アグリツーリズモの魅力 ローマ在住ジャーナリスト・茜ヶ久保徹郎【イタリア通信】2022年9月19日
今年のバカンスはナポリの南100キロほどの町Pollica(ポッリカ)の海岸から10キロ山に入ったアグリトゥーリズモでおいしい田舎料理を食べ、古代ギリシャの遺跡の見学や海水浴をして過ごしました。
イタリアではグリーンツーリズムはアグリツーリズモ(農業観光)と呼ばれ、自然に親しみ、土地の産物で作られた料理を味わう楽しい施設です。
宿泊客一家の朝食
こうしたアグリツーリズモは国の基本法で「土地の特徴ある農業資源の保護、収入の向上と多角化、農村の特色と産物などの維持、再生、特産物と料理の維持のための農業観光」と決められ、「農林畜産業の経営者がそれらを利用して食事、宿泊を提供する」とされています。また、業務範囲を「宿泊とキャンプ場。食事と飲み物の提供。食材、アルコール飲料を含む飲み物は自家製か地域の農園の産物が主でなければならない」としています。そして施設は「既存の農家の全部または1部を使用する」とし、「アグリツーリズモによる収入に掛かる税金は農業法人の扱いとする」、そして活動の範囲は「本来の農業より大きくてはならない。宿泊者は最高10人」などとされ、運用は州政府が州法によって行います。
朝食は手作りのお菓子
ローマのすぐ北に位置するウンブリア州は、『イタリアの緑の肺』と呼ばれる、人口85万人ほどの小さいけれど農業や牧畜が盛んで緑豊かな土地です。アグリトゥーリズモが1339軒あり、うち47%は女性が経営しています。
ウンブリア州のモッローニ参事
ウンブリア州農政担当参事ロベルト・モッローニ氏(知事任命の局長)にアグリトゥーリズモについて話を伺いました。
「ウンブリア州は持続可能な発展の政策により環境を保護しながら農業、農業食品の生産を行っています。 私たちの目的は美しさ、歴史、文化、そして卓越した製品によって生み出されている州のイメージを高めることです. その典型的な製品と優れたサービスの提供を保証できる活動として、ウンブリアのアグリツーリズムは世界を目指しています。 州は、農村開発プログラムの一環として、観光を促進するためにこの分野に投資しています。実際特産のワインやオイル、トリュフ、牛乳、ヘーゼルナッツなどのおかげで、特別なグルメツアーのコースを作ることが出来ます。アグリトゥーリズモでは 魅力的で本物の自然の中に滞在し、私たちの土地でしか体験できない素敵な味と伝統の宝庫を発見する喜びを味わうことができます」
エルミニオさんとエミリアさん夫妻
また、私がお世話になったアグリトゥーリズモ「ラ・マンクーソ」の経営者エルミニオさんはアグリトゥーリズモの魅力を次のように話してくれました。
「私は妻のエミリアと北部で先生をしていましたが、定年退職後、代々続く農園を引継ぎ、アグリトゥーリズモを始めました。現在の建物は以前は一部に使用人が住み、鶏小屋や倉庫に使われていたものを改造し、客室を6室作りました。これは法律による最大の数で改造費は国から補助金が出ました。私たちの農園ではオリーブをはじめ野菜や果物を作っており、提供する食事の材料はほとんど自家製です。パスタも手打ち。魚も近くの海でとれたものです。農園は有機栽培なので殺虫剤などを使いません。そのため作物は虫や鳥などに食べられてしまい、収穫は多くありませんが、お客さんに提供するには十分です」
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日