【近藤康男・TPPから見える風景】突然出てきた日米デジタル貿易協定を考える2020年4月2日
多くの人々がスマホやパソコンを当たり前のように利用し、便利さを享受している一方で、ネットを通じた被害も個人・企業で頻発し、政府を含め充分な対処も出来ているとは言えないない。前回のコラムでも触れたが、“形を持つモノを中心とした経済から見えない金融・知財、更にデータへ”という変化に政府が追い付けず、巨大IT産業の作り出す見えない秩序の追認に留まっていることの表われでもある。
◆巨大IT企業の後追いを急いだデジタル貿易協定
日米交渉は、17年2月のトランプ氏のTPP離脱宣言の直後から2年以上首脳レベルの協議を続けたが、その間「デジタル貿易協定」が交渉課題として公になったことは無い。そして、トランプ氏に押し切られた形で、19年4月からの半年で日米交渉は決着し、突然日米デジタル貿易協定の合意を知ることとなった。
通信情報技術の進歩・データ経済・デジタル経済が急速に社会を覆う中で、EUが課税や個人情報保護の観点から巨大IT企業規制を強化し、OECDでもIT企業課税の検討が進んだこともあり、日米もEU・中国を意識してル-ル化の主導権確保を急いだのではないだろうか。
そしてこの間、NZ・ニュ-ジ―ランド・チリの「デジタル経済パートナーシップ協定」が実質合意に至っている。
しかし、日本では未だ、個人情報保護法・独禁法の改正、デジタル広告・タ-ゲット広告規制などが検討中だし、"プロバイダ-責任制限法"のガイドラインは見直しが続いている。20年1月の経産省によるOECD報告も「政府ではサイバ-空間を把握できない。民間がル-ルの設計、政府は監督という共同規制だろう」と及び腰だ。
日米のデジタル協定は、果たして充分な協議を経た結果の協定だろうか?
◆TPPを超える日米デジタル貿易協定
TPPでは電子商取引・知財・金融などに分散していた内容がデジタル協定に統一され、TPPに無かった多くの内容が含まれることとなった。関税免除の範囲も「商業目的のデジタル製品全て」(1条定義と7条)とTPP以上に広げられたが、"デジタル製品"にはまだ未知のモノが生まれる可能性もある。また、サーバ-などの設置を事業進出先の国に限定することの禁止規定も、TPPに無かった金融サ-ビスが追加(13条)されていて、日米ではともかく、一般論的には金融危機の際の金融秩序安定の実効性が懸念される。
TPPに無かったアルゴリズムの開示要求の禁止(17条1項)、プロバイダ-責任の免責(18条)なども加えられた。
◆最も大切な人権や公正さ、個人情報保護への規制が及び腰
全体に、公的規制を禁止する場合の例外措置には"但し書き"が付き、事業活動に影響を与えないことが優先されている。
データ加工の結果を得るうえで、基準や価値判断、公正さの在り方、個人の意向や個人評価などに大きく影響するアルゴリズムの開示要求が新たに禁止された。最近では、学生の就職活動を通じて入手・加工された個人情報が勝手に企業に販売され、採用のために使われたとして問題となったが、そのアルゴリズムはブラックボックスのままだ。
インターネット接続業者と情報の利用者も、ネットを通じて流通・利用される情報による名誉棄損などの被害、世論の動向に影響を与えかねない偽情報の拡散などについても、その内容作成に関わっていなければ責任を問われず、自主規制を促すに留まっている。
データ・ネット社会におけるIT産業の影響力には計り知れないものがある。透明性と市民による監視を前提に公的関与の必要性とネット接続業者の責任を明確にすること、個人情報売買の実効性ある規制などが求められる。
◆企業の存在感を株式時価総額で見る

上位を占めるのは米国のGAFAであり、中国のアリババとテンセントが続き、欄外のバイドゥを加えて所謂BATを構成する。
20位までを含めると、米国の存在感、中国の台頭、IT関連企業の台頭と巨大化、金融の後退、日本の後退などが明らかだ。
※ネット検索資料を加工して作成(ハイレベル金融サイト・フィナンシャルスタ-から検索)
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