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【浅野純次・読書の楽しみ】第101回2024年9月12日

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◎鶴崎展巨『一寸の虫にも魅惑のトリビア』(築地書館、2420円)

「進化・分類・行動生態学60話」と副題にあります。表紙には「なぜそこにいるのか? なぜその姿をしているのか? なぜそんなことをするのか?」とも。昆虫の分類と生態の専門家が一般向けにやさしく解説しています。

もともとは全国紙の鳥取県版に連載されたもので、鳥取での観察などの話が多くなります。全国の読者向けにだいぶ手を入れたようで、その点はいいのですが、あまり知られていない虫のかなり特殊専門的な話題がたっぷりなので、場合によっては退屈な話もあるかもしれません。そんなときはスキップでいきましょう。

私自身はチョウ、トンボ、ハチ、クモまでは楽しめても、ヤスデとかザトウムシとかくると親近感はもう一つでしたが、いろんなエピソードはそれなりに楽しめました。

チョウでいえば、ヒメシジミは「ロリータ」の著者ナボコフが研究したチョウで、米国西部を採取旅行中に小説を書いたのだとか。またシルビアシジミは河川敷や土手の管理法が変わり食草のミヤコグサが減って絶滅危惧種になったのだとも。

昆虫は食物連鎖からいっても重要です。「沈黙の春」ではありませんが、鳥や昆虫のいない山野なんて、です。たまには昆虫の本でもいかがですか。

◎適菜収『自民党の大罪』(祥伝社新書、1012円)

自民党の劣化ぶりを多くの国会議員の言動によって糾弾しようという狙いの本です。まず歴代首相が俎上に載りますが、中でも小泉純一郎氏が絶叫した「聖域なき構造改革」は重要です。

息子の進次郎氏が総裁選に際して「聖域なき規制改革」と連呼している(親を意識?)ことに鑑み、今、厳しく振り返ることが求められていると思うからです。新自由主義と言わず「改革」を乱発することの危うさを感じざるをえません。

「パワハラ、クレーマー体質」の河野太郎、「安倍晋三が残した差別主義者」杉田水脈、「統一教会あってこそ」の萩生田光一、「天性のバカ」小泉進次郎といった具合に、表現に穏当を欠くところは少なくないとはいえ、この政治家はこんな発言をしてきたのかと、改めてがっくりくることばかり。よくこれで自民党が長期政権を維持できているなと感心してしまいました。こうやって妄言、暴言、空語を並べられると、次の総選挙で少しは悩ましく思う人も出てくるのではないでしょうか。

◎権藤恭之『100歳は世界をどう見ているのか』(ポプラ新書、990円)

親も90歳少し前に亡くなったし、私も100歳なんてあと30年もあるし、などという方にもお薦めしたい、老年期についていろいろと考えさせられる珍しい内容の本です。

著者が面接して得た100歳超長寿者の個別な現実が多面的に語られていきます。なおかくしゃくとしておられる人の具体例からは元気をもらいますが、けっこうユーモラスな話も多く楽しめます。

大抵の高齢者が自分なりの楽しみを見つけています。体は自由には動かなくても気分的な楽しみもある、というのもそれです。信念をもって生きる、他者との良い関係を大事にする、感謝や満足感、あるがままの境地など、要は考えようだということでしょう。

ピンピンコロリにこだわらず、著者はいろんな状況に柔軟に対応するフニャフニャスルリの生き方を薦めています。中高年にも役に立ちそうな生き方のヒントが多くて勉強になりました。話のタネにもなりそうです。

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