秋田こまちストップ安と食味特A落ちの関連性はあるのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2021年3月9日
穀検の食味評価ランキングについては関心が高いので2年産米の結果をご覧になった方も多いと思うが、秋田県の生産者にとっては肩を落とす結果になってしまった。主力品種のあきたこまちの評価が県南地区も特AからAに陥落、秋田県で生産されるあきたこまちは特A評価を得られるものは無くなった。それに追い打ちをかけるように5日のコメ先物市場では3年産米の受渡し限月になる12月限がストップ安になってしまった。

4日に穀検から2年産米の食味ランキングが公表され、5日のコメ先物市場で秋田こまちの12月限がストップ安になってしまったのだからそれが影響しているのかと思われるかもしれないが、結論を先に言ってしまうと関連性はない。関連性が無いと言い切るには語弊があるが、食味評価と市場評価とは別物でパラレルな関係にはなっていない。分かりやすく言うと特A評価を得たからと言ってその産地銘柄が引く手あまたになるかと言うとそんなことにはならない。従って特A評価を得たからと言って市場価格が上がるという事もない。山形はえぬきは、2016年産が一度特Aから陥落したことがあるが、その年以外はずーっと特Aだが、市場評価が高いというわけではない。さらに付け加えるならば食味評価ランキング自体がその地区の一カ所からサンプルを抽出して男女半々の食味パネラーが評価しているに過ぎないので、その地区全体の産地銘柄の評価と言うわけではない。
国内最大手外食企業は自社で使用するコメの食味評価については日本式の食味評価ではなく、アメリカで発達した知覚評価学に基づいた手法で全国各産地の銘柄米の白飯を評価している。知覚評価学は第一次世界大戦後に誕生した学問で、アメリカでは兵士に食事を供給する際、いかに美味しく食べてもらえるか研究していたのである。食欲を増進させるためには味覚だけではなく、もっと広く知覚を研究することが必要だということでこうした学問が誕生した。カリフォルニア大学ではいまでも知覚評価学を学生に教えている。
話を秋田あきたこまちに戻すとなぜ先物市場でストップ安になってしまったのか?
5日の引値は4月限1万2200円、6月限1万2400円、8月限1万2490円、10月限1万1500円、12月限1万1400円、2月限1万1300円である。4月限から8月限までは2年産米の受渡し限月で、10月限から2月限は3年産米の受渡し限月になる。3年産はまだ作付も始まっていないが、この価格を見る限り先物市場では2年産より価格が安くなると見ていることになる。2年産が標準品になっている最終限月の8月限が1万2490円であるのに対して3年産の最初の受渡し限月である10月限は1万1500円で、990円もの新古逆ザヤになっている。新潟コシの新古の鞘関係は、8月限が1万3680円であるのに対して10月限は1万3710円で30円の順ザヤになっている。
量販店での売れ筋の2大銘柄がこれほどまでに違う先行きの価格が形成されているのかその要因は、第一に現物需給に違いがあるからである。
それが良く分かるのが5日に開催された日本コメ市場のFAX取引会である。全体概要では、売り物総数は110産地銘柄で前回(1月15日)より34%も多い19万5542俵もの売り物が出た。全銘柄の加重平均価格は前回より3%安い60キロ当たり1万2827円(東京着税別)になっている。売り唱え価格は秋田あきたこまちの下値が切り上がっているのに対して新潟コシヒカリは下値が700円値下がりしている。全体的にはコメの需給が緩んでいるが、銘柄ごとにみると秋田あきたこまちより新潟コシヒカリの緩みが大きいという事になる。それはマンスリーリポートに出ている数字で明らかで、契約数量は元年産との比較では秋田あきたこまちが100%になっているのに対して新潟コシヒカリは90%に留まっている。
銘柄ごとの現物(2年産)の需給事情に違いがあることがこうした格差に現れていることの一因だが、それにも増してまだ作付もされていない3年産米の価格がなぜこれほどまでに値下がりしたのか? 新潟コシの10月限が発会したのは昨年の10月21日で、発会値は1万4560円であった。それが5日は1万3710円と850円値下がりした。秋田あきたこまちは1万2970円で発会したものが1万1500円と1470円も値下がりしている。あきたこまちが下げ過ぎなのか否かはまさに今後の作付動向と気象条件にかかっている。
3月17日午後2時から新潟市の万代シルバーホテルで開催される堂島主催のコメ先物セミナーで、県内JAのコメ販売担当課長が先物活用実践事例を講演する予定なので、先行きについてどう見ているのか聞いてみたいものである。
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