(407)天保6(1835)年生まれの「人生いろいろ」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年10月25日
大昔のようですが、まだ200年も経っていません。実はこの年に生まれた人、意外に有名な方がいます。
日本が旧暦から新暦へ変わったのは明治6(1873)からだ。そのため、明治5年以前の人物の生年を確認する時は少々注意を要する。
日本人で言えば、三菱財閥を作った岩崎弥太郎と慶應義塾大学の創設者である福沢諭吉などが相当する。岩崎は天保5年12月11日生まれとされているが、これを西暦に直せば1835年1月9日生まれとなる。福沢は同年12月12日生まれだが、同様に1835年1月10日生まれになる。そもそもこの2人が同い年で誕生日も近いのは意外と面白い。この年生まれの有名人と言えば、新選組の土方歳三(天保6年5月5日、1835年5月31日)などもそうだ。ちなみに没年は、岩崎が1885年、福沢が1901年、そして土方は1869年である。
単純に比較はできないが、同時代という視点から見ると興味深い風景が見えてくる。例えば、隣の中国(当時は清国)とイギリスによるアヘン戦争は1840~42年である。彼ら3人は5~7歳程度のため、風聞程度はどこかで聞いたかもしれない。その後、水野忠邦による天保の改革は1841~43年である。現代流に言えば、彼らが小学校低学年の年齢になる頃だ。そして15歳の頃、1850年になると隣国では太平天国の乱がおきるが、日本はまだまだ幕藩体制真っただ中である。
1853年、彼らが18歳の時、浦賀に黒船が来る。「太平の眠りを覚ます蒸気船、たった四杯で夜も眠れず」と言われた時だ。岩崎、福沢、土方はそれぞれ何を思ったのであろうか。そこから先は幕末、明治維新へを時代は大きく動く。
1867年10月、大政奉還、12月には王政復古の大号令である。それでも翌1868年は明治維新、そのまま鳥羽伏見の戦いを経て、五ケ条のご誓文が出され、1869年には戊辰戦争が終わる。最も早く人生を駆け抜けた土方は、この年34歳、函館で戦死している。
ところで、米国ニューヨークにカーネギー・ホールという有名なコンサート・ホールがある。このホールはもともと1891年に開場していた。1899年、米国のビジネスでは有名な鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの寄付により改装され、それ以降はカーネギー・ホールと呼ばれている。マンハッタン7番街57丁目と言えばセントラル・パークのすぐ南である。
カーネギーは1835年、イギリスのスコットランドに生まれた。1848年13歳の時に米国ペンシルヴァニア州のアラゲイニーという町(後にピッツバーグになる)に両親とともに移住する。同い年の岩崎、福沢、土方にとっては天保の改革が終了した頃の話だ。
そこから13歳にして1日12時間働き、1853年、日本では黒船で大騒ぎの年にペンシルヴァニア鉄道に引き抜かれる。当時のカーネギーは、モールス信号を耳でしっかりと聞き分けることが出来るようになっていたようで、電信士として見込まれたという。
この時代の米国は鉄道が西へ西へと伸びていた時代であり、一般には西部開拓の時代と考えられていた。ユタ州プロモントリーにおいて東西から伸びた鉄道がつながり、大陸横断鉄道が開通したのが1869年である。そしてその少し前、1860-1865年に米国は南北戦争を経験している。20代のカーネギーは、南北戦争において南軍に破壊された北軍の軍用鉄道の管理・補修を行い、北軍内部での電信網の監督を担当したようだ。より具体的に言えば、北軍が必要とする軍需品の輸送を担い、軍事情報を伝達した訳である。
ほぼ10年後の1873年、日本では岩崎の三菱商会が設立されている。当初の運賃競争は有名だが、1877年には西南戦争における軍事輸送でも大いに活躍したようだ。いずれも国家の一大事に必要とされる機能であったことは確かだが、成長過程に内戦がからむ点は興味深い。なお、蘭学塾としての慶應義塾の設立は1858年、福沢23歳の時である。これに対し現在のカーネギー・メロン大学の前身であるカーネギー技術学校の設立は1900年、カーネギー65歳の時である。
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天保6(1835)年生まれの人生、こうして比較すると面白いと思いませんか?
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