シンとんぼ(24)高層木造の技術の確立・木材による炭素貯蔵の最大化(2040)2022年12月24日
シンとんぼは、農業現場でも十分に実践が可能で、環境影響が正しく低減され、国産農産物の生産が向上して、国民の胃袋を国産で賄える状態になることを切に願いつつ、「みどりの食料システム戦略」のKPIに切り込んでいる。前回から林野分野のKPIを検証しており、最初に1つ目に「エリートツリーの活用割合」を検証したので、今回は「高層木造の技術の確立・木材による炭素貯蔵の最大化(2040)」を調べてみた。
ご存じのとおり、木材となる樹木は二酸化炭素を吸収して酸素を供給し体内に炭素を貯蔵するありがたい存在だ。二酸化炭素をたくさん吸収した木材を使用して建物を作れば、その分炭素を封じ込めることになるということだ。この他、建物の重量が鉄骨造やRC造よりも軽量になるため、基礎工事もこれらの建物と比較すると簡易なもので済み、建設機械の稼働時間減少、鉄骨造やRC造の建物と比較して断熱性が高いため、冷暖房などの消費電力を抑えることができ、結果として様々なコストの削減と二酸化炭素排出量を減らすこともできるというメリットがある。
また、耐久性が圧倒的に長く、丈夫な点も見逃せない。奈良の法隆寺は、日本の木造建築の最高峰といわれているが、補修等が入ってはいるものの、基本的な構造物は創建から1400年以上にもなる。一般的な鉄筋コンクリート造の耐久年数が100年程度と言われているのに比べれば10倍以上の開きがある。それだけ長い間、光熱費などコストを抑えることができれば、炭素貯留などへの貢献はかなり大きいだろう。
ただ問題は耐火性であるが、これは現代の技術力で何とかしていくだろうし、東京オリパラで話題となった国立競技場も高層木造建築であり、その際に様々な最新技術が導入されたとのことで、今後の高層木造建設推進の見本になった。世界各国でも高層ビルの建設を木材で行う技術の確立が進んでいるし、イェール大学の環境科学者ガリーナ・チャーキナと建築家のチームが、都市部の木造建築による気候変動緩和を数値化した論文を『Nature Sustainability』誌に発表するなど、木造建築が環境へ好影響なことは明らかになってきている。
このような事実を目の当たりにすると、KPIのいう2040年までに木材による炭素貯留の最大化もあながち夢物語では無いような気がする。ただし、これは農水省の範疇ではないかもしれないが、古い建築の廃材などを焼却したりするとマイナスになるので、木材の再利用を義務化するなど、廃材の扱いのルール化に道筋をつけるなどがセットにならないと本物にはならないそうだ。ぜひ、省庁の枠を超えて、国が一丸となって取り組んで欲しいものだ。
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