農家にも満額回答を【原田 康・目明き千人】2023年4月1日
4月からのベース・アップに多くの大手企業は「労使交渉」で満額の回答をしている。以前の様に「春闘・春期賃上げ闘争」で労働者側がストライキ権を、経営者側はロックアウトを背景にした労使の激しい団体交渉の時代とは様変わりをしている。この背景には2022年の7月の政府と経営者団体の毎年の夏に開かれる「軽井沢会合」で岸田首相が経団連の幹部に3%以上の賃上げを実現してもらいたいと発言をしている。総理大臣が経営者に賃上げを依頼するという異例の春闘となった。
経営者が動いたもう一つの理由は優秀な人材の争奪戦である。3%の賃上げでも世界との賃金格差はそのままで、アメリカの人材大手コンサル「コーン・フェリー」の調査によれば23年の予想賃上げ率は、米国が4%ドイツが4・5%とある。(日経新聞3月20日)。
農家にも満額回答が必要だ。毎日の食卓に欠かせない国産の新鮮な野菜、果実、畜産物を生産し水田や畑に四季折々の作物を栽培することで環境も守っている。特に水田は山に降った雨を森林と共に自然のダムの機能を発揮して住宅地を守っている。この様に農業は多様な機能を果たしている産業である。農産物の生産、販売をサポートしている農業協同組合やメーカーや卸・小売業者はそれぞれ目一杯の努力で農家をサポートしているが企業体では限界がある。
農家が頑張っているのを支える仕組みが必要である。これは政府の役割である。政府といっても内閣府の皆さんには具体策は無理でありやはり農林水産省の皆さんの出番となる。農家もAIやIoT等のデジタル技術を取り入れ、生産性を上げコストを下げるためにスマート農業等に取り組んでいるが施設や機械の更新やドローンの利用などにはコストが掛かり、更に狭い農地の制約と異常気象等は農家や関係機関などの努力だけでは限界がある。
また、グローバル化は世界の農業に適した広い土地や気候に恵まれた国からの輸入の自由化により品質と価格の競争がある。
農林水産省の皆さんは農家が生産を続けられるように制度の運用や予算の確保をして個々の作物の価格安定制度だけではなく、ヨーロッパ型の農家の所得を援助する政策も取り入れて、「農家にも満額の回答」をしてください。
(原田康)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日