【森島 賢・正義派の農政論】新型肺炎が招く医療崩壊の危機2020年2月25日
新型肺炎についての報道が、マスメディアで毎日大きく伝えられている。しかし、大きく伝えられているほどに強い危機感がない。ここには、医療の全般的な崩壊を内蔵している。いや、すでに医療崩壊の状況になっている。
だが、そうした危機感が、政府にもないし、マスメディアにもない。「手を洗え」、「マスクをせよ」と説教を垂れるだけだ。自己責任の強要だけだ。
いまや感染者が、いつ、どこで、大勢みつかっても不思議ではない状況である。それにもかかわらず、いま現在、どこに何人の感染者がいるか、さえ分かっていない。
ここには、国民に対して「由らしむべし、知らしむべからず」という姿勢がみられる。これは、政府の農業者に対する姿勢でもある。
いったい今、感染者が何人いるのか。政府は、それを知ろうとさえしない。感染しているか否かの検査を、ほとんど行っていない。本人だけでなく、医師が専門的な知見に基づいて検査を要求しても、ほとんどのばあい拒否されている。そうして、検査の結果、陽性の人だけが感染者として認定される。
これでは、感染者の実際の総数は分からない。政府が認定した、いわば政府公認の感染者だけが感染者になる。これでは実際の感染者のうちの、ごく一部が感染者になってしまう。つまり、真実を誤認している、という意味で没科学的というしかない。ある専門家は、実際の感染者数は公認の感染者数の100倍ほどになるだろう、と推定している。
なぜ、政府はこうした実態を知ろうとしないのか。
◇
政府の言い分はこうである。
希望する人の全員を検査するだけの能力がある検査機関が無い、と政府はいう。これは、医療崩壊以外の何ものでもない。検査しなければ治療もできない。
その一方で、専門家によれば、民間の検査機関を含めて今ある検査能力を十分に使っていないという。そのためには、検査に保険を適用できるようにすればいいという。
だが、政府はそうしない。
◇
政府は、公認の感染者の数を増やすと、感染者を収容する病院の病床が足りなくなる、と考えている。だから、公認の感染者を、実際の感染者の100分の1に抑えている。そうして100倍の実際の感染者を放置している。まさに医療崩壊である。
病床が少なければ、急いで作ればいいのだ。病床を増やす計画を国民に示して、国民の理解を求めればいいのだ。だが、政府はそれをしないし、マスメディアの追及もない。ちなみに、中国では、武漢に1000人を収容できる病院を2棟、1週間足らずで作ったという。
今日、政府は基本方針を発表するという。マスメディアによれば、その内容は、感染者のうち軽症者は入院させず、自宅で療養せよ、という方針だという。伝染病患者の入院を拒否して、自宅に閉じ込めるというのである。
これは、まさしく医療崩壊である。
◇
また政府は、感染者をみつけても、治療の方法がないという。たしかに特効薬やワクチンは急には作れないだろう。しかし、それなら、そのためにどんな努力をしていて、いつ頃までに新しい特効薬を作れるだろうと説明して、国民の理解を求めるべきだろう。マスメディアは政府だけをみていて、国民をみていないので、こうした追及をしない。
新しい特効薬を作る以前でも、患者の苦痛を抑え、重篤にならないようにすることは可能だろう。それを国民に示さねばならない。安全性が確認されている既往の薬を転用する試験も大胆に行ったらどうか。中国にはそうした経験と実績があるだろう。そうした経験に学ぶことも重要である。
◇
国民の生命を守ることは、いうまでもなく政府の最重要な責任である。それと同時に、政府の責任を追及することはマスメディアの責務である。
いま、わが国は医療崩壊の危機にあるのである。それは、国民の生命の危機である。
(2020.02.25)
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