の視点で整理したものが県GAP指針で、両者は同じもの。県GAP指針が最も見やすい形で整理されたものが、埼玉県のS-GAPガイドブックだ。本のタイトルは「農業生産安全確認運動」。農業者やJAに向けたメッセージであることを明示している。
図2を見てみよう。野菜編の15番目の取組事項は事故時の連絡先掲示で、労働安全の推奨事項だ。必要な行動の説明と合わせて、わかりやすく、見本の写真を掲載している。掲示場所については農業機械やトラックを例示し、リストに記載する連絡先としては、警察、消防、病院(診療科別、夜間・休日)、農協、環境管理事務所、農林振興センター、出荷先、農機具販売店、つくば中毒110番などが記載されている。下段右には、GAP共通基盤ガイドラインの該当する取組事項の分野と番号が記載されている。
16番目の取組事項は農薬などの農業資材の保管方法で、食品安全と労働安全の重点事項。星印が重点事項をあらわす。農薬や燃料などの保管の注意事項の説明と合わせて、盗難防止のために鍵のかかるロッカーの必要性の写真が示されている。
S-GAPガイドブックは、埼玉県農産物安全課が中心となり、普及指導員やJAおよび農家の協力により、農作業現場で使いやすいように改良が続けられている。福島県への農業復興支援の一環として実施した埼玉県のS-GAP指導は、GAPの現場レベルの交流として特筆すべきものだ。
グローバルGAPとGAP共通基盤ガイドラインの関係(図3)を示した。グローバルGAPは国内法優先が原則である。GAP共通基盤ガイドラインを生産現場に即してS-GAPガイドブックが整備されている。したがって、生産者はS-GAPの取り組みを通じて、精密農業(スマート農業)の導入を図るのがわかりやすいと思う。
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東京農工大学特任教授 澁澤栄氏のコラム【精密農業(スマート農業)とは?】
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