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(309)高齢者とは現実的に何歳以上か【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2022年11月25日

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普段の生活では「高齢者」という言葉をよく使います。ただし、国の制度との関係を見る際には、言葉は十分な注意が必要です。例えば、高齢者と高年齢者の違いなど、いかがでしょうか。

1971(昭和46)年に定められた法律に、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」がある。内容は読んで字の如しの法律だ。主な章立てを見ると、定年の引上げ、高年齢者等の再就職の促進等、地域の実情に応じた就業の機会の確保、定年退職者等に対する就業の機会の確保、シルバー人材センター、などが定められている。

この法律の第二条には、「この法律において『高年齢者』とは、厚生労働省令で定める年齢以上の者をいう」と記されている。

実は同じ1971年、当時の労働省令第24号は、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則」を定めている。こちらの第一条と第二条を見ると興味深いことがわかる。

(高年齢者の年齢)
第一条 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号。以下「法」という。)第二条第一項の厚生労働省令で定める年齢は、五十五歳とする。
(昭六一労令二二・昭六一労令三〇・平一二労令四一・一部改正)
(中高年齢者の年齢)
第二条 法第二条第二項第一号の厚生労働省令で定める年齢は、四十五歳とする。
(平一二労令三五・追加、平一二労令四一・一部改正)

とりあえず、日本の法律では「高齢者」ではなく「高年齢者」という表現を用いていること、その中で高年齢者は55歳以上、中高年齢者は45歳以上であるようだ。また、雇用保険では2017(平成29)年以降、65歳以上の労働者を「高年齢被保険者」としている。また、道路交通法では2020年以降、一定の違反歴がある75歳以上のドライバーに、運転技能検査(実車試験)が義務付けられている。つまり、法律により扱いが微妙に異なる点が要注意だ。

さらに興味深い点は世論調査の結果である。内閣府あるいは総理府が実施した「高齢者の日常生活に関する意識調査」や「高齢者の生活イメージに関する意識調査」を見ると、「高齢者とは何歳以上か」との問いに対し、1999年には60歳以上が概ね数%、65歳以上が2割弱、70歳以上が5割弱であった。

これが2014年になると、60歳以上は1%程度、65歳以上が6%強、70歳以上が3割弱となっている。簡単に言えば、20年前は60歳以上を高齢者と見てくれる人はそれでも100人のうち数人はいたが、今では100人のうち1人いるかどうか...という時代になったということだ。

もう少し別の見方をしてみたい。1960年当時、日本の人口は9,342万人であり、総人口に占める80歳以上の方は67万人(0.7%)であった。それが、2020年には総人口1億2,410万人のうち、80歳以上の方は1,173万人(9.4%)である。

周りを見た場合、80歳以上の方に出会う確率が100人に1人会うか会わないかから、10人に1人は80歳以上...という状況に社会が変化したということだ。

この結果、毎日の通勤・通学、買い物、その他全ての日常生活が様々な場面で微修正を求められている。60代前半でもかつての40~50代並みの活動や外見を維持している方々がいる一方で、階段の段差やバスの乗り降り、駅のラッシュ時のホーム、スーパーマーケットの棚の高さからコンビニのレジまで、高齢顧客の対応を考えなくては仕事が回らない時代となったのである。

なお、世界的には「高齢者」を概ね65歳以上としている国が多いようだ。世界保健機構(WHO)なども65歳以上としているようだが、60代はまだまだ普通に活動している方も多いのではないだろうか。

なお、先の世論調査で高齢者を80歳以上とした人の割合は1999年には9.7%であったが、2014年には18.4%へと倍増していることを付け加えておきたい。

* *

言葉遊びをしている気はありませんが、半世紀の間に同じような言葉が意味するイメージも随分と変化したものです。

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