朝食はごはん食が安いという経済評論家【熊野孝文・米マーケット情報】2022年2月15日
法人会の機関誌に著名な経済評論家が「朝食は和食が安い」という一文を寄せているのをコメ業界団体役員から送ってもらった。その部分をそのまま記すと「食品が値上がりする中、上がっていないのがお米。今まで朝食はパンと言う人は、この際、和食のごはんに切り替えると食費を安く抑えることが出来るかも。ごはんはお茶碗1杯20円ぐらいですから、卵をかけても40円ほど。みそ汁をつけても50円ぐらいで済みます。一方、食パンは6枚切りで1枚25円前後。バターを付け、目玉焼き、コーヒーを添えると100円近くに。しかもパンよりご飯の方が腹もちが良い。いろいろ工夫しながら、高騰する食品価格に上手く対応して行きましょう」。
和食の朝ごはんが50円で済むというのは確かに安いが、本当にこの価格で済むのか計算してみた。購入したコメは5キロ1000円の「とちぎの星」。購入先は以前このコラムで千葉コシヒカリを5キロ1000円で特売したスーパー。コシヒカリに続き粒すけを1000円で特売したのだが、チラシ掲載日の午後に店に買いに行っても売り切れだったので、今回は午前中に買いに行ってゲットした。1合150グラムで30円。一食半合ぐらいなので茶碗1杯分では15円になる。特売品でなくても1杯20円ぐらいで済むというのは当たっている。卵も値上がりしているとは言え1個20円前後で手に入れられるので卵かけごはんなら40円程度で済む。みそ汁はみその単価や入れる具材によって価格差が大きいが、安いものを使えば1椀10円程度で済むので1食50円と言うのは納得の範囲である。
朝ごはんに和食の薦めと言うのは、コメの需要拡大の一環として古くから啓発活動が行われており、現在も続けられている。その一環として令和4年の食育カレンダーと言うものも作成して配布している。ちなみに1月の朝ごはんのメニューは、副菜が「簡単レンジのなます」と「春菊の海苔和え」、主菜が「鯛の塩焼き」、主食が「黒豆ごはん」と「うしお汁」である。カレンダーの裏面にはそれぞれのメニューのレシピが掲載されており、なかなか良く出来たカレンダーなのだが、食材コストは記されていない。コストは記されていなくても本格的な和食を頂こうとするとコスト高になってしまうというのがイメージとして定着している。朝食はそこまで豪華にしなくても良いが、手軽に食べられるのが第一条件だ。
その点で今、コメの最大の競合商品になりつつある「オートミール」は脅威だ。オートミールとは燕(えん)麦を食べやすく加工したもので、玄米などの健康食材と同様に精白を行っておらず、外皮を残したまま加工される全粒穀物食なため、非常に栄養価が豊富な食品として知られている。オートミールの特徴として白米と比べて食物繊維は20倍も含まれており、玄米と比べても3・5倍、鉄分は2倍、カルシウムは5倍も含まれており、ダイエット食として関心が高まっている。燕麦はもともと馬のエサであったが、それが健康的なダイエット食としてもてはやされている。販売価格は通販で人気になっている商品では1キロ720円、業務用でもキロ260円するので必ずしも安いわけではないのだが、注目すべきは牛乳をかけてそのまま食べると水分を吸ってお腹の中で膨らむということで、栄養分が豊富で満腹感も得られるため、ダイエットと栄養価を持ち合わせていることになり、これまでコメの代替食品の中では「最強」といって良いのかもしれない。
もともと家畜のエサであったものが人間の食べ物ととしてもてはやされる一方で、コメはエサ用に回さなくてはいけないという昨今の現象はなんとも皮肉な現象と言うしかないが、
競合品を恐れていてばかりではコメの需要拡大はおぼつかない。この際、競争相手の強みを最大限コメに取り込んでみてはどうだろう。
例えば玄米をパフ加工して牛乳等と一緒に食べればお腹が膨らみ、同時に栄養価も得られるという商品はどうだろう。その際にその商品に使用するコメは米粉用米と同じ扱いにすることにしてエサ米と同じ助成金が得られれば原料米価格はキロ20円で済む。そうすれば玄米をパフ化させる加工費等を加えても十分にオートミールに対抗できる商品になるに違いない。
燕麦を加工してオートミールと言う商品にしたのも原料価格が安いためで、それで利益を得らえると開発会社が目算したからであり、コメも同じようにすれば必ず新しい食品が誕生する。朝食戦争も単にご飯が安いと言うだけでは広がりが期待できない。やはりコメに新たな機能性を持たせることが今、最も求められているのではないか。
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