【熊野孝文・米マーケット情報】消費税増税で売れなくなったコメ2020年2月18日
(一社)全国スーパーマーケット協会がまとめた「2020年版スーパーマーケット白書」に2019年の販売動向について「全店売上高で99.9%となり、2012年の年間集計開始以来はじめて全店ベースでも前年を下回り、既存店前年比でも98.7%と3年連続で前年を下回った」と記されている。
この白書には、カテゴリー別、品目別に月別動向や来店数DIや客単価DIなど様々なデータがグラフ化されて紹介されており、ページ数は106頁にもなるが食品の消費動向を見るうえで大変貴重な資料だ。
この白書に消費税10%への引き上げの影響と題して以下のようなことが記されている。
「10%への引き上げの影響については、増税幅が2%と前回に比べ小さいことや、食品と新聞を対象に軽減税率が導入されること、またキャッシュレス・ポイント還元事業など様々な対策が用意されていることから、軽微なものに留まると期待する見通しが多かった。特に駆け込み需要の発生抑制と反動減の緩和への対策が中心となっていたが、引き上げ後の経済指標が発表されると、その悪影響が予想以上に深刻である可能性が見られる。まず、注目された10月の家計消費支出は、前回8%引き上げ時がマイナス4.6%だったのに対し、今回は前年比でマイナス5.1%となり、減少幅は大きくなった。前年比でみた消費は前回以上に反動減が大きかったことになる。さらに12月上旬にスーパーマーケットを対象にして行った消費税の影響に関する調査では「想定通り」が43.6%と最も多かったものの、「想定よりかなり悪い」「想定よりやや悪い」を合せると42.7%になるなど軽微な影響とは決して言えない状況になっている」。
白書には2019年度の品目別100人当たりの購入金額がグラフ化され記されているが、最も落ち込んでいるのが"コメ"である。このことは総務省の家計調査でも消費税が値上げされた10月、11月は2ヵ月連続して精米の購入数量が10%以上落ち込んだという衝撃的な数字にも表れている。
以前、米穀機構が消費税値上げにともなうコメへの影響について「直近10年の可処分所得などの推移を追うと、10年間で実収入が10,352円減少し、非消費支出(税金、社会保険料など)は9,330円増加、可処分所得は19,682円減少している。消費増税は消費者の節約志向を更に強めるものと推察され、米の購入・消費にも大きく影響するものと考えられる」としていたが、現状はまさにその通りになっている。
厚労省の国民生活基礎調査によると100万円~200万円未満の世帯は12.3%、200万円~300万円未満が13.3%、300万円~400万円未満が13.8%で全世帯数の4割を占めており、所得世帯別のコメの支出金額比率は所得が少ないほどコメの支出金額のウエイトが高まる。消費税が10%になり、益々可処分所得が減ると購入支出金額のウエイトが高いコメの購入を減らす。このことがコメが売れなくなった最大の原因である。
コメの消費減を強く憂いている日本炊飯協会が作成した1世帯当たりのコメと小麦粉製品(パン・麺合計)の購入数量の元年度(1月~12月)推計では、小麦粉製品は78.863kg前年比100.6%だが、コメは57.787kg、前年比87.8%と大きく落ち込んでいる。毎年のように小麦粉製品とコメの購入数量の差は開く一方だが、日本炊飯協会では今後その差は益々開き、コメの消費減が加速化すると危機感を抱いている。それはTPP合意で小麦は2026年までにマークアップが段階的に45%引き下げられるほか、パスタ等小麦粉加工食品も順次60%まで関税が引き下げられるからである。すでに小麦の売却価格は税込みで1t当たり4万9890円と5万円を切るまで値下げされている。商社の試算によると関税の引き下げにより、小麦粉の価格は毎年1kg1円強下がり、9年目には11円値下がりすると予測している。
スーパーマーケット白書を見ても調理パン、食パン、麺の購入金額は落ちていない。唯一の救いは米飯類の購入金額が高止まりしていることで、落ち込みが著しいのは精米購入金額であることだが、米飯類が原料米の価格が下がらず、小麦の価格だけが下がった場合、米飯類の価格競争力が削がれることは言うまでもない。炊飯協会の危惧もそのことにあり、協会は農水省に出向き幹部に直接「コメのマークアップを下げる」よう要請した。
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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】
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