政府備蓄米売却が最大の焦点に【熊野孝文・米マーケット情報】2024年4月16日
全国味噌工業協同組合連合会(略称 全味連)は先週、農林水産大臣に原料米の安定供給を求める要請書を手渡した。全味連が農水省に原料米対策の要請を行うのは3回目になるが、初めて大臣と面談して原料米不足に陥っている業界の苦境を訴えた。今週末には米菓、味噌、穀粉、清酒、焼酎など醸造業界などコメ加工食品業界団体がこぞって農水省に再度原料米対策を講じるよう要請に出向くことにしており、政府備蓄米の売却が実施されるのか否かが最大の焦点になってきた。

味噌業界の原料米の使用状況や入手価格の現状についてはすでに触れたが、国産特定米穀の価格の急騰に加え、MA米の売却価格も上昇しており、さらに2度蒸しが必要なタイ産米は使用できない味噌メーカーもあり、価格の安い国産米の確保が緊急の課題になっている。
要請項目は以下の3点。
① 令和5年産米は高温障害による品質低下が懸念される中、特定米穀の流通量が大幅に減少するとともに相場が高騰していることから、加工原料用向けの国産米仕入が極めて困難な状況となっており、代替として政府備蓄米の加工用途向け販売を行うこと。
② 令和6年産加工用米の契約に向け、生産者には引き続き加工用米の安定生産に努めていただくため「水田活用の直接支払い交付金等」の適切な措置を通じた加工原料米生産体制を確立すること。
③ ミニマムアクセス米について、国内加工原料用向けに低廉な価格で安定的に販売すること。
今週末に農水省に要請に行くコメ加工食品業界も最大の要請事項も「政府備蓄米の緊急売却」になる。これは商品の表示欄に国産米使用を謳っている中小メーカーが多いことや清酒や焼酎業界は外国産米を使っていないので、特定米穀の不足分は政府備蓄米で補うしかない。過去に政府備蓄米の加工用途への売却を実施したことがある。
平成25年4月2日の売却実施を決めた通達には以下のように記されている。
「平成24/25年の備蓄運営につきましては、平成24年7月に定めた「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」におきまして①平成24年の備蓄米買入数量は約8万tであること②適正備蓄水準が100万t程度であることを踏まえ、備蓄米の年産更新として24年産備蓄米買い入れ数量の範囲内で非主食用に備蓄米を販売することとしたところです。一方、国産の加工原材料米穀をめぐる状況につきましては、特定米穀の発生量の減少等により、安価な原材料用米穀を取り扱う米菓・味噌・焼酎用等の低価格需要者における原料の確保が困難となっています。このような状況を加工原材料用米穀の低価格帯需要者を対象に、上記の年産更新対象数量のうち、販売決定済みの備蓄米を控除した数量の範囲内 で、平成25年産米が出回るまでの不足分に対して、備蓄米の販売を行うことと します。 なお、今回の措置は特例的に行うものであることから、平成25年産以降においては、安定的な確保が可能な加工用米により、国産原料米穀を確保願いたい。」
この時は平成18年産政府備蓄米2万7000tを加工用途向けに売却した。この時は米穀機構が保管していた環境整備米も売却されたこともあって、その後、市中相場は特定米穀ばかりか一般主食用米の価格も急落したこともあって、農水省にとっては一種のトラウマになっている。
しかし、財政的な観点から見れば政府備蓄米は一定期間保管して餌米などに売却されるため保管経費等も含めると毎年500億円もの税金を使っている。MA米に至っては飼料用に1t売却すると7万円の差損で、50万tで350億円の差損が発生する。援助用はさらに差損が大きく1t売却すると12万円の差損で、50万tで600億円の差損が発生する。しかも、1年間1tで1万円の保管料が掛り、100万tでは100億円にもなる。これまで2040万tも輸入してこれだけの経費をかけて処分しているのである。
米菓・味噌・焼酎、清酒などのコメ加工食品業界はいずれも海外向けの輸出は伸びているのだからイタリアのパスタと同じ発想で海外から原料を輸入してそれを加工して輸出するという手法で産業を活性化させた方がはるかにメリットがある。これらのコメ加工食品業界に政府備蓄米やMA米の売却を緊急時だけのものではなく、恒常的に安定的に低廉な価格で売価し続ければ、輸出産業として活力が増すことは疑いがない。それだけでなく、日本食文化が世界に広まっているこのチャンスにこれら伝統的日本のコメ加工食品だけでなく、インスタントカップライス、冷凍米飯、包装米飯等などに備蓄米やMA米を低廉な価格で売却することによって日本のコメ産業は活況を呈し大きく変貌し、真の輸出産業になり得るのではないか。
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