新政権 してはならぬ事・しなければならない事【森田実の政治評論】2021年9月29日
「行を省みる者は其の過ちを引かず」(晏嬰)
してはならぬ事
第一。新政権は「傀儡(かいらい)政権」になってはならない。闇将軍をつくってはならない。裏に闇将軍がいて、政権がそのあやつり人形化する危険がある。これだけは絶対にしてはならない。いつまでも野心をもった闇将軍がいて、現政権を裏から動かすようなことを許したら、政府は国民の信頼を失い、崩壊する。闇将軍の存在を可能にするような権力欲のための派閥は存在してはならない。
第二。米国政府に追従し、米国政府の言うがままに中国政府と敵対する政権になってはならない。米国支配層のなかには、日本を中国封じ込めに利用しようとしているジャパンハンドラーが存在している。日本政府が米国のジャパンハンドラーに振り回される危険は現にある。彼らのなかには、日本の自衛隊を中国人民軍と戦わせようとしている者もいる。
日本の自衛隊が中国人民軍と軍事衝突を起こしたら、日本はただちに潰滅する。この道は絶対に阻止しなければならない。
第三。国会軽視をつづけてはならない。菅政権は国会を軽視しつづけてきたが、新政権は、この国会軽視を継承してはならない。菅政権は、野党を無視し、自公二党だけで政権を運営しようしてきたが、新政府は国会と野党軽視の誤った政治姿勢をつづけてはならない。
第四。今世紀になって、政治の側は「政治主導」確立のスローガンのもと、官僚を軽視し上から目線で抑え込み、強制によって働かせようとしてきた。この結果、官僚組織は荒廃した。官僚指導層は「忖度官僚」化している。新政権は、この官僚組織を荒廃させた愚行を継承してはならない。
第五。政界を「反中国感情」が支配し、与野党とも「反中国」の主張を強めているが、新政権は「反中国感情」を継承してはならない。菅政権は中国政府との対話すらしようとせず、対中国外交は停止してしまっていたが、この愚かな姿勢を継承してはならない。
しなければならない事
第一。平和外交の確立である。米国政府主導の中国包囲網形成の先兵になるような反平和外交を停止し、日本国憲法第九条に従って平和外交に徹するべきである。日本政府は中国政府、韓国政府、北朝鮮政府と対話しなければならない。
第二。米国に完全に従属しているような安倍・菅外交を改め、自主平和外交に徹しなければならない。今のままでは、日本は世界から「米国の完全従属国」とみられるようになるであろう。
第三。国会を中心に与野党が議論する真の議会政治を回復しなければならない。日本は議会制民主主義の国である。日本国憲法第41条の「国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」は守らなければならない。自公両党だけですべてを決めるような態度は改めるべきである。
第四。政治家は官僚を人間として尊重する態度をとるべきである。今の政権は「政治主導」の意味をはきちがえている。上から目線で強権的な態度をとることは百害あって一利なしである。政治家は倫理的卓越性と知的卓越性を持ち、人間尊重の姿勢で官僚と交わるべきである。
第五。長期的視野に立ち、自然、地方、農業を重視する方向へ、大胆な政治転換を行わなければならない。地球の危機を認識し、世界中が心を一つにするよう、日本は平和外交に努力する必要がある。
自民党よ、謙虚たれ!
政治権力の歴史を振り返ると、政治家は成功すると高慢になり、人民を上から見下し、強権政治に走り、国民の信頼を失い、新たな政権によって倒される。新政権は初めは人民のために努力するが、成功すると、傲慢になり、人民大衆を軽視するようになり、破滅する。政治権力の歴史はこの繰り返しであった。
自民党も2009年8月30日の衆院選で大敗北を喫して、政権を失ったあとは、謙虚になり、反省し、出直しの努力をしたが、2012年12月に政権の座についたあと、徐々に謙虚さを失い、傲慢になってきている。自民党がこのことに気付き、反省をしなければ、来るべき衆院選において大幅に議席を減らすことになるだろう。
自民党は、連立政権のパートナーの公明党を見習うべきであると思う。公明党の政治家は、つねに謙虚である。毎日毎日、国民の中に入り、小さな声を聞き、政策提案にまとめて、行政に反映させる努力をしている。公明党には派閥争いはない。世代交代もスムーズである。世襲制もない。有能な新人が後継者になる人事システムが機能している。
自民党は、まず、なによりも謙虚になる必要がある。2009年8月30日の衆院選で大敗北を喫し、わずか119議席に転落した時の気持ちを忘れてはならない。来るべき衆院選において問われているのは、自民党の政治姿勢である。自民党よ、謙虚たれ!
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