私たちは行き詰っていないか 藤井晶啓 日本協同組合連携機構 常務理事【リレー談話室】2023年2月14日
英BBC特派員が日本駐在を終えるにあたり発表した、特に大ニュースでもない読み物記事が世界中で前例のない反響と数万の拡散を起こしているらしい。
日本は未来だった
毎日新聞は2023年2月4日朝刊で「日本は未来だった、しかし、今では過去にとらわれている」と題する英BBC特派員記事が公開2日間で閲覧数300万という怒涛の反響、と伝えた。記者の名はルーパート・ウィングフィールド・ヘイズ氏。約10年の日本駐在を終えて、駐在国への考え方や取材体験をまとめた、いわば「さよなら記事」である。
ルパートさんが書いた記事の大まかな内容は以下の通りだ。「①かつて未来がここ(日本)にあった。日本は裕福で清潔できちんとした国だ。②80年代末より経済が低迷し、日本は世界最大の債務国へ。③高齢化がすすみ出生率が低下。人口減少を続けていては債務返済ができないけれど、移民受け入れを拒否している。韓国や台湾の人達の収入はすでに日本を追い越している。④それでも日本は変わりそうにない。新たに繁栄するには、日本は変化を受け入れなくてはならない。私の頭はそう言っている。しかし、日本をこれほど特別な場所にしているものをこの国が失うのかと思うと、心は痛む」
毎日新聞の記事によると、BBC公式アカウントには約1万のリツイートと「いいね」が約2万回に及んだ。ルパートさんは「日本に強い興味を抱いている人が多い」と分析し、記事の受け止め方は「おおむね好意的だった」そうだ。また、毎日新聞は国内における肯定的な評価とともに批判意見も紹介している。「上から目線」「日本はだめという典型的な西洋的記事」「日本は文化をまもろうとしているのだ」などなど。
日本人がこだわる同質性
仏の人口統計学者エマニュエル・トッドは、著書『我々はどこから来て、今、どこにいるか』(堀茂樹訳)において、①ドイツと日本は同質性を理想とする故に並外れた効率性を発揮し、短期間で経済成長を遂げた。②そのひずみの対価が自国の人口を再生産できないまでの出生率の低下を招いた。③ドイツは移民に広く門戸を開いたが、日本は国力低下を受け入れた、と指摘している。
また、森嶋通夫ロンドン大学教授(故人)の『なぜ日本は行き詰ったか』(村田安雄、森嶋瑤子訳)では、①80年代に日本が成功した理由は、戦後の日本人が経済社会システムをできるだけ戦前・戦中のままに保つよう努力したから。②日本経済が政府誘導型から市場誘導型に移行した時期(1990年頃)がちょうど戦前教育を受けた人が退場する時期と重なった。③戦後の日本の子供教育は戦前の文化を受け継ぐ大人社会と適合しておらず、その矛盾のもとで大人となった子供たちが今の世代。④だから子供教育を改革し、彼らが成長し大勢を占めるまでの40~50年を日本は耐えねばならない、と述べている。
子や孫、ひ孫の世代にむけて
自国の衰退を受容してでも固守したい「同質性」は、かくいう自分の心の中にもある。例えば、同じ訪日外国旅行者でありながら、中国や韓国、台湾等の方を意識外のところで見下していないだろうか。その発想は100年前の戦前における中国の清朝や朝鮮の李朝時代の日本人の見方と変わっていないのではないか。技能実習生の問題も同じだ。
明らかに事態は悪化しているのに、あえて私たちは幻想の先にある本質を見ようとしていないのかもしれない。それは、自分達にとって耳に痛い話だからだろう。
かつての衰退期のローマ人のように快楽主義で規律なく、その場限りの「いいじゃないか」で先送りしかできないとしたら、それでは、私たちの子供や孫やひ孫があまりに可哀そうだ。
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