母の日、花屋はおっかなびっくりの値上【花づくりの現場から 宇田明】第35回2024年5月30日
2024年の母の日を一言で総括すると、花屋のおっかなびっくりの値上。
生産者にとっては市場価格の高騰はうれしいことですが、花屋には仕入れ原価がアップ。
値上しないと経営が厳しいが、値上による消費者の花離れも怖い。
弱小花産業、
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」
「値上ラッシュ、花屋が値上して何が悪い」
「クオリティが高い商品を提供しようとすれば高くなるのはあたり前」
理屈をつけ、自分を納得させ、おっかなびっくりに母の日の値上に踏みきった花屋が多かったようです。
値上の影響は、花屋の業態、地域、立地などでまだら模様。
ざっくりいうと、「値上で客単価がアップ」 ×「客数減」= 「売上トントン」。
商売人的には、「客数が減って(楽して)儲かった」母の日。
値上による物価高騰で、消費者の財布のひもはいっそう堅くなっています。
図は、切り花の市場平均単価(税込、東京都中央卸売市場花き部6市場)と消費者の年間切り花購入回数(二人以上世帯、総務省家計調査)との関係。
切り花単価(青縦棒)は急激に上昇しています。
コロナ前の2019年には67円。
コロナ禍によるイベント、結婚式などの中止があいつぎ、売先を失った花がマスコミで話題になった2020年が66円。
世間で騒がれたほどの暴落ではありませんでした。
コロナが収まり、業務需要がある程度回復した2021年から急激に上昇し、2022年には80円、23年には82円。
もはやプチバブルといってよいくらいの空前の高単価。
この傾向はことしも続いています。
これだけ市場価格が上がると、花屋は価格転嫁せざるを得ない。
では、花屋の値上に消費者はどう対応したのか。
家計調査が示しているのは、購入回数(赤折線)を減らして、年間購入額の上昇を抑えた。
2019年の年間切り花購入回数8.8回が、2022年には7.8回、23年には7.5回に減りました。
この傾向は今年の母の日にも当てはまります。
来店者数やネットでの注文数が減った花屋が多かったようです。
母の日の顧客は常連だけではありません。
はじめて花を買うひとや、おこづかいでお母さんへのプレゼントを買いに子供が来店します。
新規顧客がリピーターになるかどうかは母の日の接客しだい。
花屋は、そんなことは十二分にわかっているが、母の日は1年でもっとも忙しい日。
数日前からアレンジ、花束の製作、ギフトの発送、カーネーションなど鉢ものの包装、POPや店内装飾などで徹夜の連続。
この状態では、笑顔での接客はむずかしい。
これは今年の母の日に限ったことではなく、毎年のこと。
喉元過ぎれば熱さを忘れる。
おなじことが毎年繰りかえされています。
母の日のギフト、来店者を分散しなければならないことはわかっています。
業界全体で取りくんでいるのが、母の日がおわっても、お母さんへのプレゼントOKの「遅れてごめんね」キャンペーン。
さらに、「母の日」ではなく、5月全体が「母の月」キャンペーン。
それぞれの花屋単位では、早割や早期注文の受付などによる仕事の分散を図っています。
母の日は花屋の1年間の通信簿。
花屋は、小学1年生女子の憧れの職業。
クラレの調査では、花屋は将来就きたい職業の4位。
(2023年6月5日「花づくりの現場から」第12回)
来年の調査では、花屋は何位になっているでしょうか。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日