シンとんぼ(60)食の安全とは(18)実験動物の犠牲のうえの安全性2023年9月16日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということの検証を試みており、現在、「毒性の強弱を示す根拠」の検証のため、現在の安全の証明がどのようになされているのかを探っている。
前回までに急性毒性、亜急性毒性試験、慢性毒性について紹介した。今回は残りの毒性試験について紹介する。
慢性毒性や発がん性試験は、治験物質が長期(18カ月以上)にわたり継続して取り込まれた時の毒性や発がん性を調べるもので、実験動物(ラットやマウス)の一生涯に当る期間、治験物質を連続投与して試験する。
これらの試験は、急性毒性が一度に治験物質を投与するのに比べて長期間継続して投与され、それによって内臓等体組織の変化を解剖して調べる。そうして、実験動物の一生涯で何の影響も出ない治験物質の実験動物体重1kgあたりの量を探るものだ。
それに対して催奇形性試験は、実験動物(ネズミ・ウサギ)の妊娠中の母体に治験物質を反復して投与し、その後に産まれた胎児に奇形が無いかどうかを調べる。これも奇形が出ない治験物質の実験動物体重1kgあたりの量を探ることになるが、せっかく産まれた胎児の命をも奪うことになるので、なんとも残酷な試験である。いずれの試験も、単純に致死量を図るものではなく、臓器の変化や奇形が出ない量を探るものであるため、投与する濃度を何段階かに分けて必要があるので、犠牲になる実験動物の数も多くなる。
次に、繁殖試験だが、これは実験動物の繁殖能力に対する悪影響や胎児の発育や出産後の成長に及ぼす影響がないかを調べるもので、実験動物の二世代以上にわたって連続投与する。これもまた、多くの実験動物が犠牲になる。
最後に変異原性試験であるが、これは培養細胞を用いて試験され、治験物質がDNAに影響を与え、遺伝子の突然変異や染色体異常などを起こす性質がないかどうかを調べるものだ。
これまで、数々の毒性試験を紹介してきたが、一つの物質(農薬の成分等)の毒性を調べるために奪われる実験動物の数がとても多いことを分かって頂けただろうか? そして、このように作物の健康を守るため、人間の健康を守るために開発される新しい有効成分が世に出るためには、膨大な数の実験動物の犠牲のもとに、様々な安全性が確かめられていることをよく知っておいてほしい。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(150)-改正食料・農業・農村基本法(36)-2025年7月12日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(67)【防除学習帖】第306回2025年7月12日
-
農薬の正しい使い方(40)【今さら聞けない営農情報】第306回2025年7月12日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 茨城県2025年7月11日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月11日
-
【注意報】果樹に大型カメムシ類 果実被害多発のおそれ 北海道2025年7月11日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 福島県2025年7月11日
-
【注意報】おうとう褐色せん孔病 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】出会いの大切さ確信 共済事業部門・全国共済農協連静岡県本部会長 鈴木政成氏2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】農協運動 LAが原点 共済事業部門・千葉県・山武郡市農協常務 鈴木憲氏2025年7月11日
-
政府備蓄米 全農の出荷済数量 80%2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA加賀(石川) 道田肇氏(6/21就任) ふるさとの食と農を守る2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA新みやぎ(宮城) 小野寺克己氏(6/27就任) 米価急落防ぐのは国の責任2025年7月11日
-
(443)矛盾撞着:ローカル食材のグローバル・ブランディング【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月11日
-
【2025国際協同組合年】協同組合の父 賀川豊彦とSDGs 連続シンポ第4回第二部2025年7月11日
-
米で5年間の事前契約を導入したJA常総ひかり 令和7年産米の10%強、集荷も前年比10%増に JA全農が視察会2025年7月11日
-
旬の味求め メロン直売所大盛況 JA鶴岡2025年7月11日
-
腐植酸苦土肥料「アヅミン」、JAタウンで家庭菜園向け小袋サイズを販売開始 デンカ2025年7月11日
-
農業・漁業の人手不足解消へ 夏休み「一次産業 おてつたび特集」開始2025年7月11日
-
政府備蓄米 全国のホームセンター「ムサシ」「ビバホーム」で12日から販売開始2025年7月11日