(372)先は長い...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年2月23日
年齢を重ねると意外なものが面白くなります。今回はここ数年のちょっとした趣味をご紹介します。
記録を辿ると2019年10月が最初のようだ。とある携帯のアプリを何気なく開始した。以前は機会を見て訪問するだけの全国の史跡を城郭という形でとりまとめたゲームに出会った。城郭と言ってもいわゆる「城」だけではく、かつての豪族の館跡や陣屋など様々なものを含めてこのアプリでは「城」としている。
ゲーム上、「城」の総数は3,000、現在までの約5年間で訪問した(ゲーム上は「攻略」となる)数は現段階で48に過ぎない。1年に10か所、平均すれば月に1か所ほどのペースになる。
訪問城数/登録城数を地方別に見ると、北海道0/64、東北17/346、関東23/597、中部2/588、近畿4/511、中国2/271、四国0/176、九州0/406、沖縄0/41になる。筆者が住む東北地方には346の城が登録されているが、訪問したのは17城である。
筆者は福岡時代には週末を利用していろいろな城郭を訪問したが、このゲームを開始したのは5年前のためゲーム上の九州攻略は今でもゼロである。
現地を訪問し、そこで由来などを読み「なるほど」と納得した段階で自ら攻略する。車や電車でたまたま近くを通ることがあり、車中からのクリック攻略も可能だが、それは自制している。あくまで直接訪問した場所にこだわっている。
それでどうということもないが、意外と新しい発見があるから面白い。新興住宅地の中に簡単な石碑や立て札だけが残る城跡もあるし、縦横30メートルくらいの普通の公園になっているところもある。山道をかなり苦労して歩いた後の攻略もある。誰と競争する訳でもなく、黙々と数を重ねる。それも思い出した時だけだ。
ちなみに筆者の住む宮城県には64城が登録されている。この5年弱で訪問したのはまだ15城である。有名な多賀城すらゲーム開始後には訪問しておらず無攻略状態である。今後、自分の足でどのくらいの城の攻略が可能であろうか。
ところで、このゲームには「上には上がある」と思わせるもう一つの仕掛けがある。筆者が攻略した48城、これは76万石に相当するようだ。こうした形で石高が増えていくのも一興だが、同時に「官位」が付与される。
あくまで遊びの世界と理解してほしいが、妙にリアルである。最上位は正一位、官職は征夷大将軍、副将軍、太閤、摂政、関白がある。次が従一位、官職は太政大臣である。そして一番下は正八位下、主膳佑(しゅぜんのじょう)から始まる。叙任条件は2城を訪問、つまり攻略することだ。主膳佑の仕事とは、東宮で皇太子の食事の準備をする人々の統括のようである。現在、この仕事が何と呼ばれているかは知らない。とにかく、ここから長い階段が始まる。
約5年、月に一度程度、気が向いたときに近隣あるいは出張先で早朝や深夜の城を歩いて到達した現在の筆者は従七位上、主殿允(しゅでんのじょう)である。叙任条件は45城の攻略、仕事は内裏での蝋燭などの消耗品管理である。あと2城を攻略すると位は同じでも、仕事は仏事・神事・宴席の準備などを担当する大炊允(おおいのじょう)に上がるようだ。
とんでもなく長い階段である。ゲームだから楽しめるが、かつて国語や歴史で学んだ優雅な世界は庶民とは全くかけ離れた世界であることがわかる。あと5年ほど同じペースで継続して100城を攻略すると筆者はようやく正七位下、図書允(ずしょのじょう)という国家の蔵書管理の仕事になる。ここまでは何とかいけるかもしれない。
時代劇などでよく聞く位に従五位下がある。職務としては勘解由使(日本史で聞いたことがあると思う)などであり、有名どころでは黒田官兵衛が叙任されている。ゲーム上、この地位に筆者が到達するには370城を攻略しなければならない。このペースだとあと30年で行けるかどうか。先は長い...。
* *
律令制度の仕組みもこうした形で学ぶと面白いですね。
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