(359)刺咬昆虫【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年11月24日
知っているようで意外に知らないもの…、結構ありますね。「刺咬」という言葉は見れば即座に意味はわかるでしょうが、読み方となると難しいかもしれません。
東京都が毎年公表している記録の中に、「ねずみ・衛生害虫等被害発生・相談件数」という興味深い資料がある。読んで字の如く、簡単に言えば我々の平穏な日常生活に嫌な思いをさせ、実際に被害を生じさせるような相談件数(駆除件数や個体発生件数ではなく、あくまで苦情・相談等の件数)をまとめたものだ。
令和4(2022)年度の相談件数合計は27,562件である。最も多い月は8月で4,848件もある。単純に31で計算しても1日156件、8時間勤務480分とすれば3分に1件の相談になる。土日を除けば被害相談はさらに集中するであろう。相談をする方も受ける方も、想像するだけで大変なことがわかる。
年間27,562件の相談は、昆虫等の種類別に12に分けられている。凡そ日常生活では目にしない、しかし妙に納得する分類用語が並ぶ。順番に記せば、吸血昆虫、刺咬昆虫、ダニ類、細菌付着昆虫、接触昆虫、不快昆虫、不快動物、農林害虫、食品・衣類害虫、木材害虫、ネズミ類、その他、である。
全く専門は異なるにもかかわらず、こうした分類を見るとつい仕事柄、「代表的な不快昆虫と不快動物の例を示せ」とか、「細菌付着昆虫とは何か」などというクイズを出したくなってしまう。ご関心ある方は調べてみると興味深い。
さて、27,562件の相談の中で15,130件(55%)を占めるのが「刺咬昆虫」による被害発生・相談である。第2位はネズミ類の6,399件(23%)である。
「刺咬」は「刺す」と「咬む」であり、この2つを合わせて「しこう」と読む。日常的には「虫刺され」などの方が普及している。刺されたり咬まれた場合の総称を刺咬症という。細かく言えば、ハチに刺された傷は刺傷、蛇に咬まれた傷は咬傷...になる形だ。ちなみに同じ「刺す」でも蚊はシラミ類やノミ類とともに吸血昆虫に分類されている。
東京都の統計では、刺咬昆虫はハチ類、アブ、その他に分かれている。ハチ類はさらにアシナガバチ、スズメバチ、ミツバチ、マルハナバチ、クマハチ、シバンムシアリガタバチ、その他(ハチ)に細分されている。
15,130件の内訳は、スズメバチ(6,049件)、アシナガバチ(4,904件)、その他(ハチ)(3,832件)の合計が98%を占める。中でも最大のものがスズメバチである。筆者の世代で子供の頃にハチを見たことが多い人であれば、スズメバチとアシナガバチは簡単に見分けられる。飛んでいるときの脚の長さや色、あるいは巣があればその巣の形を見て区別したものだ。余りハチを見たことがないと区別が難しいため、先の内訳の中に占めるハチ(3,832件)はどちらのハチか区別がつかない相談・報告をまとめたものであると推測される。
そういえば昔は東京の郊外でもクマバチ(筆者達はクマンバチと間に「ン」を付けて呼んでいた)をたまに見かけた。スズメバチがオレンジ色の身体をしているのに対し、クマバチは黒と黄色で独特の姿をしている。昨年のクマバチの被害数は37件と少ないが、それでも春から夏にかけては多少相談が報告されているようだ。
過去10年ほどの数字を追ってみたが、東京都だけで刺咬昆虫の被害は年間約15,000件が継続している。ハチの種類や性質などを子供の頃に自然に覚えた時代と異なり、意識して違いや習性に関する知識を習得し、巣を見つけた場合でも素人判断で対処せず、しっかりと専門業者等に対処を依頼することが必要な時代である。幸い晩秋から冬の間はハチの被害はほとんど発生しない。活動が活発化する春先に備え、家屋の周辺などを確認しておくにこしたことはないであろう。
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それにしても表意文字である漢字は便利ですね。しかし自ら字を書かずにディスプレイに向かうことが多くなると書けなくなる字が増えてきている気がします。
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