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【JCA週報】一世代を経て:「レイドロー報告」再考#6(イアン・マクファーソン、訳:和泉真理)(2010)2023年8月21日

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「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 山野徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫日本生協連代表会長)が協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、当機構の前身であるJC総研が発行した「にじ」2010年春号に、イアン・マクファーソン氏が執筆された「一世代を経て:『レイドロー報告』再考」です。
ボリュームの関係から9回に分けて掲載いたします。途中で他の掲載を挟んだ場合はご容赦ください。

一世代を経て:『レイドロー報告』再考 #6 (2010)
イアン・マクファーソン(ヴィクトリア大学名誉教授)
訳:和泉真理、監修:中川雄一郎

はじめに(#1)
1.レイドロー報告考察の2つの論点(#1~#4)
2.変化するグローバル社会における協同組合の位置づけ
(1)外部環境の変化と協同組合の成長(#5)
(2)レイドローが促した国際協同組合運動の努力目標(#6)
(3)協同組合の知的基盤の新たな探求と理論構築を(#6)
(4)レイドローの指摘は運動展開上絶えず生起する課題(#7)
3.レイドロー報告の最も重要な部分一第V章「将来の選択」一(#7)
おわりに(#8、#9)

2.変化するグローバル社会における協同組合の位置づけ

(2)レイドローが促した国際協同組合運動の努力目標

だが、レイドロー報告が既存の協同組合運動を軽視したとか、あるいは比較的大規模な既存の協同組合について肯定的、積極的な評価をほとんどしていないとか、云々するのは不正確であり、また公正を欠いている。それどころか、彼は、(レイドロー報告の中で)既存の協同組合が成し遂げたことや果たした役割を一証拠を挙げて一賛辞している。
そうしながらも、彼は、ある意味で、既成の協同組合に挑むことによってそれらの協同組合に深い敬意を表しているのである。しかも、彼の批判は、協同組合運動への人びとの信頼は決して揺るぎはしない、という信念に基づいているのであるから、彼の批判が効果を狙った見せかけの挑戦だとの非難は全く当たらないのである。もっと言えば、彼の論評は、生涯にわたって彼がカナダや他の多くの国々における協同組合運動に携わり、その運動を注意深く観察してきた成果なのである。
言い換えれば、彼の論評は他の人たちの意見を聴き、自ら調査した結果なのである。彼の論評はまた、協同組合で活動している多くの人たちが「理論やイデオロギーを避けてきて」、その代わりに「事業を巧く続けてきた」、という彼の観察から現れ出たのである。

そして彼は、次のような結論に至ったのである。
すなわち、多くの協同組合人は、「彼らが広めた協同組合の信念や信頼の核心に迫ろうとなかなかしなかった。というのは、彼らは、自分たちは既に変わることのない信念を持っており、これ以上何も追求する必要がない、と考えているからである」、と。
これをある批評家は「良いことをしていると思い込んでいる人たちの組織(システム)」と称している。そこでレイドローは、レイドロー報告・第四章「協同組合一理論と実践」の中で国際協同組合運動は次のことに努力するよう促したのである。
すなわち、
*協同組合企業(事業体)の本質を再考すること、
*協同組合原則の理解を再検討しかつ深めること、
*協同組合組織の規模拡大と多様性の推進を受け入れ、促進すること、
*協同組合における民主的管理の意識を育成し高めていくこと、
*協同組合が他の企業と明確に区別され、大いに有益であるとされるよう促す社会的目的に再度責任を負うこと、
*協同組合と国家との関係の複雑さと不可避性を認識すること、
*協同組合と国家との関係は国によって異なるとのことを受け入れること、
である。

(3)協同組合の知的基盤の新たな探求と理論構築を

レイドロ一は、特に言及しなかったが、これらの課題を回想してみると一30年もの年月を経たのであるから一これらの課題は、「協同組合研究」の分野の発展によってある程度まで答えを見い出すまでになっている、とわれわれは主張することができよう。
レイドローも気づいていたように、現代の国際協同組合運動は、大規模かつ複雑になってしまったので、19世紀以来引き継がれてきた到底十分とは言えない知的な基盤を広げ、深めていくことが肝要とされるようなったのであり、またそのためには国際的な経験のすべてを実質化させ、国際協同組合運動をポスト工業化世界の中に定置させていかなければならなくなったのである。
すなわち、協同組合の知的基盤は新たな探求と新たな理論的枠組みとによって拡大されなければならないのである。
要するに、協同組合運動は容易ならざる知的課題に直面してきたのである。それは、協同組合の将来がそれによって最終的に決められてしまうかもしれない知的課題なのである。レイドローにとって、協同組合運動の強さは、ただ単に市場競争(マーケット・プレイス)を生き抜く協同組合の能力だけでなく(それはそれで重要であるけれども)、協同組合の理念や思想の深遠さと今日的な意義に大きく左右されるのである。

結局のところ、レイドローの鋭い問いかけは、国際協同組合運動に対する彼の批判に根ざしているのである。
それについては『協同組合の実績と問題点』(The Performance and Problerns of Co-operatives)の中で彼が執筆担当した章を見られたい。彼は、この著書の中で、次のような理由から、直接間接に協同組合を、とりわけ「発達した協同組合」を批判している。
*組合員の積極的な関与を十分に促していない、
*より強力な民主的方法や手順を創り出していない、
*教育を怠っている、
*「協同組合のメッセージ」を一般大衆にほとんど伝えていない、
*協同組合の可能性について確かなイメージを創り出していない、
*選ばれたリーダーに適切に託されるべき役割がテクノクラートに奪われるのを許している、
*経済発展や社会発展のための国内的、国際的な政策を具体化するのに役立つような試みがほとんどなされていない、
*貧しい人たちが自ら向上しようとする取り組みに対し十分な支援を行っていない、
*従業員に権限を与えて、従業員が果敢にチャレンジする機会を十分に与えていない、
*協同組合セクターのあるべき機能と役割を構築していない、そして
*協同組合の活動を通じて国際的な発展を支援することに消極的である。

(続く)

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