【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】新型肺炎に思う真のリーダーのあり方2020年4月2日
2020年3月23、 24日に新型肺炎が猛威を振るう中で行われた大学の卒業・修了式典に際して、3月22日に、研究室の卒業・修了生に贈った祝辞を若干編集して紹介したい。
◇ ◇
卒業、修了、おめでとうございます。
世界的な新型肺炎の影響で、日本でも式典を縮小せざるを得ない状況ですが、皆で門出を祝う想いは、式典がどうなるかとは関係なく、変わりありません。今、大切なことは自分自身と家族、仲間の健康を守ることです。
さて、新型肺炎に対する日本の対応から、皆さんに伝えたいことがあります。日本のトップは「東京五輪まではトップの座にいたい。そのためには、国民を犠牲にしても米国の言うことは何でも聞く」と疑われるくらいの姿勢で「やっとここまで来たのに、五輪ができなくなることは絶対に受け入れられない」との思いから、とにかく、患者数と死亡者数を隠そうとしてしまった疑念が拭えません。
ダイヤモンド・プリンセスの中は「日本の数字にカウントしなければよい」として、半ば放置し、下船させず、感染率が約20%(712人/3700人)という異常な事態を引き起こしました。
国内では新型肺炎かどうかの検査数をどれだけ言われても増やさず、重症化を放置して、手遅れにしてでも感染者数を表に出さないようにしようとしたと疑われます。亡くなってから陽性が判明しているケースもありますが、亡くなった人を検査せず、別の病名にしておけば、死亡者数も抑えられます。
日本がどれだけ感染者数、死亡者数を隠しても、世界的な現状は、とうてい東京五輪を開催できないことは、もはや明白になってきました。それでも「完全な形で開催」としか言いません。頭にあるのは自分たちのメンツや権力への執着だけで、選手や人々の健康を思いやる気持ちは微塵もないかのように思われます。(注:このあと3月24日に延期が決まった直後から感染者の公表数が急速に増加したのもわかりやすすぎる。)
救いは、勇気ある研究者などの声です。神戸大学の岩田教授はクルーズ船内の悲惨な措置を暴露しました。政府は処置が「適切」だったと言い張りましたが、適切なわけがないことは、「20%の感染率」だけで如実に物語っています。
ここで、ひとつ重要なことは、「核心をついた数字の証拠は最も雄弁で、どんな反論にも負けない」ということです。「数字で示す」ことを鍛えた当研究室のみなさんは、ぜひ、このことを、これからも心がけて下さい。
また、検査数が意図的に抑えられていることも、岡田教授が暴露しました。「今だけ、金だけ、自分だけ」(秘書の日下京さんが紹介してくれた本から私が抜き出して全国的に広まったフレーズ)が蔓延している日本で、圧力に負けずに、こうした人たちが声を上げてくれていることには勇気づけられます。
日本のリーダーは何事も「国民を犠牲にしてでも自分とオトモダチを守ろう」としているかのように見えます。リーダーは「我が身を犠牲にしてでもみんなを守る」覚悟がなくてはなりません。皆さんには、ぜひ、その覚悟あるリーダーに育ってもらいたい。だから、若いときに力を蓄えて下さい。早くに本当のことを言い過ぎると潰されます。しっかり力を蓄えて、潰されないように生き延びて、しかるべき立場になったら、人々を救うのです。盾になって反論するのは私のような老人に任せて、みなさんは、耐えるべきは耐えて飛躍を続けて下さい。
今回の新型肺炎は、世界の人種的偏見もクローズアップさせました。アジアの人々が欧米で不当な扱いを受けるケースが増えたことは残念です。逆に、アジアの人々の間に助け合い、感謝し合う連帯の感情が強まった側面もあります。「山川異域、風月同天」(山河は違えど、天空には同じ風が吹いて同じ月を見て、皆つながっている)
この機会を、日本の盲目的・思考停止的な対米従属姿勢を考え直す機会にし、アジアの人々が、そして、世界の人々が、もっとお互いを尊重し合える関係強化の機会にしたいと思います。
しかし、対米従属を批判するだけでは先が見えません。それに代わるビジョン、世界の社会経済システムについての将来構想が具体的に示されなくてはなりません。まず、日本、中国、韓国などのアジアのすべての国々がいっしょになって、共通性に根差した基盤をつくる。農業の面でいえば、アジアの国々には小規模で分散した水田農業が中心であるという共通性があります。そういう共通性の下で、多様な農業がちゃんと生き残って、発展できるようなルールというのを私たちが提案しなくてはいけない。そして、そのための数字に基づいた具体的なプランが必要です。そうしたことを実現するのも、数字を駆使できる当研究室から巣立つ若い皆さんに期待されている役割の一つかと思います。
自分を大事にし、家族を大事にし、そして、みんなのことも考えられる、そんなリーダーになってくれることを念じて、お祝いの言葉に代えさせていただきます。
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