シンとんぼ(10)化学肥料使用量の30%低減(2050)②2022年9月17日
シンとんぼは、農業現場でも十分に実践が可能で、環境影響が正しく低減され、国産農産物の生産が向上して、国民の胃袋は国産で賄える状態になることを願いつつ、「みどりの食料システム戦略」に掲げられたKPIに切り込んでみている。
前回化学肥料の環境中への流出問題に疑問を呈したのだが、疑問を呈しただけでは不十分なので、その後、河川の富栄養化について調べてみた。
現代は便利なもので、調べたいことがあればちょっとググれば玉石混合の情報がこれでもか!というぐらい出てくる。昔は、疑問によっては、まずは何を調べたらよいかすらわからない時代からすれば大変な進化だ。その代わり、無駄な情報やいらない広告、紛らわしい・間違った情報も全て出てくるので、正しい情報をつかむには偏りの無い視点をもって、時おり「なんじゃこりゃ?」とあきれながらも冷静に情報の選抜に当たらなければならず、これはこれで一苦労だ。まあそれが楽になった分、それぐらい苦労しろよ!ということなのだろうか?
ちょっと横道に逸れてしまったが、化学肥料の河川への流出問題をネットを通じて調べたところ、これが疑問にしっくりくるものがなかなか出てこない。データの一部分を捉えて、それがさも全体を示すかのような批判めいた記事とかが散乱する中、これは参考になるかなあと思ったものは、国の研究所から出ていた東京湾、伊勢湾、瀬戸内海の3つの内海で、それぞれに流入する窒素とリンの流入元の割合を示すグラフだ。それによると、流入元を「生活系」と「産業系」、「その他」の3つに分けているが、窒素とリンともに「生活系」が最も多く、窒素もリンもほぼ半分を占めていた。化学肥料が含まれると思われる「産業系」の平均は、窒素が約24%、リンが約27%であった。ということは「産業系」の全てを化学肥料によるものと仮定しても、富栄養化の原因の4分の1程度にしかすぎないということになる。これからいえることは、富栄養化については、まずは生活系の排水を何とかすることの方が解決への近道であり、大切な食料の国内生産量を減らすリスクを負ってまでも化学肥料を減らさなければならないという理屈にならないということである。
加えて化学肥料の国内使用量は、平成2年(1990年)の約184万トンより減少を続けており、平成28年(2016年)には、約半分の90万トンにまで減っている。この間、成分別にいえば、窒素は4割減、リンでいえば6割も既に減っているのだが、何故にこれからさらに減らさなければならないのだろうか? この疑問に対し、「現在の化学肥料の使用量では国内河川の富栄養化にこれだけの影響を与えており、3割減らせばこれだけ改善に結び付いて国民のためになるから、食料生産減らしてでもなんとか頑張って化学肥料を減らしてくれ!」といった具体的な回答が国からなされないと納得できないのはシンとんぼだけだろうか?
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