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【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】米国による「人災」としての「食料危機」2023年7月21日

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食料危機の多くの要因は米国によって作り出されてきた。危機に弱い我が国の構造も米国の政策によって作り出された側面を見落としてはならない。

食料危機のメカニズム

食料危機の多くの要因は米国が作り出してきたように思われる。

まず、「緑の革命」を見直してみよう。緑の革命は、化学肥料・農薬の大量投入とそれに対応した品種(タネ)のセットで世界の穀物生産を増大させ、人類を飢餓と食料危機から救うかに思われた。

しかし、表土の流出などの土壌劣化、それに伴う水使用の増加による水の枯渇などを招いた。化学肥料・農薬の多投で微生物豊かでCO2貯留にも役立つ表土が飛ばされ、土壌劣化が進んだ。それに伴い、水使用が余計に増えていった。現在、世界の水の7割は農業生産に使用されており、2050年には、世界の7割の地域で地下水が枯渇するとオランダのバヘニゲン大学インゲ・デフラーフ助教授は推定している。

一方で、緑の革命後、単一品種の大規模生産が進められ、それを米国などが担い、穀物生産の少数国への集中が進んだ。世界の食料輸出の約8割を約20国が占めるようになっている。トウモロコシでは、75%が5カ国(米国、ブラジル、アルゼンチン、ロシア、ウクライナ)に集中している。

日本や途上国に対しては、貿易自由化を徹底させ、米国などの穀物に依存させ、途上国農民を家族経営的な穀物生産から追い出し、コーヒーやバナナなどのプランテーションでその農民を収奪的に働かせ、農地を追われた農民の伐採による森林破壊も進行した。日本が輸入するウガンタの高級コーヒー豆は農地を奪われ父親も殺された農民などの1日1ドル未満の労働で成立しているとの衝撃的なテレビ報道もあった(NHKスペシャル『2030 未来への分岐点 (2)「飽食の悪夢~水・食料クライシス~」』、2021年2月7日)。

結果的に、「緑の革命」以降、特に、アフリカ諸国の食料自給率は向上したのではなく、劇的に低下していった。利益を得たのは、米国などの背後にいるグローバル穀物メジャー、食品企業、肥料・農薬や種の販売企業などだった。

そして、そうした企業は、水の枯渇、土壌劣化、環境・健康の悪化、途上国の自給率低下、にもかかわらず、「今だけ、金だけ、自分だけ」の利益追求を続けるため、資源の枯渇で生産限界に近付いていることも指摘されつつある。

資源の枯渇・環境劣化を無視した「今だけ、金だけ、自分だけ」の追求が限界に達しつつある中で、温暖化による干ばつと洪水による世界同時不作が少数になった生産国を襲うと、自国優先で世界的な輸出規制が起こり、特に、穀物自給率の低い国々は飢餓に陥る。世界中で食料を求める暴動、紛争が誘発され、さらに生産減少と物流の停止が長期化するという負の連鎖が進みかねない。

米国によって敷かれたレール

日本の食料自給率がこのように低くなり、食料危機に耐えられるのか、日本の食料安全保障は大丈夫なのか、という事態になった背景には米国の政策がある。「食料自給率が下がったのは、食生活が急速に洋風化したため、日本の農地では賄い切れなくなったのだからしょうがない」とよく言われるが、現象的にはそうだが、それは米国の政策の結果だということを忘れてはならない。

我が国は、米国の占領・洗脳政策の下、米国からの要請をGATT・WTO、FTAなどを通じて受け入れ続けてきた。畳みかける農産物関税削減・撤廃と国内農業保護の削減に晒され、農業を弱体化し、食生活「改善」の名目で食生活を「改変」させられ、戦後の米国の余剰農産物の処分場として、グローバル穀物メジャーなどが利益を得るレールの上に乗せられ、食料自給率を低下させてきた。

米国農産物輸入の増大と食生活誘導により日本人は米国の食料への「依存症」になった。そうなると米国の農産物の安全性に懸念がある場合にも、それを拒否できないという形で、量的な安全保障を握られると質的な安全保障も握られる状況になった。

「規制撤廃、貿易自由化を徹底すれば、皆が幸せになれる」という「市場原理主義」は、皆を守るルールを破壊し、日米の政権と結びついた一部のグローバル企業などが利益を集中するのに貢献し、日本や多くの途上国で、貧困、格差の拡大と食料自給率の低下を招いた。

米国がすごいのは、日本の若者をどんどん米国に呼んで市場原理主義経済学を徹底的に教えて帰国させ、いわゆる「シカゴボーイズ」を増殖させ、放っておいても米国が儲かるように日本人が自ら動く社会を作ろうとしたことだ。

日本側も、米国の利害にしっかりと応えるように農産物の関税撤廃をお土産、「いけにえ」として米国に差し出し、その代わり日本は自動車などの輸出で利益を得ていこうとした。そうすれば経済産業省の方は自分の天下り先も得られるという側面がある。「食料など金を出せば買えるのだ。それが食料安全保障だ」という流れが日本の経済政策の主流になった。

もう一つは財務省だ。米国の要請に呼応するかのように、信じられないくらい食料と農業のため予算を減らしている。農水予算は1970年には1兆円で防衛予算の2倍近くあったが、70年経ってもまだ2兆円だ。再生エネ電気買取制度による22年度の買取総額は4.2兆円で、これだけで農水省予算の2倍である。

国家安全保障の要は、軍事、食料、エネルギーと米国などでは言うが、なぜ、その要の中でも一番の要の食料だけがこんなにないがしろにされてきたのか。こんなことをしていたら当然農業は苦しくなる。食料の輸入が増え、自給率が下がり、食料危機に堪えられない構造が形成されたわけだ。

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