(406)中間発表と「視点」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年10月18日
今日と明日は勤務先の大学における卒業研究中間発表です。
かなりローカルな話題だが、これも社会の一断面と言うことでご容赦頂ければと思う。10月17日および18日の2日間をかけて、筆者が所属する宮城大学食産業学群フードマネジメント学類では卒業研究の中間発表会が行われた。
70名以上の学生が1人5分の発表と2分の質疑に対応する。聴衆は同級生および教員である。たかが5分、されど5分。アクティブ・ラーニングや双方向型授業などがかなり普及したとはいえ、一部の学生を除き、数十人規模の聴衆の前で正式なプレゼンをする機会は余りないのが現実であろう。大昔の学生時代には、中間発表はおろか最終発表も無く、書いた卒論を提出しただけだった筆者などからすれば、現代の学生は皆、それなりにうまくまとめている。
筆者の所属学類では実験系とビジネス系というおおまかな分類はあるが、学生達は文理両方を学ぶ。流石に最終的に所属する研究室はどちらかになるが、それでも文理双方をうまく活かして卒業研究をする学生は多い。
そのため中間発表も実験系とビジネス系が一緒に実施している。例えば、初日の場合、発酵化学の研究室の後に食品産業政策の研究室があり、微生物学の研究室のあとにフードサービス論の研究室、あるいは栄養学研究室の後に食品企業経営がある...、といった形だ。内容も抗生物質の化学構造の話を聞いたかと思えば、居酒屋のメニューの話になるなどかなり多岐にわたる。
ところで学問の世界にはフードシステム学という学問分野がある。「食」を生産からだけでなく、加工・流通・消費、そして廃棄やリサイクルなどの環境まで含めて、川の流れのような大きなシステムとしてとらえる学問である。
筆者が所属している部門の名称は食産業学群という。フードシステム学群ではない。この違いを極めて簡潔に言えば、学問としてのフードシステム学をより実践的な食産業として見ていること、さらに食産業である以上は「農」からの視点だけでなく、「食」としての視点で同じ対象を見ている点だ。
実のところ物事は「視点」をどこに置くかにより、かなり見え方が変わる。例えば、我々は毎日の為替で「円高・円安」に一喜一憂している。1ドルが150円から160円になれば円安と大騒ぎをする。これは一面では正しい。しかし、これを数十年単位という時間軸に引き延ばして見れば景色は異なる。1ドル=360円時代を知っている者からすれば、150円も160円も「円高」にしか見えない。200円でも円高になる。
蜻蛉(カゲロウ)の寿命は早いものでは数時間、長くても数日から1か月くらいと言われている。それから比べれば人の一生がかなり長い。それでも筆者には半世紀以上がまさにあっという間に過ぎた気がする。
さて、学生達の中間発表は滞りなく終了したが、その中でいくつか気になった点がある。テーマの選択を脇に置くと、あとは「視点」だ。「視点」を同時代のスナップショット的分析に置くか、それとも長い目で見た変化など時間軸を中心としたものに置くかである。見え方が大きく異なるのはこの「視点」によるところが極めて大きい。学術的な研究である以上は、どちらの「視点」を持つにしてもある程度の深みを備えなければならない。中間発表である以上、それは今後の教員の指導と学生達の努力次第である。
なお、筆者が割りと楽しんでいるのは、自然科学と人文・社会科学が混在するような発表を次から次へと聞いていると、頭のストレッチをしているような心地良い感覚を得られるからである。
* *
中間発表が終わると、あとは少々の調査や実験、その後はとにかく書く時期となります。
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
【石破首相退陣に思う】戦後80年の歴史認識 最後に示せ 社民党党首 福島みずほ参議院議員2025年9月16日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(6)2025年9月16日
-
国のプロパガンダで新米のスポット取引価格が反落?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月16日
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
ファミリーマートと共同開発「メイトー×ニッポンエール 大分産和梨」新発売 JA全農2025年9月16日
-
「JA共済アプリ」が国際的デザイン賞「Red Dot Design Award2025」受賞 国内の共済団体・保険会社として初 JA共済連2025年9月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」北海道訓子府町で じゃがいもの新品種「ゆめいころ」を収穫 JAタウン2025年9月16日
-
山形県産「シャインマスカット」品評会出品商品を数量限定で予約販売 JAタウン2025年9月16日
-
公式キャラ「トゥンクトゥンク」が大阪万博「ミャクミャク」と初コラボ商品 国際園芸博覧会協会2025年9月16日
-
世界初 土壌団粒単位の微生物シングルセルゲノム解析に成功 農研機構2025年9月16日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(適用地域追加)NOSAI全国連2025年9月16日
-
農薬出荷数量は1.3%増、農薬出荷金額は3.8%増 2025年農薬年度7月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年9月16日
-
林業の人手不足と腰痛課題解消へ 香川西部森林組合がアシストスーツを導入 イノフィス2025年9月16日
-
農業支援でネイチャーポジティブ サステナブルの成長領域を学ぶウェビナー開催2025年9月16日
-
生活協同組合ユーコープの宅配で無印良品の商品を供給開始 良品計画2025年9月16日
-
九州・沖縄の酪農の魅力を体感「らくのうマルシェ2025」博多で開催2025年9月16日
-
「アフガニスタン地震緊急支援募金」全店舗と宅配サービスで実施 コープデリ2025年9月16日
-
小学生がトラクタ遠隔操縦を体験 北大と共同でスマート農業体験イベント開催へ クボタ2025年9月16日
-
不在時のオートロックも玄関前まで配達「スマート置き配」開始 パルシステム千葉2025年9月16日