【JCA週報】協同組合の総合事業性を問う2020年1月20日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 本田栄一 日本生協連代表理事会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「協同組合と教育:その歴史と課題」です。
協同組合研究誌「にじ」2019年冬号の特集「協同組合の総合事業性を問う-農林漁業の構造変化と経済事業の組織・事業基盤-」の座長をお願いした福井県立大学 北川 太一教授 教授の特集改題を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2019年冬号「協同組合の総合事業性を問う-農林漁業の構造変化と経済事業の組織・事業基盤-」
漁、農、森の垣根を超えたコミュニケーションの進展を
北川 太一 福井県立大学 教授
本特集では、わが国の総合農協(以下、農協)、沿海地区漁協(以下、漁協)、森林組合が特徴としている総合事業性について、農林漁業の構造変化の実態を念頭に置きながら、その現代的意義と今後の方向性を問う。
一般に、協同組合における総合事業性とは、複数の事業を兼営していること、特に農協や漁協では、信用事業や指導事業も含めた事業の兼営問題を言うが、近年、こうした総合事業性が2つの点から問われている。1つは、「農協改革」をめぐる議論に典型的な、総合事業性に対する解体的要請(総合農協から農業専門事業体への転換圧力)であり、あと1つは、生産と家計とが未分離な家族経営を基盤としてきた農漁業の構造変化とそれに伴う組合員の多様化、分化の進展である。
そもそも協同組合の総合事業性は、少なくとも上から強制させるものではなく、現場のニーズに応じて形成されたものであり、家族経営を基盤として事業の発展がもたらされてきた。しかしながら、1980年~90年代頃より、農林漁業が絶対的縮小の局面を迎えて、家族を基盤とした生業型事業(経済事業)の縮小に伴い減少する組合員に向けた事業に限界が生じてきた。特に農協や漁協においては、信用(共済)依存型の経営から経済事業の自立化が厳しく求められ、組織合併の推進、連合会に依存する事業方式やそこへの事業譲渡といった再編が進められている。
さらに近年では、例えば六次産業化、集団化や法人化、経営規模拡大(農地集積)の推進、民間企業の参入緩和などに対して、「組織から個への対応」など、新たな経済事業や指導事業としての対応と事業方式の確立が求められている。
以上のことも踏まえながら本特集では、時代とともに変化している協同組合の総合事業性を取り上げ、その歴史的意味と現代的意義を俯瞰する。また、総合事業性の発揮に向けた取り組みを行う実践事例に学びながら、総合事業性を有する事業体としての協同組合の方向性を展望したい。
まず論稿編では3つの論文を掲載し、漁協と農協を対象にしながら、総合事業性の歴史的成立過程も踏まえた今日的意味を明らかにした。
(略)
続く実践編では、漁協と農協の実践家による報告3編、ならびに森林組合における総合事業性に関する論考1編を掲載した。
(略)
いずれにせよ、それぞれの協同組合が有する歴史性を踏まえ、第一次産業が直面している構造問題を冷静に見通しながら、総合事業性に対する評価と展望を与えることが必要であろう。そのためには、漁業・漁協、農業・農協、林業・森林組合の垣根を超えたコミュニケーションをさらに進める必要があると感じた次第である。
本特集企画の発案者である濱田武士氏を含めて、公務ご多忙の中、ご執筆・ご協力いただいた方々に心より感謝申し上げるとともに、今号を契機として、協同組合の総合事業性に関わる議論が、さらに深化することを期待したい。
協同組合研究誌「にじ」 2019冬号より
https://www.japan.coop/wp/publications/publication/niji
※ 論文そのものは、是非、「にじ」本冊でお読みください。
(ご購読のご案内)
日本協同組合連携機構(JCA) 基礎研究部まで電話・FAX・Eメールでお問い合わせください。
(TEL:03-6280-7252 FAX:03-3268-8761 E-Mail:kenkyu@japan.coop )
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
コラム一覧【JCA週報】
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(174)食料・農業・農村基本計画(16)食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する目標2025年12月27日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(91)ビスグアニジン【防除学習帖】第330回2025年12月27日 -
農薬の正しい使い方(64)生化学的選択性【今さら聞けない営農情報】第330回2025年12月27日 -
世界が認めたイタリア料理【イタリア通信】2025年12月27日 -
【特殊報】キュウリ黒点根腐病 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【特殊報】ウメ、モモ、スモモにモモヒメヨコバイ 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【注意報】トマト黄化葉巻病 冬春トマト栽培地域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
【注意報】イチゴにハダニ類 県内全域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
バイオマス発電使った大型植物工場行き詰まり 株式会社サラが民事再生 膨れるコスト、資金調達に課題2025年12月26日 -
農業予算250億円増 2兆2956億円 構造転換予算は倍増2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(1)2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(2)2025年12月26日 -
米卸「鳥取県食」に特別清算命令 競争激化に米価が追い打ち 負債6.5億円2025年12月26日 -
(467)戦略:テロワール化が全てではない...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月26日 -
【スマート農業の風】(21)スマート農業を家族経営に生かす2025年12月26日 -
JAなめがたしおさい・バイウィルと連携協定を締結 JA三井リース2025年12月26日 -
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」採択 高野冷凍・工場の省エネ対策を支援 JA三井リース2025年12月26日 -
日本の農畜水産物を世界へ 投資先の輸出企業を紹介 アグリビジネス投資育成2025年12月26日 -
石垣島で「生産」と「消費」から窒素負荷を見える化 国際農研×農研機構2025年12月26日 -
【幹部人事および関係会社人事】井関農機(1月1日付)2025年12月26日


































