【森島 賢・正義派の農政論】5G問題から見える社会主義の優位2019年11月18日
新しい通信技術である「5G」をめぐる市場獲得競争が、中米両国の間で激しく行われている。基礎技術であるだけに、その及ぼす影響は極めて大きい。
そしていま、米国が中国に押され気味である。中国製品のほうが米国製品よりも安価だからである。これでは米国は中国に勝てない。米国は焦っている。
なぜ、そうなったのか。

米国は、中国の情報技術会社である華為(ファーウェイ)の5G技術を使った製品を、政府が調達しないことにした。そうして、政府の調達だけでなく、民間にも、さらに他国にも協力を要請している。そうして、世界の市場から華為製品を排除したい、と考えている。つまり米国は、情報の分野で、世界の覇権を握ろうと目論んでいる。
そこで上の図は、米国のこの要請に対して、世界の各国が、どのように協力しているか、あるいは拒否しているか、を英国のBBC放送が整理したものである。先日はBS日テレが、これを加工して放映していた。
◇
この図から分かるように、米国の要請に積極的に協力している、とBBCが評価しているのは、日本の他には台湾とオーストラリアしかない。消極的な協力でさえ、カナダとニュージーランドの2国だけである。
その他の国は、拒否したり、消極的に拒否したり、戸惑ったりしている。
これでは、米国は世界の覇権は握れないだろう。そうなると今後は、どうなるか。ほとんど全ての技術で基礎的な役割を果たす情報技術の分野は、中国が握ることになるだろう。その結果は、技術だけでなく、経済や政治にまで中国の覇権が世界中に広がっていく。米国の深刻な危機感は、ここに根ざしている。
なぜ、このようなことになったのか。
◇
ことは単純で、かつ明快である。中国の5G技術を使った製品のほうが安価だからである。だから、米国は市場競争で中国に負けてしまう。
では、なぜ中国製品のほうが安価なのか。
それは、技術開発のために、国家が多額の資金を投入しているからである。
それは、なぜか。
それは、中国が社会主義国だからである。政治が国家資金を使って、生産を掌握するのが社会主義である。そうして、社会全体の利益のために生産を行っている。
だから、生産によって得られた利益は、社会全体に、つまり国民全体に平等に分配される。
◇
これに対して、資本主義はどうか。社長が、株主の、つまり資本家の私的資金を使って、資本家の私的利益のために生産を行っている。
だから、大多数の国民は、資本家の私的利益を得るための搾取の対象でしかない。
しかもいまの社長は、任期中に自社の株価を上げることしか考えない。株価が上がれば、多額の報酬がもらえるからである。つまり、社長の私的利益になる。これでは、基礎技術の開発のための長期投資はできない。
◇
以上、5G問題で見えてきたことは、社会主義の資本主義に対する優位である。
日本はどうか。日本は、たそがれの資本主義国である米国に忠実に追従する、数少ない、そして情けない国に転落しようとしている。そうして、世界中から嘲笑を浴びようとしている。
(2019.11.18)
(前回 中米間抗争のゆくえ)
(前回 沈黙する若者たち)
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