憂慮すべき日本政界に広がる感情的反中国・反韓国ナショナリズム【森田実の政治評論】2020年8月29日
「遠き慮(おもんばか)りなきときは、必ず近き憂いあり(孔子)」
岐路に立つ日中・中韓関係
この格言は「遠い未来のこと、広く周囲のことを考えていないと、必ず身近なところに良くないことが起こる」という孔子の教えである。
最近、与野党を問わず、政治家の間に反中国・反韓国の感情が高まってきていることは大変憂慮すべきことである。言いたいことがあるからと言って、遠慮なくもの申して、相手側が素直に受け入れてくれれば問題ないが、喧嘩になってしまえば将来への悪影響が出る。政治指導者は、自らの行動がいかなる影響をもたらすかを総合的に考えて行動しなければならない。軽率な感情的行為は百害あって一利なし、である。
日本はアジアの平和と繁栄に大きな責任を負っている。とくに、隣国の中国と韓国との友好協力関係を積極的に発展させる努力をしなければならない。隣国と対立したり、アジアから離れるような動きは、してはならないことである。
しかるに、最近の日本の政界の動きをみると、反中国・反韓国の姿勢が目立ってきている。このため、中国政府と中国国民のなかに、日本への強い警戒心が芽生えてきている。一部の日本の政治家と言論人の反中国・反韓国的言動が両国国民の感情を傷つけている。
とりわけ中国の世論を刺激しているのが河野太郎防衛大臣の過激な発言である。河野太郎大臣は8月15日の日本経済新聞のインタビューで、中国政府が神経をとがらせている日本の「ファイブアイズ」との接近について、「シックスアイズ」と言われるようになってもよい」と、中国政府を挑発する発言をしている。あまりにも軽率な発言である。その上中国を「安全保障上、極めて重大な懸念があると言わざるを得ない」と発言している。河野太郎大臣の発言の底に中国への敵意を感ずる中国人は少なくないだろう。防衛大臣の河野太郎氏は過激な発言は慎むべきである。
日本政府と自民党が「敵基地攻撃能力整備」の検討を始めたことに対し、中国政府と韓国政府は、日本が日本国憲法第九条にもとづく専守防衛の基本方針を変えて、軍事大国路線に踏み出すのではないかと、警戒心を強めている。
日本の政治は理性をとりもどさなければならない。一時の感情で最も大切な友を失うような愚かなことをしてはならない。中国と韓国との平和友好関係は日本の命綱であることは片時も忘れてはならない。今日本に必要なのは、慎重さと忍耐である。
人類が直面する五重苦
コロナ禍、異常気象による大災害、深刻な経済不況、悲観主義とニヒリズム、トランプ現象に象徴的な国際秩序の崩壊―。この五重苦に人類は直面している新型コロナ感染病を止めるワクチンと特効薬が発明されるまでは、この五重苦はつづくと覚悟しておかなければならない。
人類がこの五重苦を乗り越えるためには、なによりも国際秩序の回復が急務である。最大の障害はトランプ政権である。
来る11月3日に行われる米国大統領選でトランプが敗北すれば、秩序回復へ向って一歩前進する。新大統領のバイデンと習近平が握手し、米中和解が成立すれば五重苦克服への一歩が開かれる。
米国在住の友人によると、今はトランプはコロナ対策の失敗により支持率は低下しているが、中国またはイランと戦争を始めれば選挙での勝利の可能性が生まれるという。トランプは選挙に勝つためなら、なんでもやる人のようだ。戦争をいとわわない。そうだとするといま人類が全力をあげて努力すべきは、トランプに戦争させないことである。
アジア情勢にくわしい友人によると、トランプが戦場として選ぶ可能性のあるところは、イランのほか、南シナ海、東シナ海、台湾海峡、尖閣諸島(以上中国)、北朝鮮である。
尖閣諸島で戦争が起きると、日本が戦争の当事者となり、日米同盟対中国の闘いになる。これは米国が最も望んでいることだ。
日本にとって米国と一緒になって中国と戦争することほど愚かなことはない。しかも尖閣諸島を戦場にするなど、絶対にしてはいけないことだ。
最近のトランプ政権の中国への徹底した制裁の執拗な執拗な繰り返しをみていると、かつて1930年代後半期に米国ルーズベルト政府が日本を徹底的に挑発し、追い詰め、愚かな日本軍に真珠湾攻撃を仕掛けさせ、これを機に米国の国論を盛り上げ日本を壊滅させたときの"挑発戦略"を想い出す。
中国政府は、トランプのと徹底した挑発に乗せられないと思うが、あぶない局面ではある。
とにかく、日本はいかなることがあっても平和主義を守り抜かなければならない。人類にとって一番大切なこと―それは平和である。トランプの対中国閃絡に乗せられてはならない。
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