(335)「カーボン・ニュートラル」・弁護士・バイオエタノール【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年6月9日
6月2日、東京でアメリカ穀物協会(USGC:U.S. Grains Council)主催によるバイオ燃料(バイオエタノール)のシンポジウムが開催されました(下記注)。詳細はUSGCのホームページで掲載されています。ここでは少し思い出したことを記しておきます。
環境科学の専門用語の1つである「カーボン・ニュートラル」が、日々のメディアを賑わすようになり10年以上がたつ。「カーボン・ニュートラル」とは、言うまでもなく、二酸化炭素(CO2)やその他の温室効果ガス(メタン、オゾンなど)の排出量と吸収量を様々な手法(吸収・削減・排出量取引)を用いて均衡させ、実質的な排出量をゼロにすることだ。日本やEUは、「カーボン・ニュートラル」の目標達成を2050年としている
さて、今から30年程前になる。米国のビジネス・スクール留学を終えて帰国した筆者は、古巣で日々の仕事をしつつ考えていたことがあった。一度、法律をしっかりと学ぶ必要があるということだ。それは米国滞在中に痛切に感じていた。
当時も今も、いわゆる「弁護士」に対する認識は米国と日本では大きく異なる。誤解を恐れずに言えば、日本では今でも最難関とされる司法試験を突破した少数の人間のみがその世界にいるという認識が大多数かもしれない。
米国の場合、弁護士になりたい物は大学のさまざまな学部を卒業した後にロー・スクール(法科大学院)へ進学し、そこで通常は3年学んだ上で司法試験を受ける。合格率は州ごとに異なるとは言え、大半が合格し法律家になる。ただし、その後の生き残り競争が厳しいことは有名である。ある転職サイト(弁護士専用)を見ると、日本の弁護士数は4万人強、米国は127万人である。
この違いに対し、いろいろと意見はあろう。例えば、米国の弁護士には日本の税理士や司法書士まで含めているという考え方がある。そこで、日本の税理士数(税理士登録者数)を見ると約8万人が登録されている。司法書士数(日本司法書士会連合会の公表数字)は全国で2.3万人だ。以上を合計すると、日本では弁護士・税理士・司法書士の合計で約15万人になる。ドイツやイギリスの弁護士総数と似たような数であろうか。
日本の人口が1.2億人、米国が3.3億人とすれば、人口比率は3倍弱、となれば日本に45万人程度が居ても良いのか、あるいは米国の弁護士数が多すぎるのか...、ということになる。これも議論が分かれる。なお、当時も今も米国企業の経営陣には弁護士資格を持つ者が多いことは実際に仕事をしてみるとわかる。それが筆者の実感である。
さて、「カーボン・ニュートラル」に話を戻すと、先に手法として「吸収・削減・排出量取引」と記した。この中で排出量取引についてはいろいろと思い出がある。今や多くの人が知る手法だが、当時の日本では非常に知名度が低かった。もともとは火力発電所から排出する硫黄酸化物や窒素酸化物への対応として、経済的手法を用いた環境改善などと言われてスタートしたものだ。それが日本でも有名になったのは、1992年の国連環境開発会議(リオ・デ・ジャネイロ)で世の中が「環境」という言葉に敏感になったことなども背景にある。
さらに、1997年、京都で開催された気候変動に関する国際連合枠組条約(COP3)における京都議定書(排出量取引は第17条)などがある。当初の学術文献の日本語は、排出「権」取引が中心であった。英語はemissions tradingである。これを環境「汚染の権利」と解釈するかどうかで議論があり、京都議定書の頃には「権」から「量」に修正されてきたと記憶している。よくある話だ。
この間、EUは米国が開発した窒素酸化物や硫黄酸化物削減の枠組みを二酸化炭素の削減に応用し、世界的なフレームワークとして拡大させてきた訳だ。
筆者は、1990年代前半、この分野に少々首を突っ込んだが、諸般の理由で軌道を修正して現在に至る。そのまま深入りしていたらどうなっていたか、そういう事を考えてみるのも楽しい。
* *
振り返って見て初めてわかる「転機」というのがありますね。冒頭のバイオ燃料に関する検討会で久しぶりに思い出した次第です。
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