【森島 賢・正義派の農政論】野党の責任2019年12月23日
野党の責任は、いまの政府を倒して自分たちの政府を作り、自分たちの政策を実行することにある。そうして、支持者の負託に応えることにある。いまの野党に、そういう意気込みがあるのだろうか。
野党が政府の不祥事を暴露し、窮地に追い込んで退陣させるのはいい。しかし、退陣させた後どうしたいのか。そこが分からない。
世論調査をみると、野党の暴露の結果、政府の支持率は下がったが、野党の支持率は、いっこうに上がらない。
だから野党は、国会が会期末になっても、内閣不信任案を提出することさえできなかった。不信任案が提出されて、国会が解散され、総選挙になっても、野党が勝てる自信がなかったからだろう。
どうして、こんなことになったのか。それは、野党の目ざす政治が、国民に分からないからである。野党自身でさえ分かっていないのではないか。いったい、与党とどこが違うのか。野党は、いったい弱者の側に立つ、力強い味方なのかどうか。そこが分からない。
この前の国会審議をみていると、安倍晋三首相の桜問題ばかりに集中していて、政策論議が聞こえてこなかった。そして、農業者に犠牲を強いる日米貿易協定は、ほとんど議論がないままに、国会承認になってしまった。
桜問題は、たしかに重要である。しかし、農業者の犠牲を見過ごしていい程までに重要なのか。いったい、桜問題は農業者などの弱者にとって、どんな問題なのか。
野党は、不祥事を暴露することで、内閣を倒し、弱者の側に立った政府を作りたいのだろうが、そうした戦略で暴露したわけではないようだ。つまり、桜問題と弱者との関係が分からない。そのうえ、内閣を倒しても、次の内閣に野党が代われるかどうか、も分からない。野党支持率が低迷しているからである。
◇
野党にとって、前国会の唯1つの重要な収穫は、大学入試の改悪を阻止したことである。しかし、ここでも弱者の側に立っていることを、明確に示せなかった。
この問題の発端は、荻生田光一文科相の「身の丈にあわせて...」という発言にあった。これは、まさしく弱者の苦難を顧みず、格差を肯定し、固定化するという文科相の本音を、隠しきれずに、つい不用心に言ってしまったもので、強者の側に立った発言である。そしてこれは、萩生田文科相だけの本音ではない。強者の側に立つ政府・与党の本音でもある。
◇
強者の考えは、こうである。
格差は競争の結果で、不可避のものである。そして、競争は社会を進歩させる原動力である。だから格差は、社会の進歩のために必要不可欠のものである。そのように考えて、弱者に過酷な犠牲を強いている。
野党は、この考えを肯定するのか、否定するのか。入試の問題にも、この点が深層にある。
しかし、野党はこの重大な点を追及することなく、試験方法の追及に問題を矮小化した。だから、高校生だけの問題になってしまい、弱者全体の問題に広げられなかったし、格差問題として深く追及できなかった。そうして、支持率が向上しなかった。
◇
安倍首相の桜問題や、萩生田文科相の身の丈発言だけではない。いま日本の政治は、安倍一強政治のもとで腐敗しつつある。
政治だけではない。社会全体が崩壊しつつある。メディアは連日のように殺人事件や自殺事件を報じている。このような社会全体の崩壊の根源的な責任は、政治にある。そうした社会に変質させたのは、これまでの市場原理主義の経済政策、つまり政治だからである。
この責任は、もちろん、一義的には政府・与党が負うべきものである。だが、そうなることを阻止できなかった野党の責任も大きい。
◇
今年も、あと残り少なくなった。野党に対する新年の期待は、マスメディアなどで、強者の考えに染められた、一部の無党派層におもねることではない。また、合流問題で党利党略や私利私略、カネにまみれた抗争に走ることでもない。そうではなくて、弱者の側に立つ政策を深いところから練り上げることである。
それは、大幅な賃上げと非正規労働の強力な規制が基本政策になるだろう。そして、それを政治として実現するための政権奪取であり、そのための、新年中にも予想される総選挙での選挙協力である。
(2019.12.23)
(前回 自由・民主主義と格差)
(前々回 高齢者に医療の抑制を強要する安倍政権)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
令和6年春の叙勲 5人が受章(農水省関係)2024年4月29日
-
シンとんぼ(90)みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(1)2024年4月27日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(8)【防除学習帖】 第247回2024年4月27日
-
土壌診断の基礎知識(17)【今さら聞けない営農情報】第247回2024年4月27日
-
【欧米の農政転換と農民運動】環境重視と自由化の矛盾 イギリス農民の怒りの正体と運動の行方(2)駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内で多発のおそれ 熊本県2024年4月26日
-
【注意報】核果類にナシヒメシンクイ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年4月26日
-
【注意報】ムギ類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年4月26日
-
「沖縄県産パインアップルフェア」銀座の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年4月26日
-
「みのりカフェ博多店」24日から「開業3周年記念フェア」開催 JA全農2024年4月26日
-
「菊池水田ごぼう」が収穫最盛期を迎える JA菊池2024年4月26日
-
「JAタウンのうた」MV公開 公式応援大使・根本凪が歌とダンスで産地を応援2024年4月26日
-
中堅職員が新事業を提案 全中教育部「ミライ共創プロジェクト」成果発表2024年4月26日
-
子実用トウモロコシ 生産引き上げ困難 坂本農相2024年4月26日
-
(381)20代6割、30代5割、40/50代4割【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月26日
-
【JA人事】JA北つくば(茨城県)新組合長に川津修氏(4月20日)2024年4月26日
-
野菜ソムリエが選んだ最高金賞「焼き芋」使用 イタリアンジェラートを期間限定で販売2024年4月26日
-
DJI新型農業用ドローンとアップグレード版「SmartFarmアプリ」世界で発売2024年4月26日
-
「もしもFES名古屋2024」名古屋・栄で開催 こくみん共済coop2024年4月26日