新しい物日(ものび)をつくり需要を拡大【花づくりの現場から 宇田明】第28回2024年2月8日
花の価格は市場において需要と供給の関係で決まるので、価格転嫁は容易ではありません。
市場で再生産価格を得るには、買手がほしい商品をほしいときに出荷するという市場経済の原則と、持続的な需要拡大活動が必要です。
需要拡大活動のひとつが「新しい物日をつくる」ことです。
花は1年を通して均等に売れるのではなく、極端な偏りがあります。
花がとくによく売れる日を物日(ものび)とよんでいます。
物日は、春の彼岸、お盆、秋の彼岸、年末・迎春の4回。
いずれもわが国の宗教行事、伝統行事です。
(花づくりの現場から第8回「産業がもっとも依存しているのは物日(ものび)」)
もうひとつ、毛色がちがう物日があります。
5月第2日曜の母の日です。
母の日は、お母さんにカーネーションを贈り感謝する日として、米国から世界に広がりました。
「新しい物日のつくる」モデルは、この母の日です。
母の日は、米国ウエストバージニア州のアンナ・ジャーベスさんの呼びかけにより、亡くなった母親を追慕し、またすべての母親を讃える礼拝が1908年5月10日に開催されたことが発端です。
そのとき母親が好きだった白いカーネーションを身につけたことで、カーネーションが母の日のシンボルになりました。
母の日はまたたくまに全米に広がり、1914年には正式に米国の記念日になりました。
母の日が短期間に普及したのはジャーベスさんの熱意だけではありません。
百貨店王とよばれたジョン・ワナメーカーの協力と、カーネーションを売るチャンスととらえた全米の花屋業界の宣伝活動があったからです。
その結果、母の日は世界の花産業に巨大なマーケットをもたらしました。
わが国では、フラワーデザイナーの先駆け 恩地剛が1928年(昭和3年)「実際園芸」誌に米国の母の日を紹介していますが、普及したのは戦後になってからです。
母の日のような新しい物日をつくり、需要を拡大することが花産業の目標です。
そんな花を売りたい、買っていただきたい花の記念日が表のようにめじろおし。
それらはさまざまで、生産者団体が提唱している「スイートピーの日(1月21日)」、「ガーベラ記念日(4月18日)」など、伝統行事の節句、中秋の名月など、欧米宗教行事のバレンタイン、ハロウィン、クリスマスなど、語呂あわせの愛妻の日(1月31日)、いい夫婦の日(11月22日)、そして母の日、父の日(6月第3日曜日)などがあります。(※ページ下部に『表 花を売りたい記念日、伝統行事など』)
そのなかでも、現在花産業が一丸となって取りくんでいるのが2月14日のバレンタイン。
母の日は欧米にならってお母さんにカーネーションを贈る日として定着していますが、バレンタインは日本では女性が男性にチョコレートを贈る日に変えられています。
それを本来のたいせつなひとに花を贈る日に戻そうというのが「フラワーバレンタイン」。
2月は花がもっとも売れない月。
花産業は2月の物日が喉から手がでるほどほしい。
巨大なチョコレート業界に対抗する弱小花業界ですが、なんとか大都市では少しずつ成果がでてきています。
いかにも売らんかなの商業主義ですが、モデルとする母の日を普及さえたのは商業主義の力です。
母の日創設者アンナ・ジャーベスさんは、そんな商業主義が許せませんでした。
普及に心血を注いだ母の日を、廃止させようと命がけで取りくみました。
「ジャービスさんは初め、母が好きだった白いカーネーションを、母の日に息子や娘が身につける花とした。これに全米の花屋が商機を見いだし、白が売り切れると赤など明るい色も売りはじめる。
怒りを募らせたジャービスさんは過激化し、花の販売を妨害して逮捕されたこともあったそうだ」(毎日新聞「余禄」、2019年5月12日)
JAcomの読者にも、花産業の「新しい物日をつくる」商業主義的な活動に眉をひそめる方がおられるでしょう。
しかし、需要がないところに生産はありません。
農家にはつくる努力に加えて、売る努力、商業主義的な思考がもっと必要です。

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