【浅野純次・読書の楽しみ】第46回2020年1月16日
◎東京新聞社会部『兵器を買わされる日本』(文春新書、935円)
トランプ大統領の要求にはしてやられてばかりの安倍内閣ですが農産品ばかりでなく、米国製兵器の相次ぐ爆買いには、大統領もさぞにんまりというところでしょう。
ステルス戦闘機105機で1兆円を超えるとか、複数年度の支払いに分割していくので単年度ではいかにも少なく見えているけれど支払残高(本書では兵器ローン残高と命名)は5兆円を突破したなどと、桁外れの数字が次々に登場します。
さらに注目すべきは購入費以上に維持費が莫大なことで、戦闘機F35A(42機)の購入費5965億円に対し30年間の維持整備費は2倍強の1兆2877億円にも上るとか。利用料やトナー代で稼ぐスマホや複写機商法とそっくりです。
意外だったのは自衛隊の幹部たちが、次々に購入が進む兵器のリストに不満を隠さない姿でした。兵器購入を政治家が私物化し政治利用している有様が浮かび上がります。
防衛費が火の車で、かつ聖域化されているといった防衛費問題の総論もしっかり追及されています。断片的にしかニュースを読んでいないことを改めて認識し、全体を体系的に頭に入れることが防衛問題でも求められていることを知らされました。東京新聞社会部ならではの力作です。
◎竹下大学 『日本の品種はすごい』 (中公新書、999円)
日本は屈指の農業国です。それは品種改良の点で特に顕著です。本書は、育種家(ブリーダー)の活躍に焦点を当てつつ、いかにおいしくて育てやすく好ましい農作物が生まれてきたかを調べ上げたユニークな本です。
取り上げられる作物は7つ。ジャガイモ、ナシ、リンゴ、大豆、カブ、大根、ワサビです。世界史的に見た背景はどうか、日本でどのように育種改良され、産地の状況はどうなっているか、市場にどう受け止められてきたかなどが興味深く語られます。
日本のリンゴは世界で10番目くらいの生産量だけれども質たるや世界に冠たるものだとか、大根は世界最大の生産国であり、かつ日本でも野菜中、最大の生産量だが今はピーク時の1割にすぎないとか。これに開発のエピソードが加わると飽きることがないし、ワサビの裏話などはほとんどの人が初めて聞く話でしょう。
これだけの苦労が野菜の歴史の裏にはあるというのは新鮮な驚きです。農業関係者はもちろん、消費者にも興味の持てる内容です。
◎田中旨男 『101歳現役医師の死なない生活』 (幻冬舎、1430円)
100歳を超えて現役の内科医として働いている著者による健康法45カ条。30分の散歩や15分の日光浴などの「ちょっとした習慣」、野菜、発酵食品、オリーブオイルなどの「食の基本」、心がわくわくする「気の持ち方」など、どれもなるほどと思わせるヒントにあふれています。
著者は32歳で肺結核、89歳で末期がんにかかりますが、完治して今に至っているそうです。そうした大病に誠実に向き合うことで健康の大切さに気づかされると述懐しています。「二病」息災というところでしょうか。
気の持ち方は特に大事だと思いながら読みました。イライラしない、ストレスは少しあるくらいがいい、笑うことで自己免疫力が高まる、などすぐにでも実践できそうです。
私自身、45カ条は実行していることが多く我が意を得たりという感じでした。大病はしていないのでせいぜい過信しないように気をつけようと思います。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
浅野純次・石橋湛山記念財団理事の【読書の楽しみ】
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(159)-食料・農業・農村基本計画(1)-2025年9月13日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(76)【防除学習帖】第315回2025年9月13日
-
農薬の正しい使い方(49)【今さら聞けない営農情報】第315回2025年9月13日
-
【人事異動】JA全中(10月1日付)2025年9月12日
-
【注意報】野菜類、花き類、豆類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年9月12日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政も思い切りやってほしかった 立憲民主党農林漁業再生本部顧問・篠原孝衆議院議員2025年9月12日
-
【石破首相退陣に思う】破られた新しい政治への期待 国民民主党 舟山康江参議院議員2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政でも「らしさ」出しきれず 衆議院農水委員会委員・やはた愛衆議院議員(れいわ新選組)2025年9月12日
-
ドローン映像解析とロボットトラクタで実証実験 労働時間削減と効率化を確認 JA帯広かわにし2025年9月12日
-
スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加2025年9月12日
-
【地域を診る】個性を生かした地域づくり 長野県栄村・高橋彦芳元村長の実践から学ぶ 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年9月12日
-
(452)「決定疲れ」の中での選択【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年9月12日
-
秋の味覚「やまが和栗」出荷開始 JA鹿本2025年9月12日
-
「令和7年台風第15号」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年9月12日
-
成長軌道の豆乳市場「豆乳の日」前に説明会を実施 日本豆乳協会2025年9月12日
-
スマート農園を社会実装「品川ソーシャルイノベーションアクセラレーター」に採択 OYASAI2025年9月12日
-
ご当地チューハイ「寶CRAFT」<大阪泉北レモン>新発売 宝酒造2025年9月12日
-
「卵フェスin池袋2025」食べ放題チケット最終販売開始 日本たまごかけごはん研究所2025年9月12日
-
「日本酒イベントカレンダー 2025年9月版」発表 日本酒造組合中央会2025年9月12日