シンとんぼ(106) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(16)-2024年8月17日
シンとんぼは令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まり、みどり戦略の大義である「安全な食糧を安定的に確保する」を実現するために、現場は何をすべきなのかを、同戦略のKPIとその有効性や今後の農業に与える影響などをひととおり検証しながら考察を加えてきた。そして行きついたシンとんぼなりの結論が、現在ある技術を正しく活用すれば、新たな技術開発やイノベーションを待たずとも、みどり戦略の大義は達成可能だろうということだった。そこで、みどり戦略対応のために農業現場はどう動くべきなのかの持論を展開しており、現在は有機農業の取組面積拡大をテーマに、有機農業拡大に関するKPIを実現するための「次世代有機農業に関する技術」のうち、前回の続きで2040~2050年までに確立するとしている技術の1つである「生物学的手法を駆使した害虫防除技術」の具体的な内容を検証してみる。
みどり戦略の新技術紹介資料には、生物学的手法として「共生生物を利用した害虫防除技術」が紹介されている。この技術には次のアプローチ手法があるとされており、それは、①産雌性単為生殖化の利用、②細胞質不和合成の利用、③宿主の生存日数を減少させる微生物の利用、④抗生物質殺菌剤の利用、⑤耐性や適応性の変化の利用、⑥パラトランスジェネシスの利用の6つである。現在、これらの技術概要を紹介している。
今回は、2つ目の②細胞質不和合成の利用を紹介しようと思うが、これだけではどうやって害虫防除に結びつくのかシンとんぼには想像もつかなかった。
それで色々と調べてみると、細胞質不和合成とは、ある種の細胞内微生物に感染している雄と感染していない雌が交尾した時、その子孫は発育途中で死んでしまう現象が起こることをいうそうだ。つまり、ある害虫の雄に細胞質不和合成を引き起こす働きのある微生物を感染させ、それを大量に増殖して野に放てば、野にいる非感染雌と交尾し、その結果誕生した次世代は成虫になるまでも無く死亡するので、害虫の密度は大きく減って行くことになる。ウリミバエの不妊雌を野に放つ不妊虫放飼法の逆バージョンのようなもので、代替技術として期待されているものだ。
イネの大害虫であるウンカ類は、細胞質不和合成を利用して防除できる可能性がある害虫の1つであるので、有機農業の取組面積の拡大のためには早期の実用化が望まれている。
(つづく)
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