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生産者向けにテレビCM 米穀業者の営業に密着【熊野孝文・米マーケット情報】2022年7月5日

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観測史上最も早く6月27日に梅雨が明けてしまった関東地方では、梅雨明けとともに連日の猛暑日で、早場米産地千葉県でも高温障害を回避する施肥管理を呼びかけている。千葉県ではふさこがね、ふさおとめ、コシヒカリも幼穂形成期に入っており、このまま異常な高温が続くと水稲はデリケートな生育ステージに入っているため高温障害を受けかねない。今週は戻り梅雨的な降雨が予想されているが、このところの異常とも思える気象条件では鎌が入るまで何が起きるか分からない。そんな中、今月からコメの生産者向けにテレビCMの放映をはじめる米穀業者がいたので行ってみた。

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千葉市に本社事務所を構えるK社は、コメ業界の新規参入組だが、責任者以下従業員も大変なバイタリティーの持ち主で、営業部隊は外食店に的を絞って100%飛び込み営業を行っている。朝9時から夕方6時までが飛び込みの営業時間だが、相手先の業態は問わず、コメを使っていると思われる外食店に片っ端から売り込みに行く、東京で営業をかける際は1週間泊まり込みで現地を回ったりもする。

取材当日、責任者がトラックで駅まで迎えに来てくれた。トラックに乗り込むと責任者がいきなり運転席の窓を開けた。暑いのでそうしたのかと思っていたら、外から「米、米、米」とメロディーに乘って歌詞が流れて来た。このお米ソングはこの会社が作成したテレビCMで流されている曲で、この曲をトラックに取り付けたスピーカーからも流しているのだ。責任者いわく「竿たけや焼き芋の牽き売りと同じで、この曲が流れると『米屋』が来たとわかるでしょう」。言われてみればその通りなのだが、今までそんなことをやった米屋はいない。今月中旬には配達専用のワゴン車など3車にもスピーカーを取り付けてこの曲を流すことにしている。

この曲を流すのは外食店が密集する都会だけではない。真の狙いは「コメの生産者に聞いてもらえる」ことにある。生産者に自社を認知してもらえることを最大の目的にしているのである。

この会社がコメ業界に参入したのはわずか7年前。全くの素人で、コメをどこから仕入れれば良いのか分からなかった。そこで最初に行ったのが千葉県内の稲作地帯を回り、コメ農家と思しき家に行って「コメを作っていたら売ってもらえませんか」と言う。その家がコメを作っていなかったらコメ作り農家を紹介してもらい「新米の時期になったら電話ください」と連絡先を置いていく。交渉した先は1000軒を超え、回っているうちにコメの食味や品質の良い地区が分かって来たので、その地区を集中的に回るようになった。

責任者は農産物検査官の資格を有しているほか5つ星マイスターにもなっている。品位食味は自らの眼と舌で確認するという仕入スタイル。そうしながら生産者との取引を増やしていったが、強力な営業体制もあってか販売先が拡大、1万俵を保管できる倉庫を確保しても伸びる量に追い付かなくなった。もっと仕入先の農家を増やさなくてはならないという事で今月から開始したのが地元テレビ局でのCM化配信。なんとそのCMも自分たちで作った動画で、社員全員が登場してCMソングで踊りながらコメを積んでいる模様で、58秒のループを7月は25本、8月以降は100本流すことにしている。

そもそも生産者向けにテレビCMを流そうという発案は、社内会議で「どうしたら自分たちのことを知ってもらえるのか?」という問いから始まった。コメの橋渡し役を業とするならまずコメを作ってもらっている生産者に自分たちのことを知ってもらう必要がある。生産者宅に行くと地元テレビで県内ニュースや生活情報を見ている人が多いことが分かった。CMソングはさすがに自分たちでは無理なので、これは著名な作曲家に依頼したが、動画は全て自分たちで作成した。

トラックでCMソングを流しながら農家を訪問するとCMを見ていた生産者がK社の人だと直ぐわかれば話もしやすいという目論見。生産者と結び付きを強くしようとしている思惑は仕入先の確保ばかりではない。何よりもしっかりとした品質と食味のコメを作ってくれる生産者はこの先減ることはあっても増えることはない。さらには販売先の外食店も競合相手との差別化を図るうえで、コメにもこだわりを持たなくてはならず、超極早生の五百川といった品種を求めるところもある。こうしたコメを作ってもらえる生産者を確保することも将来に対する重要な備えになっている。

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