新解釈「国消国産」【小松泰信・地方の眼力】2024年2月21日
「国消国産」と大書されたポスターをみて、「これは革命を目指すと言うことですか?」と問う人あり。「はぁ?」と返答に困っていると、「国を消し、新しい国を産み出そうと言うことですよね。だったら、革命ですよ」と解説されたそうだ。本来、「国民が必要とし消費する食料は、できるだけその国で生産する」という意味だが、よくよく考えると時宜にかなった新解釈である。

岸田内閣アウト!なんですけど
毎日新聞(2月19日付)は、同紙が2月17、18日に実施した全国世論調査(有効回答は、携帯電話453件・固定電話571件、計1024件)の調査結果を示している。注目した回答結果を次の様に要約した。
(1)岸田内閣を「支持しない」82%。
(2)自民党の内部調査で「裏金」事件の解明が「進むとは思わない」91%。
(3)裏金事件にかかわった派閥の幹部が説明責任を「果たしたとは思わない」93%。
(4)自民党は裏金事件にかかわった派閥の幹部を「処分すべきだ」84%。
(5)政党から議員個人に支給される「政策活動費」は「使い道を明らかにすべきだ」90%。
(6)政治資金収支報告書に不記載で脱税の可能性がある自民党議員を国税当局は「調査すべきだ」93%。
(7)盛山正仁文科相は「交代させるべきだ」78%。
(8)今年、物価上昇を上回る賃上げが「実現するとは思わない」79%。
(9)次の首相にふさわしい人は「岸田文雄さん」1%。
以上より、民意は岸田政権とその取り組みに「NO!」をつきつけ、退陣を求めている、と判断される。
「サンデー毎日」(3月3日号)で髙村薫氏(作家)は「政治がどんな体たらくでも、平和でさえあれば国民は何とか生きてゆけるが、ひとたび有事となれば、この政治の現状では国民の生命が危機にさらされるのは間違いない」とし、「座して破滅を迎えるか、この政治と決別するかの瀬戸際である」と、われわれに迫っている。
アメリカに広がる「熱いスト」
「米国で労働組合の活動が目立っている。2023年は全米自動車労働組合(UAW)が大規模ストライキを実施し、ハリウッド俳優らも待遇改善に動いた。スト参加者は前年の3倍近くに急増。24年に入っても、物価高を背景に『熱いスト』が続くと予想されている」で始まるのは、西日本新聞(2月19日付夕刊、ワシントン、ニューヨーク共同)。「米国でプラカードを手に練り歩く姿は、いまや日常茶飯事だ」には驚いた。そして、「労組の平均組織率こそ低迷が続くが、世論の支持は高い」とのこと。今年も、「労組結成やストの頻発が続きそうだ」と伝えている。
東京新聞(1月22、29日付)で大矢英代氏(おおや・はなよ、カリフォルニア州立大助教授)は、勤務校における給与の引き上げと福利厚生の充実を求めた5日間のストの顛末を伝えている。同州では公立学校の教員のストは合法だが、学生に理解を求めたとき、「自分たちもピケットラインに立つ」「取材に行く」という学生たちがいたそうだ。そして、「権利を守る戦いは、教科書では教えられない本物の市民教育なのかもしれない」と中締め。
ところが、ストライキ初日夜。組合執行部は大学側と「暫定合意」を結び、あっけなくスト終了。「求めていた給与12%アップとはほど遠い、実質5%で打ち止め」に、教員以上に憤慨したのは学生たち。「先生、なんで目的を果たさずにストを止めたんですか? 最後までしっかりと大学側と闘うべきだ」と、お叱りを受けることに。
日本では公立学校教員のストは認められていないことを伝えると、多くの学生は驚き「じゃあ、日本の先生たちは、なにかを訴えたり、変えなければならない時、どうやっているんですか?」と質問してきたそうだ。大矢氏は答えに窮した。
欧州の農業者も怒っている
日本農業新聞(2月19日付)で和泉真理氏(JCA客員研究員)は、「欧州の多数国で、農業者による抗議行動が野火のごとく広がっている」として、欧州における「農民デモ」の拡大を伝えている。「抗議行動の背景は国ごとに異なる」が、欧州の農業者が共通して直面する課題を、「資材コストが高騰しているが、各国政府は消費者行政の観点から食料品価格を抑えようとしている。フードチェーン内での小売業の力が増大し、公正な取り分を得られていないと農業者は感じている」と整理している。
しかし農業政策といえば、「一層環境や動物福祉に傾き、『家畜を減らせ』『かんがい事業を制限しろ』など農業生産を抑える方向での規制が増えるばかりだ」とのこと。ゆえに、「直面するさまざまな厳しい環境の中でどうやって『より(環境や動物福祉などに)良い物を』『より安く』作れというのか」が、欧州の農業者の怒りの核心部分であることを記している。
同紙(2月20日付)で山田優氏(同紙特別編集委員)も、「農家による大規模なトラクターデモや高速道路の封鎖」が欧州各地に広がっていることを、「百姓一揆」と表現してこの問題を取り上げている。
「もう我慢の限界だ。英国の農家は世界一厳しい基準を強いられているのに、政府は規制の緩い国から輸入を増やす交渉をしている。スーパーは私たちの農産物を生産費よりも安く売っている。恥を知れ」とは、数十台のトラクターが英国南部に集まり超低速運転を繰り広げたとき、呼びかけ農家が伝えた檄文の一部。
最後は、わが国に目を転じ、「グローバリズムに追いまくられているのは日本の農家もまったく同じ。しかし、耳を澄ましても抗議の声は聞こえてこない。裏金に汚染された日本の政治家が、農家を助けてくれるとでも思っているのだろうか」と結ぶ。
「兵糧攻め」でゼネストへ
もちろん多くの農家は、「裏金に汚染された日本の政治家」が助けてくれるとは思っていない。怒り心頭だが、怒り方が分からないだけである。とりわけ、第2次安倍政権に牙を抜かれて以降、JAグループは「触らぬお上に祟り無し。余計なことは言わず粛々と政権に付き従う」こととなった。それが現下の悲しむべき状況である。
農業者は、「伝家の宝刀」ともいうべき「兵糧攻め」という武器を有していることを思い出すべきである。この国のデタラメな政治屋や財界人、そして無理解な消費者に、農業と食料の価値を思い知らせるために、農畜産物の出荷を停止する、すなわちゼネラルストライキに突入することだ。ただし、農産物直売所などで、生産コストを価格に反映(転嫁)させた新鮮な農畜産物を提供する。理解、納得した消費者は買い出しに行けば良い。「伝家の宝刀」を抜き、腐りきったこの国を消し、新たな国を産もうぜ!
「地方の眼力」なめんなよ
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