シンとんぼ(100) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(10)-2024年6月29日
シンとんぼは令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まり、みどり戦略の大義である「安全な食糧を安定的に確保する」を実現するために、現場は何をすべきなのかを、同戦略のKPIとその有効性や今後の農業に与える影響などをひととおり検証しながら考察を加えてきた。そして行きついたシンとんぼなりの結論が、現在ある技術を正しく活用すれば、新たな技術開発やイノベーションを待たずとも、みどり戦略の大義は達成可能だろうということだった。そこで、みどり戦略対応のために農業現場はどう動くべきなのかの持論を展開しており、現在は有機農業の取組面積拡大をテーマに、有機農業拡大に関するKPIを実現するための「次世代有機農業に関する技術」のうち、2040~2050年までに確立するとしている技術の1つである「⑦主要病害に対する抵抗性を有した品種の育成」についての検証の続きである。
前回の続きで気になったので、日本国内で発生が確認されている植物に発生する病害虫の数を調べてみた。まず害虫では、農林有害動物・昆虫名鑑2006(応動昆編)によると、国内の植物に発生する害虫の種類は3375種であり、そのうち主要な害虫となる昆虫やダニなどの節足動物が3115種あった。次に病害の主因となる病原の数であるが、それはもっと多く、日本植物病名データベース2020によると4976種であり、主要な病原となり得る菌類や細菌および放線菌によるものが4397種もあった。途方もない数である。
これらの中から、主要な病害虫を選んで抵抗性品種を育成しようとしても大変な労力がかかるだろう。さらに、広範囲の病害虫に効果のある農薬が使用されなくなった場合によくあることだが、これまで病害虫として主要でなかったものが、農薬の防除圧が無くなったことで台頭し、看過できない被害を及ぼすような現象が起こる。このため、抵抗性品種を考える場合は、複数の病害や害虫に抵抗性を示すものが期待されるので、そうなるとさらに育種労力がかかるだろう。どれだけの抵抗性品種が育成できるのか期待しながらも心配である。
そもそも抵抗性品種は、例えば病害に完全な抵抗性を示すものは少なく、もっぱら、罹病性品種よりは病害の発生程度を低くする程度であり、化学的防除や物理的防除など他の防除法によって補完しないと期待する防除効果が得られないことも多い。抵抗性品種さえ作れば大丈夫というわけではないのでその点は注意してもらいたいと思うのだがいかがだろうか。
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