切り花の鮮度とは【花づくりの現場から 宇田明】第38回2024年7月11日
前回紹介したように、切り花は鮮度が命といわれています。
一方では、2023年に国内で消費された切り花44億本のうち13億本が輸入品。
輸入切り花の55%が海上輸送で、中国から1週間、マレーシア・ベトナムから2週間、コロンビアから4週間かけて日本へ運ばれてきます。
長期間、海上輸送されてきた切り花の鮮度が、昨日切って出荷された国産切り花より劣るという話はあまり聞きません。
一体、切り花の鮮度ってなに?
現状では切り花の鮮度を科学的に定義することや、数値で定量化することはできていません。
そのため人は切り花の鮮度にさまざまなイメージを持っています。
切り花の鮮度には、大別して2つの考え方があります。
ひとつはみずみずしさ(freshness)です。
目で見て、花びらや葉をさわって、張りがあるか萎れているかで判定します。
その原理は水分収支。
水分収支は一方通行ではなく、回復が可能です。
萎れた切り花でも水を吸わせると、張りが戻り、みずみずしさがある程度回復します。
萎れた切り花を回復させるのが水あげ技術で、生け花の伝統的な技術であり、花屋に必須の技術です。
もうひとつの考え方は、収穫後の経過時間。
収穫直後の切り花は鮮度が高く、時間がたつと鮮度が低下するという考え方です。
多くの野菜の鮮度もこのように考えられています。
このように切り花の鮮度は統一されていませんが、前者を鮮度と限定するとわかりやすい。
すなわち、切り花の鮮度とは「みずみずしさの度合い」と狭義に定義します。
そうすれば、後者の収穫後の経過時間は、切り花では日持ち(vase life)に相当します。
日持ちとは観賞できる期間のことで、生けてから観賞価値を失うまでの日数で示されます。
その原理は老化。
老化は一方通行で、あと戻りはできませんが、進行を遅らせることはできます。
以上のような考え方で、切り花の鮮度と日持ちを整理すると、表のようになります。
4週間海上輸送で運ばれてきた南米の切り花の鮮度がそれほど問題になっていないのは、精度が高い温度制御が可能なリーファーコンテナや、空気組成をコントロールできるCA(Controlled Atmosphere)コンテナ、MA(Modified Atmosphere)コンテナの鮮度保持能力が高いからです。
加えて、日本の港に着いたあとに、輸入業者の加工場で水あげされ、輸送中の萎れを回復させているからです。
輸送中に老化が進行した切り花は、水を与えても萎れが回復しないので、廃棄されます。
また、かびが発生した切り花も廃棄されます。
このようなリパック作業を経て、輸入切り花が市場に出荷されているので、鮮度の問題が少ないのです。
ただし長期間の海上輸送が可能な輸入切り花は、サカキ・ヒサカキ、キク、カーネーションなど鮮度を保持しやすい品目に限られ、バラや草花類などは除外されています。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(150)-改正食料・農業・農村基本法(36)-2025年7月12日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(67)【防除学習帖】第306回2025年7月12日
-
農薬の正しい使い方(40)【今さら聞けない営農情報】第306回2025年7月12日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 茨城県2025年7月11日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月11日
-
【注意報】果樹に大型カメムシ類 果実被害多発のおそれ 北海道2025年7月11日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 福島県2025年7月11日
-
【注意報】おうとう褐色せん孔病 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】出会いの大切さ確信 共済事業部門・全国共済農協連静岡県本部会長 鈴木政成氏2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】農協運動 LAが原点 共済事業部門・千葉県・山武郡市農協常務 鈴木憲氏2025年7月11日
-
政府備蓄米 全農の出荷済数量 80%2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA加賀(石川) 道田肇氏(6/21就任) ふるさとの食と農を守る2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA新みやぎ(宮城) 小野寺克己氏(6/27就任) 米価急落防ぐのは国の責任2025年7月11日
-
(443)矛盾撞着:ローカル食材のグローバル・ブランディング【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月11日
-
【2025国際協同組合年】協同組合の父 賀川豊彦とSDGs 連続シンポ第4回第二部2025年7月11日
-
米で5年間の事前契約を導入したJA常総ひかり 令和7年産米の10%強、集荷も前年比10%増に JA全農が視察会2025年7月11日
-
旬の味求め メロン直売所大盛況 JA鶴岡2025年7月11日
-
腐植酸苦土肥料「アヅミン」、JAタウンで家庭菜園向け小袋サイズを販売開始 デンカ2025年7月11日
-
農業・漁業の人手不足解消へ 夏休み「一次産業 おてつたび特集」開始2025年7月11日
-
政府備蓄米 全国のホームセンター「ムサシ」「ビバホーム」で12日から販売開始2025年7月11日