ローマで一度は訪れたい博物館 国立ヴィッラ・ジュリア・エトルスク博物館 ローマ在住ジャーナリスト・茜ヶ久保徹郎【イタリア通信】2024年2月17日
国立エトルスク博物館
ローマ以前、中部イタリア、現在のトスカーナ、ウンブリア地方を中心に栄え、古代ローマに大きな影響を与えたエトルリアの生活がわかる発掘品が沢山展示されています。
エトルリアは今から3000年ほど昔、紀元前900年ころに始まり、前7世紀ころにはギリシャやフェニキアとの交流により金や象牙細工、テラコッタ、壺などへの絵付けの職人が誕生し、ギリシャの文字が導入され、オリーブやブドウ栽培の技術も発達し、地中海西部にワインを輸出していました。
ギリシャから輸入された壺や皿
エトルリア人はお墓に生前の暮らしを再現し、生活に必要な品々を副葬、現在博物館に展示されているものの殆どはそうした副葬品です。
紀元前700年ころには都市国家が成立し、ギリシャやフェニキアなどとの交流、交易が盛んになりました。
紀元前6世紀のころの南イタリアにはギリシャの植民都市があり、エトルリアは交易を行っていましたが、時には南に進出しようとして軍事的な衝突もありました。
しかしエトルスク、ギリシャともに都市国家であったために、戦いは都市同士であり、それほど大規模なものではなかったと思います。
そして紀元前4世紀中ころになるとローマが領土を拡大し、紀元前396年にエトルリアの主要な都市、ヴェイイが征服され、その後エトルリアは徐々にローマに統合され、紀元前3世紀までに完全にローマの支配下に入りました。
エトルリアはワインだけでなく、優れた職人が陶芸や金属の加工、武器や家庭用品、宝石、そして鏡など青銅製の製品を作り、また建築の技術も素晴らしく城壁で囲まれた都市には神殿や建物そして道路も整備されていました。
夫婦のお棺
エトルリアの農業
1. 穀物。小麦、大麦。
2. 果物、野菜。ブドウ、イチジク、オリーブ、リンゴ、ナシ、ニンジン、豆類。
3. ワイン。
当時エトルリアのワイン造りの技術は有名でその後のイタリアのワイン文化に影響を与えました。ワインの歴史は古く、紀元前6千年紀後半のイラン北西部の新石器時代の遺跡で発掘された陶磁器の内部にワインの痕跡が発見されているとのことです。
エトルリアは紀元前8~6世紀にブドウの栽培やワイン造りの技術をギリシャから学び、西地中海地方へワインを輸出し始めました。
4. 動物飼育。ヒツジ、ヤギ、豚、牛など。
5. 海や川、湖などでの漁業、そして狩猟。
エトルリア人の食事は多様で豊かであったと思われますが、文字や絵にかかれた資料が少なく、発掘物からの推測です。
お墓に作られた台所
このように古代ローマがあまりにも有名なために、他の文明はかすんでしまっていますが、イタリアにはそれ以前に技術的にも芸術的にも進んだ文明がありました。
エトルリアのような都市国家はそれぞれの町が独自の文化を持ち、市民の結束はかたかったのでしょうが、個性が強いために都市同士が力を合わせてローマと戦うことが出来ず、他民族でも受け入れ市民にしてしまう多様性に富んだ国、ローマに対抗できなかったのでしょう。
ローマは現在の米国や奈良時代までの日本のように移民を受け入れ、優秀な技術を持った人たちに市民権を与え1000年以上も繁栄しました。「外国人を受け入れない閉ざされた国はだんだんと衰退していくのだな」。エトルスク博物館で2500年も昔の素晴らしい発掘物の間を歩いているとそんなことが頭に浮かびました。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(90)みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(1)2024年4月27日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(8)【防除学習帖】 第247回2024年4月27日
-
土壌診断の基礎知識(17)【今さら聞けない営農情報】第247回2024年4月27日
-
【欧米の農政転換と農民運動】環境重視と自由化の矛盾 イギリス農民の怒りの正体と運動の行方(2)駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内で多発のおそれ 熊本県2024年4月26日
-
【注意報】核果類にナシヒメシンクイ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年4月26日
-
【注意報】ムギ類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年4月26日
-
「沖縄県産パインアップルフェア」銀座の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年4月26日
-
「みのりカフェ博多店」24日から「開業3周年記念フェア」開催 JA全農2024年4月26日
-
「菊池水田ごぼう」が収穫最盛期を迎える JA菊池2024年4月26日
-
「JAタウンのうた」MV公開 公式応援大使・根本凪が歌とダンスで産地を応援2024年4月26日
-
中堅職員が新事業を提案 全中教育部「ミライ共創プロジェクト」成果発表2024年4月26日
-
子実用トウモロコシ 生産引き上げ困難 坂本農相2024年4月26日
-
(381)20代6割、30代5割、40/50代4割【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月26日
-
【JA人事】JA北つくば(茨城県)新組合長に川津修氏(4月20日)2024年4月26日
-
野菜ソムリエが選んだ最高金賞「焼き芋」使用 イタリアンジェラートを期間限定で販売2024年4月26日
-
DJI新型農業用ドローンとアップグレード版「SmartFarmアプリ」世界で発売2024年4月26日
-
「もしもFES名古屋2024」名古屋・栄で開催 こくみん共済coop2024年4月26日
-
農水省『全国版畜産クラウド』とデータ連携 ファームノート2024年4月26日