(259)ICAの動きとウェビナー【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2021年11月26日
2021年11月15日にICA(国際協同組合同盟:International Co-operative Alliance)は「2020 Activities Report(2020年活動報告)」1を公表しました。今週はその内容を見て感じた点をいくつか取り上げてみたいと思います。
恐らく、過去の日本社会において「協同組合」というと「農業協同組合」を思い浮かべる人が圧倒的多数の時代が長かったのであろうが、近年では「生活協同組合」の方がすぐに連想されやすいかもしれない。もちろん都市部と農村部などの地域差はあろう。「豚の尻尾」の「農協マーク」に愛着を感じて社会人生活を開始した筆者としては、ある時期、熱病のように日本中を席捲したCI活動の一環でいつのまにか、多くの日本の組織が「J何とか」になり、「農協」が「JA」になったことに不思議な感覚を持ったことも今は昔である。
ところで、このコラムは「農業協同組合新聞」のご厚意により場所を提供して頂いているが、既に世の中では「JA」と「農協」は全く別物だと思っている世代すら少しずつ登場していることも理解しておきたい。
さて、ICA報告の詳細は、それを専門にしているメディアや研究者がいずれ分析をしてくれることに任せるとして、ここではICAという組織がメンバーとして認めている「協同組合」とは「農協」や「生協」、「漁協」だけではないことを述べておきたい。
分野別に見ても、農業、漁業、一般の製造業やサービス業、健康、小売り・消費者、住宅、金融、保険、これらは全てICAの組織図の中で最初に主要な部門として記載されている。したがって、「協同組合」という組織が対象とする射程は、通常、我々が想起する「農協」「生協」「漁協」より、はるかに広い...ということを理解しておう必要がある。
その上でだが、ICAには分野ごとに世界レベルで活動を見る部門が存在している。例えば、農業の場合には、ICAO(International Cooperative Agricultural Organization)、以下、正式名称は省略するが、漁協はICFO、金融はICBA、保険はICMIF、消費者はCCW、住宅はCHI、健康関係はIHCO、などという形である。
例えば、ICAOが2020年、どのような活動を実施したかについての記載を見ると、年度前半はSDGsを中心としたグローバルな諸課題に取り組むとともに、FAOやWFPの拠点でもあるローマに新たなオフィスをオープンすることの検討がなされたこと、さらに世界各国のメンバーとの間で何回かの遠隔会議が開催されたことなどがわかる。
9月には「Post-Covid-19時代における農業協同組合の役割」というまさに重要なテーマでウェビナー(遠隔会議)が開催されたようである。レポートの短い記述からは参加者の詳細は判断が難しいが、ブラジル、ガーナ、インド、トルコなどからの専門家とともにFAOの協同組合担当の参加もあったようだ。
さらに、各地域でいかなる形で協同組合が地域に貢献しているかというこ
との具体的内容(例えば、コミュニティが必要としている衛生用品の寄付や、サプライ・チェーンが混乱して影響を受けている農家とのコミュニケーションなど)が共有され、「生協」を含む農業に関係するより多くの利害関係者と関わっていくことの必要性が述べられている。
こうした活動を受けて、11月には実務レベルでの会合が持たれ、各々の分野で適切なプロジェクトが検討され、その内容が来年3月にはエクゼクティブ・コミッティーに提出される予定のようだ。
パンフレットに記されている内容はあくまでも簡潔かつ綺麗な文言であり、実際に公表するまでには担当者レベルにおけるやり取りや文言の修正が何度も繰り返されているのであろう。だが、記されている短い文章をよく読めば、彼らの行動の概要は十分に把握できる。世界レベルでは「農協」「漁協」「生協」その他分野における「協同組合」が、それなりに一定の情報交換と連携を模索しているようだ。
* *
国際会議などに参加する日本人の数はかなり増えてきたのでしょうが、それでもまだまだ少ないかもしれません。遠隔ツールを活用すると国内遠隔地との会議だけでなく、いきなり国際会議が出来てしまいます。うまく活用すれば日本農業や日本の農家にとっても世界のマーケットや各国の知見を得る貴重な機会になるのではないでしょうか。
1 ICA 2020 Activities Report. アドレスは、https://www.ica.coop/en/media/library/annual-reports/ica-2020-activities-report
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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】
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