日本には「お米大学が必要だ」と力説する食品仲介サイトの創業者【熊野孝文・米マーケット情報】2022年4月26日
コメの仲介業者は基本的に自らの相場観は喋らない。売り手と買い手を繋ぐ役割があるので自らの相場観は喋らない方が良い。市場環境については常に情報収集しているので、相場の強弱を判断する材料は良く知っている。そうした仲介業者であっても稀に自らの相場観を滔々と話すことがある。最近、多数の米穀業者が集まった席でそうした場面に出くわした。今、コメの価格市場動向はかつて経験したことの無いような大きな変動要素になり得る現象が起きているので、自らの見方を周りの米穀業者に話すことによって自らに言い聞かせていたようにも思えた。

仲介業者の特性として第一にあげられるのは、過去の価格動向をよく記憶していることである。頭の中に30年分の産地銘柄別の価格罫線でも入っているのではないかと思えるぐらい良く覚えている。過去の相場動向を聞くと淀みなく答える。こうした特異才能は日々の売り買いを重ねているうちに培われるものだろうが、おそらくその時の売り手買い手の顔が頭に浮かび、それと価格がリンクしているためではないかと思われる。第二に決断が極めて速い事である。以前、やり手の仲介業者に半日密着したことがあるが、携帯電話には5分おきぐらいにかかって来て、2、3分の会話でやり取りを決めてしまう。少なくても仲介する相手先は150社ぐらいいるはずだが、売り注文をどこへ話せば買い手が付くのかを瞬時に判断しなければならない。こうしたことが出来るようにするには、売り手買い手のポジションを常に頭の中に入れておかなければならない。相手先のポジッションも時間の経過とともに変化するので、今、相手先がどのようなポジションにあるのかを察知する能力が必要だ。こうした特異才能も長年の経験で培われるのだろう。
最近、コメの仲介業をIT機器を活用して行うところが出てきている。ネット上に売り買いが可能なプラットホームを作って、参加者を募り、売買を成立させるというやり方である。
中には業務用米に特化した売り買い市場を開設した企業もある。その企業のホームページを開いてみると誰でも見れるように現在の売り物が産地銘柄やブレンド米が写真入りでキロ当たり単価とともに出ている。その売りメニューは精米だけで388点もあり、米穀業者が行っている仲介メニューよりはるかに売り件数が多い。しかも業務用米だからと言って価格の安いコメばかり提示されているわけではない。キロ200円以下の特定米穀の上白からキロ500円以上の有機米も売りメニューとして提示されている。
このサイトを立ち上げた創業者は64才でこの事業をはじめ、その時はパソコンの操作も出来なかったが、パソコンやネットは単なる道具であり、それは出来る人を雇えば良く、大切なことはなぜこのビジネスをやるのかと言う「理念とビジョン」であると明言する。はじめたきっかけもユニークで、もともと飲食店を相手にした食品の卸業を営んでいたのだが、あるとき顧客の飲食店から「仕入れているコメの品質・食味が違って来るので困っている」と言う相談を受けた。そこでネット上で顧客が使えそうなコメを探すためネット仲介業者に6万円の会費を払って会員になったものの、そのサイトでは使えるようなものはなかったので自らサイトを立ち上げることにした。その仕組みもユニークで、運営費は売り手から徴収する月2万5000円の出展料だけで買い手は経費が掛からない。決済は全て現金決済で代引きオンリー。当初は売り手からの反発もあったが、全国の飲食店を相手にすることによって地方から大量の注文を受けるケースもあって今では売り手からも感謝されているという。
創業者はネット販売を情報の非対称化から対称化になり得ることから産業革命に次ぐ第二の革命だという認識を持っている。非対称化とは同じものが売り手によって価格が違うがITによりそれが誰でも同じ価格で買えることを意味しており、これにより販売革命が起きたという。コメについては、地域活性化のために秋田や山形などにコメ大学を作るべきだと提言している。オランダがなぜ世界第二位の農産物の輸出国になったのかをワーニンゲン大学を引き合いに日本には産地にお米大学が必要だと力説する。
農水省は現物市場作りのために生産者や流通業者等に意見を聞きに廻っている。意見を聞くのも良いが、そもそもなぜコメの現物市場が必要なのかその「理念とビッジョン」を明らかにすべきである。コメを産業化するというビジョンもなく、市場を助成金獲得や権益のための道具にすることだけは止めてもらいたい。一度、業務用米専用の売り買いサイトを立ち上げた創業者にもコメの市場はどうあるべきか聞きに行った方がよい。
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