中国非難が続く【森島 賢・正義派の農政論】2022年12月19日
波乱に満ちた本年も、あと旬日を残すだけになった。振り返ると、本年はウクライナ紛争とコロナ禍に明け暮れた1年だった。
この2つとも、将来を見通せるような状況にない。そして、その底流には、中国と米国との間の根深い抗争がある。
この抗争は、社会主義経済を採るか、資本主義経済を採るか、という抗争である。それに規定され、その上に築かれる相異なる社会体制と政治体制のうち、そのどちらを採るか。そして、そのどちらが人間性を豊かに開花させる社会を招来するか。
中国と米国は、世界第2位と第1位の大国である。それだけに、この中米間の抗争は、全世界に甚大な影響を及ぼしている。そして、世界最大の潮流になっている。世界の主流といってもいい。
ウクライナ紛争は、この支流である。そして、この主流とは無関係と思われるコロナ禍さえも、この流れに引き込んで、いがみ合っている。
この潮流は、数十年の間つづくだろう。この潮流を、他の国々は正面に見据えながら、あるいは横目で見ながら、国際社会のなかで、身を処することになるだろう。
日本は、相変わらず米国に、ひたすら追随するのか。
はじめに、ウクライナ問題である。
上の図は、中国の基本的な考えである。問題が発生した直後に、王毅外相が表明したものである。
NATOの東方拡大とは、NATO軍の陣営を次々と東方へ広げて、ロシアを圧迫していることである。これに対してロシアは、ロシアとNATOとの間に緩衝地帯を作り、そこの安全をロシアとNATOとで保障することをNATOに要求してきた。この緩衝地帯にはウクライナもある。だがしかし、NATOは上の図で中国がいっているように、5回も無視し、拡大し続けてきた。
この図は、中国は、このロシアの要求を支持することを、明確に表明したものである。そうして中国は、他の多くの国々とともに、国連のロシア非難決議に賛成しないし、ロシア制裁にも参加していない。
ここに中国に対するNATOの不満があるし、その盟主である米国の大不満がある。
つぎに、コロナである。
最近になって、中国でコロナが拡大しはじめた。これをみて、米国や米国寄りの国々は、中国のゼロコロナ対策は失敗した、と囃し立てている。
上の図は、その全体像をみるために、コロナ発生以来の累積感染者数をみたものである。人口1万人当たりでみると、中国はゼロコロナ対策の成果として、感染者数を米国の僅か227分の1に抑えている。中国は、米国側の冷笑を片腹痛いと思うだけだろう。
だがしかし、謙虚な中国は、ゼロコロナ対策の見直しを、さっそく始めた。
これで、一件落着というわけではない。米国は、中国のゼロコロナ対策の失敗という虚構に基づいて、これを中米抗争に利用しようと考えている。つまり、中国の国民を分断し、その一部を反政府運動に駆り立てたいと考え、執拗に画策している。
こうした中米間の反目は、今後の世界の大きな潮流になって、長いあいだ続くだろう。この潮流の中で、日本はどう振る舞えばいいのか。
(2022.12.19)
(前回 中国の穀物爆買いは続く)
(前々回 農基法検証部会の課題)
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