シンとんぼ(52)食の安全とは(10)天然毒について2023年7月15日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということを検証しようと試みている。現在、「毒性とは何か」をテーマにすえており、毒性を科学的にとらえて身近なものと比較しながら毒性を考えている。前回、身近なもので経口急性毒性を比較し、農薬ほど毒性や人畜への影響が分かっている物質はないといえるのではなかろうかと結び、最後にファイトアレキシンの例を出したので、もう少し天然毒のことを補足しておこうと思う。
もうご存知のことと思うが、自然界の全ての物質には毒性があって、毒性を語るときには、有り無しではなく、毒性の強弱で考えるほうが妥当であり、自然界に普通に存在するものが天然毒だ。天然毒というとフグ毒のテトラドトキシンがすぐに思い浮かぶかもしれないが、農産物ではテトラドトキシンほど急性毒性の強い毒性を持つ食べ物は存在しない。ただ、その天然毒の生成過程が2つあって、すなわち作物自身がもともと持っているもの、あるいは作物自身が外敵から身を守るためにつくり出すものと、作物を襲った外敵が作物の体内に勝手につくり出す毒性物質との2種がある。
前者では、ジャガイモの芽や皮に含まれるソラニン、キク科やムラサキ科などの一部の植物に含まれるピロリジジンアルカロイド類、あるいは先に紹介した植物が外敵から身を守るために出すファイトアレキシンなどが知られている。後者では、かび毒がよく知られ、植物病原菌であるかびや貯蔵穀物などを汚染するかびが作物に寄生して繁殖の過程でつくり出す毒性物質のことをいい、 "マイコトキシン(mycotoxin)" とも呼ばれる。身近な例では、小麦の赤かび病が出すDON(デオキシニバレノール)、NIV(ニバレノール)、ナッツ類に発生したかびが出すアフラトキシン類などがある。いずれも、消費者への被害を未然に防ぐために出荷規制や輸入制限のための基準値が定められており、厳しく規制されている。
このような天然毒のうち、ソラニンなど農作物自身が持っているものは毒の存在部位を除去するなどの方法がとられるが、ファイトアレキシンやDONなど外敵が作物の体を攻撃することにより作物体内に天然毒が生成するものについては、外敵を防ぐことが重要な防衛手段であり、それを実現するのが農薬などによる病害虫防除である。正しく使えば人畜には毒性を示さないことが判明している農薬を使うことによって、外敵からの攻撃を未然に防ぎ、結果として作物体内に天然毒の発生を抑えることができるのだ。これは、農薬が人間社会の役に立っている好例のように思うがいかがだろうか?
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(150)-改正食料・農業・農村基本法(36)-2025年7月12日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(67)【防除学習帖】第306回2025年7月12日
-
農薬の正しい使い方(40)【今さら聞けない営農情報】第306回2025年7月12日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 茨城県2025年7月11日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月11日
-
【注意報】果樹に大型カメムシ類 果実被害多発のおそれ 北海道2025年7月11日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 福島県2025年7月11日
-
【注意報】おうとう褐色せん孔病 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】出会いの大切さ確信 共済事業部門・全国共済農協連静岡県本部会長 鈴木政成氏2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】農協運動 LAが原点 共済事業部門・千葉県・山武郡市農協常務 鈴木憲氏2025年7月11日
-
政府備蓄米 全農の出荷済数量 80%2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA加賀(石川) 道田肇氏(6/21就任) ふるさとの食と農を守る2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA新みやぎ(宮城) 小野寺克己氏(6/27就任) 米価急落防ぐのは国の責任2025年7月11日
-
(443)矛盾撞着:ローカル食材のグローバル・ブランディング【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月11日
-
【2025国際協同組合年】協同組合の父 賀川豊彦とSDGs 連続シンポ第4回第二部2025年7月11日
-
米で5年間の事前契約を導入したJA常総ひかり 令和7年産米の10%強、集荷も前年比10%増に JA全農が視察会2025年7月11日
-
旬の味求め メロン直売所大盛況 JA鶴岡2025年7月11日
-
腐植酸苦土肥料「アヅミン」、JAタウンで家庭菜園向け小袋サイズを販売開始 デンカ2025年7月11日
-
農業・漁業の人手不足解消へ 夏休み「一次産業 おてつたび特集」開始2025年7月11日
-
政府備蓄米 全国のホームセンター「ムサシ」「ビバホーム」で12日から販売開始2025年7月11日