シンとんぼ(44) 食の安全とは② 毒性とは何か?2023年5月20日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは、同戦略のKPIやスマート農業について、その有効性や今後の農業に与える影響などをひととおり検証してみた。その中で、そもそも「食の安全」とは何かということへの疑問が膨らんできて、「安全」と「安全ではない」との境界線は、実際のところあいまいで感情に左右されているように思うようになった。特に「安全と思う」ことや「安全だと信用する」ことは感情に左右されるというより感情そのものだ。
そういう感情的なものを数値化して普遍的なものにしようとするのはそもそも無理なのかもしれないが、農薬の残留基準値がどのような経過で決められていて、どのようにして安全を担保しようとしているのかを十分に理解できれば、農薬の安全性を信用できるようになるのではないだろうか? なぜなら、そういったことの発信がまだまだ不十分であり、農薬の安全確保の仕組みをよく知らずに議論されていることが多いような気がする。そういうことは、登録認可を下ろしている国が積極的に行って欲しいものだが、そうはなっていない。そんなことは業界がやればいいと言われるが、業界が発信すると受け取り側に「売らんがため」という"うがった感情"が先行するので、そもそも受け入れてもらえないことが多く、業界からの発信では農薬の安全性を正しく伝えることは難しいだろう。
国も、食料自給率向上、国際情勢に左右されない食の安定供給を目指すのであれば、農薬のベネフィットとリスクを正しく理解してもらうようにして、慣行農業でも十分に安全な農産物が生産できることを発信し、国民理解を得た上で、農業生産の拡大に向かう方がより近道だと思うのだがいかがだろうか?
とはいえ、国の官僚を含め、消費者の多くは農薬が毒と思っている人が多いようだ。
なので、シンとんぼでは毒性とは何かということを今一度見つめなおし、その上で、農薬の安全性について考えてみたいと思う。
今の世の中、自然食品や無農薬野菜、天然や自然を謳い文句にした農産物が多く見受けられている。ヨーロッパほど有機農産物が売れている状況ではないが、徐々にではあるが日本国内でも増えているようだ。もちろん、天然ものはすばらしいし、無農薬野菜は生産するのに大変な苦労が伴うため生産者の思いがいっぱい詰まっているものだ。そのことは理解できるし尊重すべきものであることは間違いないが、有機農産物を志向される方々の、「天然=安全」と単純に理解されるのは事実と異なると思う。
なぜなら、世の中の全ての物質には「毒性」があり、「毒性は有る無しではなく、強いか弱いかで判断されるもの」だからである。この辺の詳細を次回考えてみようと思う。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日