コメの市場があるメリットとは?その12 「主食用米だけでは決まらないコメの価格」【熊野孝文・米マーケット情報】2023年10月3日
コメの価格決定要素で大きなウエイトを占めるのは需給状況である。それに違いないのだが、コメの需給状況を把握するのは簡単ではない。農水省は「主食用米の需給」の数値は見通しも含めて公表するが、主食用外のコメの需給がどうなっているのかはわからない。わからなくても良いほど小さな数字であれば良いのだが、実際はそうではなく、その数字は年々大きくなっている。主食用以外の分野を抜きにしてコメの需給は語れなくなっている。主食用米はもちろんそれ以外の加工原料米や飼料用米まで扱っている業者で組織される全米工の東日本ブロック会議が先週東京で開催された。全米工の組合員がコメの需給や価格についてどう見ているのか?概要は以下の通りである。

北海道=「台風崩れの熱帯低気圧が上陸して、かなりの面積で稲が倒伏した。倒伏した後の豪雨でダメージを受けた。ただ品質の低下が懸念されたほど胴割れは出ておらず、倒伏しなかった圃場のコメはきれいだ。くず米の発生は少なく昨年の6割程度。スタート時点の価格は常識的なものであったが、今ではAもBもCもキロ100円以上している。色選後、基準を下回るものは今のところ出ていないが、調整しないと1等にはならない。主食用米はホクレンが昨年並みの27万トン集荷計画を立てており、集荷積み上げを図るためさらに300円アップした。今後さらに庭先が値上がりして集荷は厳しい状況になる」
東北=「宮城県は半分ぐらい刈取りを終えたが、実感としては作況104というほど豊作ではない。県北と県南では品質具合も違う。宮城県以外の各県も予想されたほど作柄は良くないのではないか?10月の統計を発表がどうなるのを注視している。
くず米は例年に比べおおむね3分の2程度の発生量で少ない」、「福島は3分の1程度刈取りを終えた。くず米の発生は極端に少ない。庭先価格は会津で90円、中通で85円程度。品質は例年30キロ袋で25キロぐらいになるが今年は20キロ程度。モニタリング検査は1検体で良くなったので出荷が遅れることはない」
関東=「茨城県南は晩生の刈取りの真っ最中。高温障害で乳白の発生が多いが、他の地域に比べるとまだ良い。刈取りのスタートは早かったが、後が進んでおらず刈り遅れのところもある。くず米の発生は少ないが、品質が劣る。価格はブレがあって難しいやり取りをしている」
「丸米(主食用米)は置場なのか持込みなのかわからないような価格になっている。くず米は値段を出しても買える量が限られる。今年は大変な年になる」、「9月21日の取引会では2280トンの売り物があったが、成約数量は1000トンで、予想以上の高値になった。精米の単価と比較した場合本当に合うのか心配している」
新潟=「一般米はほとんどが2,3等で3等の方が多い。くず米の発生は少なく、自社搗精工場の搬入実績は9月27日現在で昨年の4分の1程度。中米も作ってみたが、真っ白い中米になった。売れるかどうか心配。米菓メーカーへの提案価格は150円から170円ではないか」、「国産を使う米菓、味噌メーカーには年間を通じた供給は約束できないと言っている。
MA米にシフトせざるを得ないと想定して動いているのでそこまでのつなぎ。くず白米の価格は150円から160円は覚悟していると思うが、この価格になるとMA米の方が優位性がある。全量MA米に切り替わると6年産にも影響が出て来る」、「来年コシヒカリの種子が発芽するのか問題になるのではないか。新潟はBLしかないので他県から種子を持ってくることができない。ダメな種子を播くと6年産もダメということになりかねない。種子協会でも問題になるのではないか」
近畿=「みずかがみ、キヌヒカリの品質はやや落ちる。コシヒカリは概ね良かったが、湖西は落ちる。くず米は昨年の半分の発生量」
九州=「熊本でヒノヒカリの刈取りが始まった。高温障害を受けた粒も入っておりくず米もシラタ。キロ130円という値段を聞かれるが、品質も考慮すると昨年の倍の価格になった感じがする。
一般米はヒノヒカリや森のくまさんからくまさんの輝きに移行していることもあって、作付けが減少、集荷がヒートアップしている」
この日の会議では各社の情報交換会の前に事務局よりブロック会議で提出された資料の説明がなされ、この中で4年産のくず米発生状況について事務局が試算した数値が公表された。
それによるとライスグレーダ―網下1.7ミリ以下が18万9700トン、1.7ミリ上から1.85ミリ下が31万3000トン。合計50万2700トンがいわゆる特定米穀と言われるコメの供給量で決して小さい数量ではない。しかもこの特定米穀は価格によって主食用増量原料に使われたり、加工原料用に使われたりするのである。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(173)食料・農業・農村基本計画(15)目標等の設定の考え方2025年12月20日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(90)クロロニトリル【防除学習帖】第329回2025年12月20日 -
農薬の正しい使い方(63)除草剤の生理的選択性【今さら聞けない営農情報】第329回2025年12月20日 -
スーパーの米価 前週から10円上がり5kg4331円に 2週ぶりに価格上昇2025年12月19日 -
ナガエツルノゲイトウ防除、ドローンで鳥獣害対策 2025年農業技術10大ニュース(トピック1~5) 農水省2025年12月19日 -
ぶどう新品種「サニーハート」、海水から肥料原料を確保 2025年農業技術10大ニュース(トピック6~10) 農水省2025年12月19日 -
埼玉県幸手市とJA埼玉みずほ、JA全農が地域農業振興で協定締結2025年12月19日 -
国内最大級の園芸施設を設置 埼玉・幸手市で新規就農研修 全農2025年12月19日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】「経済関係に戦略性を持ち込むことなかれ」2025年12月19日 -
【農協時論】感性豊かに―知識プラス知恵 農的生活復権を 大日本報徳社社長 鷲山恭彦氏2025年12月19日 -
(466)なぜ多くのローカル・フードはローカリティ止まりなのか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月19日 -
福岡県産ブランドキウイフルーツ「博多甘熟娘」フェア 19日から開催 JA全農2025年12月19日 -
α世代の半数以上が農業を体験 農業は「社会の役に立つ」 JA共済連が調査結果公表2025年12月19日 -
「農・食の魅力を伝える」JAインスタコンテスト グランプリは、JAなごやとJA帯広大正2025年12月19日 -
農薬出荷数量は0.6%増、農薬出荷金額は5.5%増 2025年農薬年度出荷実績 クロップライフジャパン2025年12月19日 -
国内最多収品種「北陸193号」の収量性をさらに高めた次世代イネ系統を開発 国際農研2025年12月19日 -
酪農副産物の新たな可能性を探る「蒜山地域酪農拠点再構築コンソーシアム」設立2025年12月19日 -
有機農業セミナー第3弾「いま注目の菌根菌とその仲間たち」開催 農文協2025年12月19日 -
東京の多彩な食の魅力発信 東京都公式サイト「GO TOKYO Gourmet」公開2025年12月19日 -
岩手県滝沢市に「マルチハイブリッドシステム」世界で初めて導入 やまびこ2025年12月19日


































