シンとんぼ(94) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(3)-2024年5月18日
シンとんぼは令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まり、みどり戦略の大義である「安全な食糧を安定的に確保する」を実現するために、現場は何をすべきなのかを、同戦略のKPIとその有効性や今後の農業に与える影響などをひととおり検証しながら考察を加えてきた。そして行きついたシンとんぼなりの結論が、現在ある技術を正しく活用すれば、新たな技術開発やイノベーションを待たずとも、みどり戦略の大義は達成可能だろうということだった。
そこで、前回からみどり戦略対応のために、農業現場はどう動くべきなのか、昆虫の分際で持論を展開している。今回は、化学肥料のKPI対策の続きだ。化学肥料に関するみどり戦略のKPIは「化学肥料使用量の20%削減(2030年まで)、30%低減(2050年まで)」で、その達成のためには、単純に単純に化学肥料の土壌への施用量を減らして、化学肥料が減った分の肥料成分を有機質肥料などで補う方法を考えるしかなかった。
ただ、単純に有機質肥料に置き換えるといっても、化学肥料に比べ、肥効が出始めるのが遅かったり、含有する肥料成分数や量が有機質原料ごとに異なるので、施用量の調整は意外と骨の折れる作業だ。加えて、肥料原料の99%を輸入に頼る日本において、これまで使用していた化学肥料を一部分とはいえ日本国内にある資源に安定的に置き換えることはかなり難しいだろう。
なぜなら、有機質資源のソースは、市町村単位や地区単位で異なり、調達できる有機質資源が不足すれば、どこからか調達しなければならない。ましてや国内での調達が難しい肥料成分については輸入に頼らざるを得ないのでその分は削除の対象から外すしかない。化学肥料のKPIも化学肥料の総量を減らせばいいので、減らせない肥料成分を除いて、国内の有機質資材で調達が可能な化学肥料成分を減らす戦略を立てるしかないだろう。
そうすると、地域内では調達できず、他地区から融通してもらうなど、限られた資源の調整が必要になる可能性が高く、組織的に計画的に動いていく仕組みが必要になるだろう。
とにかく、まずは地域内でKPIを達成するために、どの肥料成分を減らして、それを何で補うのかなど産地(地区)ごとに計画し、それこそ、作物A用の化学肥料は従来のままでも、作物B用は従来の化学肥料の半量を有機質肥料で賄うといった地域内で作付されている作物単位での調整も必要になるだろう。これは言葉でいうと簡単だが、現場では結構大変な作業になると思う。
なので、やっぱり「化学肥料を減らせ!」ではなく、「土壌診断に基づく適正施肥を徹底し、肥料分の河川への流亡防止対策を徹底しよう!」が正しい方向性であり、現場での動き方だと思うのだがいかがだろうか?
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日