サラミ作りの町で日本テーマの芸術週間 ローマ在住ジャーナリスト・茜ヶ久保徹郎【イタリア通信】2023年5月13日
北イタリアのロンバルディア州の南西、ポー川の南の地域はOltrepo’(オルテルポー・ポー川の向こう)と呼ばれ、パダナ平野からアペニン山脈にかかるワイン造りに適した地域です。丘陵地帯の気候は海からの風や湿気がサラミ作りに良くあい、ローマ時代から地中海から内陸に塩を運ぶ道路が通っていたのでサラミに使う塩に不自由しませんでした。
昔の熟成蔵の中で茶の湯
そんなサラミ作りの中心の町Varzi(ヴァルツィ)には中世から、建物の地下にサラミ熟成蔵があり、3年前から昔のサラミ熟成蔵を使って芸術週間を開いています。
今年は日本がテーマ、茶の湯や楽焼の実演、ストリートミュージック、そして日本の文化や日本人とイタリア人をテーマにした講演などが行われ、私が講師を務めました。
ヴァルツィのサラミ
サラミなどのオードブル
サラミソーセージは生ハムと並ぶ豚肉の保存食。イタリア中で作られていますが、EUに認められたDOP(原産地名称保護)は4つだけで、ヴァルツィのサラミはその一つです。
冷蔵庫が無かった時代、日本人は魚を干したり塩漬けにしたり、色々な保存方法を考え出して作ってきました。イタリアでは農家が豚を飼い、気温が下がる11月ごろに屠殺して肉を塩漬けにしたり、腸に詰めて干したりして、1年分の動物性たんぱく質を確保しました。サラミや生ハムなど豚肉の加工品は日本の魚の干物や塩鮭などに当たると言えるでしょう。
「サラミ村」のブスコーネレストラン
ヴィルツィの町からちょっと離れたところに「サラミ村」と呼ばれている場所があり、何代も前からサラミを作り、提供するレストランBuscone(ブスコーネ)があります。
ピーノさんと熟成中のサラミ
その店のピーノさんが、昔から続くサラミの作り方を話してくれました。
「他の地区では生ハムなどを作るのに腿や首のまわりなどの美味しい肉を使うので、サラミには入れませんが、ヴァルツィではすべてを入れます。肉は四角に切り、脂身やニンニク、赤ワインと混ぜ、ひき肉にし、豚の腸に詰めます。昔は豚だけでしたが、今は小さいサラミ用に羊の腸も使います」
「サラミは自然に熟成させるので10月から春にかけての寒い時期に作ります。平均6カ月ほどかかりますが、空調設備などで作っている企業は1カ月で作ってしまいます。もちろん味は全く違います」
「サラミは太さによって熟成期間が変わりますが、腸の厚さによっても違い、肛門に近い、太くて厚い腸を使ったものが最高です。熟成中に特別なカビに覆われなければなりませんが、その為には特別な温度と湿度が必要なので昔からの熟成蔵を使います」
ヴァルツィの
ジョヴァンニ・パッリ町長
また、ヴァルツィのジョヴァンニ・パッリ町長が、芸術週間について次のように話してくれました。
「芸術週間は、中世から続くヴァルツィの町を芸術で眠りから覚ますために考えたものです。今年で3年目となり、初めの2年間はイタリアの芸術をテーマにしましたが、今年は日本です。日本はヴァルツィと同じように古い歴史を持ち、テクノロジーが発展している国でもあり、ヴァルツィをスマートシティーにしたいと考えている町の方針と良く合います。日本の皆さん。ヴァルツィに美味しいサラミとワインを味わいに来てください。」
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
【石破首相退陣に思う】戦後80年の歴史認識 最後に示せ 社民党党首 福島みずほ参議院議員2025年9月16日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(6)2025年9月16日
-
国のプロパガンダで新米のスポット取引価格が反落?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月16日
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
ファミリーマートと共同開発「メイトー×ニッポンエール 大分産和梨」新発売 JA全農2025年9月16日
-
「JA共済アプリ」が国際的デザイン賞「Red Dot Design Award2025」受賞 国内の共済団体・保険会社として初 JA共済連2025年9月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」北海道訓子府町で じゃがいもの新品種「ゆめいころ」を収穫 JAタウン2025年9月16日
-
山形県産「シャインマスカット」品評会出品商品を数量限定で予約販売 JAタウン2025年9月16日
-
公式キャラ「トゥンクトゥンク」が大阪万博「ミャクミャク」と初コラボ商品 国際園芸博覧会協会2025年9月16日
-
世界初 土壌団粒単位の微生物シングルセルゲノム解析に成功 農研機構2025年9月16日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(適用地域追加)NOSAI全国連2025年9月16日
-
農薬出荷数量は1.3%増、農薬出荷金額は3.8%増 2025年農薬年度7月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年9月16日
-
林業の人手不足と腰痛課題解消へ 香川西部森林組合がアシストスーツを導入 イノフィス2025年9月16日
-
農業支援でネイチャーポジティブ サステナブルの成長領域を学ぶウェビナー開催2025年9月16日
-
生活協同組合ユーコープの宅配で無印良品の商品を供給開始 良品計画2025年9月16日
-
九州・沖縄の酪農の魅力を体感「らくのうマルシェ2025」博多で開催2025年9月16日
-
「アフガニスタン地震緊急支援募金」全店舗と宅配サービスで実施 コープデリ2025年9月16日
-
小学生がトラクタ遠隔操縦を体験 北大と共同でスマート農業体験イベント開催へ クボタ2025年9月16日
-
不在時のオートロックも玄関前まで配達「スマート置き配」開始 パルシステム千葉2025年9月16日