【森島 賢・正義派の農政論】 高齢者に医療の抑制を強要する安倍政権2019年12月9日
安倍晋三政権が、75歳以上の高齢者の医療費の自己負担割合を、1割から2割へ、一気に倍増するようだ。これは、いまでさえ苦境にある高齢者に医療の抑制を強要する、血も涙もない悪政である。
これは、経済的強者である財界の以前からの要求に忠実に応えたもので、経済的弱者に対する冷酷で卑劣な攻撃である。
与党の公明党でさえ、反対とも聞こえる懸念を表明している。宗教者が多いのだろう。しかし、多くの野党は沈黙している。冷血漢が多いようだ。
わが国の農業経済学の創始者である東畑精一先生が、かつて、講義で「先進国ほど病人が多い」と言われたことがある。先生独自の言い方である。解説は不要だろう。
もしも高齢者が医療を抑制すれば、病気と共存し、長いあいだ病気とつきあって人生を楽しむなど、できなくなる。これは、高齢者への非道な虐待である。
ここで言いたいことは、高齢者への同情ではない。それを阻止する野党の非力を言いたい。
国会は今日で閉会になるが、野党はどんなことをしたか。政府の不祥事を暴こうとしただけではないか。そして、政策論議はほとんどしなかった。高齢者の苦境に思いを致すこともなかった。
野党は、劇場的に政府の不祥事を暴くことで、観客である無党派層を惹きつけたい、という戦略だったろうが、それもうまくはいかなかった。
つまり、不祥事の暴露は、すべて不発で終わった。野党の非力が見透かされたからである。非力とは、国民の力強い支援がないことである。だから、政府、与党に危機感がない。危機感とは、こんなことをしていたら、つぎの選挙で敗けるという危惧である。
その間に、日米貿易協定は承認されたし、消費増税も抵抗もなく実施された。そして、高齢者の医療費の自己負担を増額する政策が、粛々と実施されようとしている。
これらはすべて、弱者を痛めつけるものだが、野党の抵抗は、ほとんど聞こえなかった。そして、支持者の間に敗北感だけが残った。
◇
高齢者の医療費の自己負担増を考えよう。
もしも野党が、農業者などの弱者の味方だ、というのなら、「桜問題」と同じ力を込めて、いや、それ以上の力で、政府を追及すべきだろう。そして、その戦略目的が政権の奪取にあることを自覚すべきだろう。
そのためには、野党が非力のままではだめだ。観客から拍手喝采を受けるだけではだめだ。拍手喝采を国会外での組織的な抗議運動に変え、つぎの選挙で投票に結び付けねばならない。それは、公明党の支持者だけではなく、自民党の支持者の中にも、賛同者が広がるに違いない。
野党には、それだけの力が潜在している。高齢者の反対を、うまく組織できれば、この悪政を阻止できる。それだけの力を、高齢者は持っている。
つまり、高齢者に潜在する力を野党が結集できるかどうかが、悪政を阻止できるかどうかの境目である。それは、つぎの選挙で政権を奪取できるかどうかに直結している。
◇
高齢者の潜在的な政治力の強さを、みてみよう。
下の数字は、今年7月の参院選の得票数である。与党の大勝だった。
自民、公明・・・・・・ 2425万票
立憲、共産、国民、れいわ、社民 ・・・・・ 1921万票
これと比べて、
高齢者数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1853万人
この数は、高齢者の潜在的な政治力である。「万人」を「万票」と読み換えればいい。これは、5野党の得票数に匹敵するほどの票数であり、潜在的な政治力である。
◇
以上の数字から言えることは、野党が高齢者の力を結集できれば、この悪政を阻止できる、ということである。
それは、政権を奪取することによる、悪政の根絶的な阻止である。そしてそれは、国会劇場での攻防による、出来もしない政権交代ではなく、政権交代の王道である。
◇
この問題は、全世代型社会保障などという、世代間の抗争を前提にしたものではない。一歩譲って、若者もやがて高齢者になることを前提にしたソントクの問題でもない。また、忠孝という古い道徳の問題でもない。そうではなくて、人間としての優しさの問題であり、生きざまの問題である。政治が人間の心を蝕んではいけない。
野党が政府の不祥事を追及するのもいい。しかし、たえず弱者の窮状を解消する政策を中心に据えておかねばならぬ。そして、野党が切磋琢磨しつつ、協力体制を固めねばならぬ。党利党略、個利個略が渦巻く、醜い合従連衡に明け暮れているときではない。
弱者は、野党を諦めているわけではない、高齢者だけでも1853万票の政治力を持っていて、野党の正義感に燃えた熱血を、期待の目で鋭く見守っている。
(2019.12.09)
(前回 香港が目ざす自由と民主主義の内実は何か)
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