(363)ドラッグストアはどこまで伸びるか【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年12月22日
日用品をどこで購入するか、これは時代や内容によりかなり異なります。
かつて日用品は地元の商店街での購入が当たり前であった。しかし、現代ではそれも大きく変化している。例えば食料品は、その種類や内容、調理方法だけでなく、購入「場所」が激変したことは多くの人が実体験として経験している。
もちろん、居住地域や所得状況などにより個々人が持つ経験や印象は大きく異なる。そのため、必ずしも全てに該当はしないが、それでも商店街、スーパー、コンビニ、さらにドラッグストア、ホームセンター、ネット通販など、我々が食料品を含む日用品を入手する「場所」は時代とともに大きく変化している。
そこで経済産業省の数字をもとに少し前からの業態別販売額の推移をまとめてみた。これを時系列でグラフ化すると動きが見えてくる。とりあえず、業態別の年間販売額を単純にグラフ化すると以下のようになる。
1980~90年代前半までは百貨店とスーパーが2強、コンビニはマイナーだ。百貨店は1991年に販売額12兆円のピークをつけるが、その後は減少する。転機は1994年、これ以降現在までスーパーがトップを走る。
1980年代後半はいわばバブル景気で高級品志向の時代と考えれば、バブル崩壊の1991年に百貨店販売額がピークを付けたことは象徴的である。百貨店はその後、各社が再編・統合をめまぐるしく繰り返している。
さらに、ここ数年は新型コロナによる外出自粛、休業、時短などの影響で内食需要が増加したため、百貨店には逆風、スーパーには追い風となり、一段と差が拡大したようだ。ようやく今年になり多少は落ち着いてきたのかもしれない。
一方、コンビニは全体としては順調である。地域住民の高齢化が進展し、遠隔地やターミナル駅に隣接した大型店舗には行きにくい場合でも、近場のコンビニであらゆる商品が入手可能となればニーズは大きい。今や多くの人々のライフラインとして欠かせない。グラフの印象からは、1980~90年代にスーパーが生活の中に浸透したような速度で、2000年以降のコンビニが現代日本人の生活に入り込む様子が見える。
さらに、過去10年に注目すればドラッグストアの伸びが著しい。2007年以降の日本は超高齢社会である。高齢化社会(1970年以降)や高齢社会(1994年以降)ではなく、人口の21%、5人に1人が65歳以上という超高齢社会に突入している。そうなれば、当たり前の事だが複数の医院に定期的に通う人が増える。診療の後は処方箋に基づき薬を求め、ついでに食品や日用品を購入する...、という行動パターンが発生する。近場であればなおよい。ドラッグストア急伸の背景にはこうしたニーズを素早く理解して店舗展開や商品の品揃えに活用したチェーン本部の経営戦略が垣間見える。
この動きから取り残されているのがホームセンターだ。これはガーデニングや日曜大工需要を牽引していた「団塊の世代」(1947~1949年生まれ)が後期高齢者になったことと無縁ではない。一部には100円ショップなどを取り込み近場のスーパーやコンビニと競争する動きも見られるが、抜本的対策ではない。むしろ、築数十年の住宅などに対する手軽なリフォーム、庭木の管理や手入れサービスなどの方に需要があるのではないか。これもかつてはDIYで実施していたものが、高齢化により子供世代はアウトソースせざるを得なくなった可能性があるのかもしれない。
* *
スーパー(15兆円)、コンビニ(12兆円)、ドラッグストア(8兆円)、ほぼ20年ごとに新しい役者が大きく伸びています。ドラッグストアは今後10年で今のコンビニの販売額までいくかどうか、興味深いところです。
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