【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】早急に実施すべき政策2023年3月16日
今こそ食料安全保障のための抜本的な政策変更として、①緊急の赤字補填②政府による人道支援物資としての在庫買い上げ③義務でない国家輸入の停止、を行わないと、日本農業と国民の命を守ることが困難になる正念場である。
コメ1俵1.2万円と9千円との差額を主食米700万トンに補填するのに3,500億円(10俵/10a とすると3万円/10a)、全酪農家に生乳kg当たり10円補填する費用は750億円(1万キロ/1頭 とすると10万円/1頭)かかる。財務省は、農水予算にそんな増額ができるわけないだろうと一蹴してくる。そんな財政政策こそが間違っている。
また、コメや乳製品の在庫が多いことが、コスト高でも価格転嫁できない原因とされているが、欧米諸国は、需給の最終調整弁を政府がもって、在庫になっているコメ・乳製品を政府が買い上げ、国内外の援助に回し、消費者を助け、生産者も助ける政策を維持している。唯一、これを止めてしまった日本が異常なのであり、即刻、復活すべきである。
さらには、コメや乳製品の在庫は、「低関税枠」であって他国はどこも全量満たしていないのに、日本だけが「最低輸入義務」と言い張って全量入れてきたコメや乳製品の輸入を停止すれば、大きく改善する。米国の顔色窺(うかが)う保身のために国内農業と国民の命を蔑(ないがし)ろにする政治行政は限界である。
フランスやカナダのようなコスト上昇を自動的に各流通段階の価格に上乗せするよう誘導する制度の検討も中長期的には必要である。しかし、これを検討しても、今の農業の窮状を解決するには間に合わない。
米国からのF35だけで6.6兆円(147機)の購入費に比べても、防衛費5年で43兆円にしてトマホークを大量に買うのに比べても、食料にもっと抜本的に金かけるのこそ安全保障として正当化できる。
さらに言えば、再生エネ電気買取制度による22年度の買取総額は4.2兆円で、面積当たり太陽光導入容量は世界1位になっている。食料とエネルギーは安全保障の2本柱なのに農水予算は総額でも2.3兆円。再エネ予算に比しても格段に少なすぎる。コメ・乳製品などの食料買取制度の復活の余地も十分にある。
さらに、昆虫食大推進は機運である。まともな食料生産を潰して、トマホークとコオロギで生き延びることはできぬ。今こそ、「基本法」の改定と同時に、財務省により枠をはめられ、減らされ続けてきた農水予算の異常さを認識し、「食料安全保障推進法」(仮称)を議員立法で早急に制定し、財務省の農水予算枠の縛りを打破して、数兆円規模の予算措置を農林水産業に発動すべきときではないだろうか。
重要な記事
最新の記事
-
【現地レポート】JAの水田農業戦略 「東川米」の国際ブランド化めざす JAひがしかわ(2)2024年3月19日
-
おにぎりはコメ消費拡大の起爆剤になるのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2024年3月19日
-
石川佳純が全国を巡る卓球教室「47都道府県サンクスツアー」岡山で開催 JA全農2024年3月19日
-
「JA全農杯全国小学生選抜サッカー大会」北信越代表チームが決定 優勝は石川の「ツエーゲン金沢U-12」2024年3月19日
-
都城市が4年連続1位 市町村別農業産出額 農水省2024年3月19日
-
第30回松阪子牛共進会と松阪家畜市場を開催 JA全農三重県本部2024年3月19日
-
香川県産ヒノキを使用した木製カルトンを導入 JA香川県2024年3月19日
-
伊藤園と協同開発「ニッポンエール 山形県産さくらんぼ 佐藤錦」新発売 JA全農2024年3月19日
-
「高知県産直七すだち&ゆずサワー」19日リニューアル発売 JA全農2024年3月19日
-
バイオスティミュラント資材開発のアクプランタへ追加出資 農林中金イノベーション2024年3月19日
-
クラス最速のチェンスピード 充電式ハンディチェンソー新発売 京セラ2024年3月19日
-
あきる野市 小峰公園で「おいしい野菜づくり」参加者募集中2024年3月19日
-
「健康経営優良法人」4年連続で認定取得 J-オイルミルズ2024年3月19日
-
冷凍生活アドバイザー西川剛史さん コープフローズンフードアンバサダー就任 日本生協連2024年3月19日
-
産地直送通販サイト「JAタウン」で母の日イベント 19日から開催2024年3月19日
-
海苔の風味アップ「無限のり」リニューアル 食べ切りサイズも新登場 亀田製菓2024年3月19日
-
コープみらい・コープデリ連合会 健康経営優良法人2024(大規模法人部門)認定2024年3月19日
-
キンギョソウ「キャンディートップス」に新色「ピンクバイカラー」登場 サカタのタネ2024年3月19日
-
JPA×農協観光「農福連携による共生社会創造事業」採択事業を決定2024年3月19日
-
「野菜ソムリエサミット」3月度「青果部門」金賞9品など発表 日本野菜ソムリエ協会2024年3月19日